無資格で働ける介護の現場は少なくありません。
しかし、現場において必要となるのは資格を取れるほどの専門的な技術や知識です。
基本的な技術を学ばないまま勤務していると、万が一のケースに対応できないことも考えられます。
反対に基本的な技術を習得し、それと同時に資格を持っておけばさらなるキャリアアップも目指せるのです。
そこで今回は介護における基本の技術をご紹介します。
また、基本技術を習得できる資格や、資格を取得することのメリットについても詳しくご紹介するので、ぜひご覧ください。
今後のキャリアアップをお考えの方は特に必見です!
目次
1.介護の基本的な技術【利用者との関わり】

それでは早速、利用者との関わりにおける介護の基本技術についてご紹介します。
介護の基本技術を覚えておけば、イレギュラーな事態への対応も安心です。
まず介護において意識すべきポイントは、以下の5点です。
- 利用者の安全を最優先する
- 事前の声掛けや説明を行う
- 優しく触れるように心がける
- 利用者のコンディションに合わせる
- できるだけ自発的な動作を促す
それではそれぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
技術1.利用者の安全を最優先する
介護において最も重要なのが、利用者の安全です。
介護士は利用者に万が一の怪我や事故がないよう、常に配慮する必要があります。
例えば、利用者が転んだり椅子から落ちるなどといった万が一の場合を想定して、介護士は常にすばやく動ける体制を維持することが大切です。
また、入浴介助を行う場合は利用者が火傷をしないように、あらあじめ湯温を確認するなどといった配慮を心がけます。
業務を行なうときにはスピードや効率を優先するのではなく、利用者の安全を第一に動きましょう。
技術2.事前の声掛けや説明を行う
続いて介護の基本となる技術は、「声掛け」です。
何かをする際は、必ずその前に「○○さん、○○しますよ」といった声掛けを行いましょう。
声掛けは利用者にこれから何をするのか伝える役割があるほか、急な動作に驚かせにない役割を持ちます。
例えば、寝返りを打たせるときには、身体に触れる前に「○○さん、体制を変えましょうね。」という声をかけが必要です。
この際、利用者の目線でゆっくりはっきりと話しましょう。
声や表情には抑揚をつけ、相手にしっかりと意味が理解できるように声掛けを行ないます。
事前の予告なしに急に介護士が身体に触れると、利用者の不信感をあおることにもなりかねません。
安心して介護を受けてもらうためにも、都度声掛けを行なうことは重要です。
技術3.優しく触れるように心がける
利用者の身体に触れる際は、優しく触れるように心がけましょう。
先ほどご説明したように、介護士にとって最も注意すべき点は「利用者の安全」です。
怪我や事故がないように環境を整えることはもちろん、自らが利用者を怪我させないように心がける必要もあります。
特に高齢者は皮膚が弱く、ちょっとしたことで内出血が起きてしまうケースも少なくありません。
介護士にとっては普通に触れているつもりでも、思わぬ怪我を負わせてしまう可能性があります。
そのため手を引くときや、身体を支えるときなどにはできるだけ優しく触れるように注意しましょう。
技術4.利用者のコンディションに合わせる
利用者のコンディションを常に観察し、それに合わせた対応をすることも介護における基本技術の1つです。
利用者は自らの体調不良に気付かないことや、介護士に言わず我慢してしまうケースがあります。
体調不良に気付かないまま入浴や食事を行なうと、急激な体調悪化を招くことも少なくないのです。
そのため、介護士は常に利用者の顔色や体温などに気を配る必要があります。
もし少しでも様子の異変に気づいたら無理にスケジュールをこなそうとせず、回復できるようにサポートすることが重要です。
技術5.できるだけ自発的な動作を促す
利用者には、できるだけ自発的に動いてもらうように促しましょう。
なぜなら、「自分で動いている」という認識は、リハビリや体力維持のモチベーションに繋がるからです。
こうした利用者の意識は、運動への意欲にも大きく関わります。
反対に、「無理やり動かされている」と感じてしまうと、自分から動こうという意識は減退します。
その結果、自立して生活を行なう能力が低下してしまうというデメリットもあるのです。
そのため介護が必要な利用者に対しても、必要最低限のサポートを心がけます。
「介護してあげている」といった言葉や雰囲気は発しないように気を付けましょう。
2.介護の基本的な技術【コミュニケーション】

続いては利用者とのコミュニケ―ションにおける基本技術についてご説明します。
コミュニケーションにおいて重要なポイントは以下の5点です。
- 利用者と一定の距離感を保つ
- 指示書や手順書の内容を守る
- 利用者の気持ちを考慮する
- 普段からの観察を怠らない
- 家族とのコミュニケーションを忘れない
それではここから、それぞれのポイントを詳しくご説明します。
技術1.利用者と一定の距離感を保つ
利用者との心理的距離は、近すぎず遠すぎず、一定の間を保つことが重要です。
なぜなら、あまり親しくなり過ぎてしまうと、業務外のお願いをされてしまったり利用者がわがままを言うようになってしまうからです。
また1人の利用者と親しくなりすぎると、他の利用者から差別的な対応だと指摘されてしまいかねません。
介護士は常に中立の立場である必要があります。
もちろん、利用者に対して傾聴の姿勢を持つことは非常に重要です。
しかし、プライベートな話をしすぎるとつい心理的距離が近くなりすぎてしまいます。
自己開示をしすぎたり、1人の利用者と関わり過ぎることがないように注意しましょう。
技術2.指示書や手順書の内容を守る
業務の範囲を超えたサービスは行なわないようにしましょう。
業務の範囲を超えたお願いを1度聞いてしまうと、その後も度々このような依頼をされてしまいます。
例えば、よくあるのが「肩を揉んで欲しい」などといったものです。
依頼を聞いてあげたいという気持ちがあっても、丁重にお断りしましょう。
断る際には、利用者の気分を害さないように留意することも必要です。
きっぱりと「できません。」というのはあまりおすすめできません。
理想的なのは、「申し訳ありませんが、指示書にはない業務ですので対応致しかねます。」といった柔らかい口調です。
このようにクッション言葉をうまく使うことで、穏便に断れるでしょう。
技術3.利用者の気持ちを考慮する
介護士は常に利用者の気持ちに寄り添いましょう。
これは利用者と良好な関係を気づき、安心して介護を任せてもらうためです。
ときに、利用者がこちらの意に反して気分を害したりすることもあります。
するとつい、こちらも相手の理不尽な態度に怒りが沸いてしまいますが、その感情を利用者にぶつけてしまうのはNGです。
まずは「なぜこの人は怒っているのか。」という相手の気持ちを考えましょう。
そして気持ちに共感を示すことで、利用者も介護士に心を開いてくれます。
ただしこの時、利用者に過度に合わせすぎてしまうと「この人は何でも共感してくれる」という認識を生んでしまいます。
これは一層理不尽な文句などにも繋がりかねないので、利用者には迎合しすぎてしまわないように注意しましょう。
技術4.普段からの観察を怠らない
介護士は普段から利用者の観察を怠らないのが基本です。
そのためには日々のコミュニケーションが欠かせません。
利用者の普段の様子を知っておくと、ふとした時の顔色の悪さや貧血などといった体調不良に気付けることがあります。
これにより、急激な体調の悪化を事前に防げる可能性があるのです。
例えば「今日は体調が良さそうだな」といったことが挙げられます。
さらには「今日は口数が少ないな」といった利用者の些細な変化に気づけるよう、日常的に観察をしましょう。
技術5.家族とのコミュニケーションを忘れない
介護士にとって、利用者の家族とのコミュニケーションも非常に大切です。
スムーズな介護をするには、家族との連携が欠かせません。
特に訪問介護の場合にはなおさら、家にある生活用品を借りるなどといった家族と関わるシーンが多々あります。
本人の気分や体調の傾向を知るうえでも、家族からの情報は非常に役立つものです。
そのため家族への報告や相談は丁寧に行なうように心がけましょう。
利用者に対して「介護をさせていただいている」という思いを伝えることが重要です。
3.介護の基本的な技術を学べる資格
続いて、介護の基本的な技術を学びたい方にとって、おすすめの資格をご紹介します。
基本技術を学べるのは以下の3つの資格です。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護事務
ではここから、それぞれの資格について詳しくご説明します。
資格1.介護職員初任者研修
介護職において最も基本的な資格が、この介護職員初任者研修です。
この資格を取得すると、介護において大前提となる基礎知識を身に付けることができます。
資格の取得条件は専門スクールにおける講習の受講と、修了試験の合格です。
スクールは各地に複数あるため、近くのスクールに通うことをおすすめします。
ちなみに取得までの期間は最短で1ヶ月と非常に短いのが特徴です。
この資格を持っているとお給料が優遇されるケースもあるので、取得して損のない資格といえるでしょう。
また、資格を持っていると就職も有利に進めることができます。
資格2.介護福祉士実務者研修
続いての資格は介護福祉実務者研修です。
この資格は先ほどご紹介した介護職員初任者研修の、やや応用編です。
介護の基礎知識にくわえ、医療に関する知識も求められます。
無資格で受験する場合、専門スクールによる450時間の講習を受講し、修了試験に合格することが取得条件です。
ただし介護職員初任者研修に合格している場合は、講習の受講時間が130時間分免除され、320時間と短くなるというメリットがあります。
また、介護福祉実務者研修に合格しておくと、将来的にサービス提供責任者として働くことができます。
キャリアアップを目指したい方は特に、ぜひとも合格しておきたい資格です。
資格3.介護事務
介護の基本的な技術や知識に加え、経理などといった事務処理のことも学べるのが介護事務です。
介護報酬請求業務などといった事務仕事につきたい方は、介護事務の資格が必須となります。
また、介護事務の資格は民間資格なので複数種類があります。
資格の取得方法はいずれにしても自主学習の上、学科試験と実技試験を受けるというものです。
受験料は平均して1万円未満と、比較的安価で済みます。
4.介護の基本的な資格を取得するメリット
それではここから、ご紹介した資格を取得するメリットについてご説明します。
介護の基本的な資格を取得するメリットは以下の通りです。
- 専門的なスキルや知識が身に付く
- 万が一の時にも安心
- キャリアアップが目指せる
- 今後の昇給が期待できる
ではそれぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
メリット1.専門的なスキルや知識が身に付く
介護における基本的な資格を取ると、専門的な技術や知識が身に付きます。
資格を取る際に身に付ける技術や知識は、介護職のどの現場でも必要とする基本的なものです。
例えば資格を取るための勉強では、利用者に対してどう接するべきなのか、入浴や排せつの介助をどう行うのか、などといったことが学べます。
こうした基礎を身に付ければ、仕事にも安心感が持てるでしょう。
また、将来的に転職を考える際にも、持っていて損はありません。
メリット2.万が一の時にも安心
資格を取得しておくと、介護現場でもし何かあった時にも安心です。
介護における基本的な資格の勉強は、あらゆるケースに応用がききます。
例えば、基礎的な応急処置の勉強は、利用者が転倒してしまった際や、誤って喉を詰まらせたときなどに応用可能です。
資格を取るための勉強で基本的な介護技術を学んでおけば、緊急の事態にも焦らず、自信を持って対応することができます。
メリット3.キャリアアップが目指せる
介護の基本的な資格は、キャリアアップにも使えます。
というのも、サービス提供責任者といった管理職につくには、基本的な資格が必須となる場合がほとんどだからです。
さらに、転職をする際にも資格を持っていることは管理職へのキャリアアップを目指せるなど、大きな強みになります。
転職で収入アップを目指したい方にとっても、介護の基本的な資格の取得は非常におすすめです。
メリット4.今後の昇給が期待できる
資格を取得することで、今後の昇給が期待できます。
資格を取れば、管理職への昇格も夢ではありません。
施設によっては資格手当として、月給が上がる場合もあります。
例えば介護福祉士としての資格手当の平均はおよそ月8,000円前後です。
毎月のお給料に8,000円近くの手当てが上乗せされれば、9万6,000円の年収アップが実現する計算になります。
このように、資格を取得することはお給料のアップに大きく役立つのです。
メリット5.他の資格取得に役立つ場合も
介護における基本的な資格を取得すると、他の資格を取得に役立つことがあります。
介護上級者向けの資格の中には、基本的な資格の保有を前提としているものも多いのです。
例えば先ほどご紹介した「介護職員初任者研修」は、管理職レベルの資格の取得には欠かせません。
このように、後にキャリアアップを目指して資格を取ろうと思った時に、基本的な資格を持っていると何かと便利なのです。
5.介護職の職場選びの基準

では続いて、介護職で転職を考える際に注意しておきたい基準についてご説明します。
気を付けるべきポイントは以下の3点です。
- 給与・手当を確認しておく
- 勤務体系を確認しておく
- 職場の介護観を確認しておく
それではそれぞれの基準を詳しく見ていきましょう。
基準1.給与・手当を確認しておく
職場選びにおいて最も重要なのが、給与や手当です。
これは必ず、事前に確認しておきましょう。
お給料が割に合わなかったり、以前よりも収入が減ってしまっては、せっかくの転職も成功とはいえません。
中には平均的な介護士の相場よりも低いお給料で、休みも少ないという職場があります。
こうした職場を選んでしまわないように、基本給やボーナスの最低支給額は事前に必ずチェックしておくことをおすすめします。
また、残業代が全額支給されるかどうかも確認しましょう。
みなし残業代を採用している施設は、非常に忙しく残業代が割に合わないケースもあります。
基準2.勤務体系を確認しておく
次に、勤務体系を確認しておきましょう。
勤務体系とは、出勤日や就業時間についてです。
例えば、曜日固定性なのか、またはシフト制なのか、といったことを確認する必要があります。
なぜなら自身の思い描くワークスタイルに合っていないと、仕事に対するモチベーションが下がってしまうからです。
現在、介護施設では日勤と夜勤に分かれる2交代勤務制が多く採用されています。
そしてシフトに応じて、月4~5回の夜勤に入るという勤務スタイルが一般的です。
また、ワークスタイルだけでなく年間を通して何日休みが取れるのか確認しておくことも忘れないようにしましょう。
基準3.職場の介護観を確認しておく
最後に、職場の介護観を確認しましょう。
介護観とは、介護に対する価値観や方針のことです。
自分と介護観が合わない職場を選んでしまうと、職場になじめなかったり仕事に対する不満が生まれてしまう可能性があります。
施設によって介護観は色濃く差が出るので、できれば面接時などに介護観について質問して確認しておくと良いでしょう。
6.新しいキャリアを目指すのに介護職は最適
新しいキャリアを目指したい方にとって、介護職はおすすめです。
介護職は高齢化社会の日本にとって、これからどんどん需要が伸びる職業です。
さらに資格を取得すれば着実なキャリアアップが目指せるという点でも、介護職は年齢や性別を問わずおすすめできる職業といえます。
また、基本的な資格なら最短1ヶ月で取得できるなど、その手軽さも魅力の1つです。
介護事務など、国家試験ではない資格なら費用も1万円以下で済むなどコストもかからずに済みます。
そう考えると、介護職は誰でもキャリアアップしやすい職種といえるでしょう。
まとめ
介護士における基本的な技術をご紹介しました。
また、介護の基本的な資格を取得することはキャリアアップにおいて必須ともいえます。
今後さらなる需要の高まりが期待できる職業なので、資格を持っておいて損はないでしょう。
ぜひ今回ご紹介した内容を参考に、介護職でのキャリアアップを検討してみてください。