「介護の仕事に必要な心構えを身に付けたい」
「介護の基本的な考え方って何?どう実践すれば良いの?」
介護の仕事を始めるに当たって、どんな目的を持って介護をすれば良いのか疑問に感じる人は少なくありません。
介護の基本的な考え方を知らなければ、同僚と話が合わなかったり、利用者に不快な気持ちを抱かせることもあります。
経験に関わらず、介護の原則をしっかり理解しておきましょう。
この記事では、介護の基本的な考え方を、「介護の三原則」に基づき解説します。
介護のプロとしてたくさんの利用者と接していくため、早く身に付けておきましょう。
目次
1.介護士が知るべき介護の基本とは?
介護で最も大切なのは、ケアをされる側の尊厳や考え方を最大限尊重することです。
介護をしていく中で、ほとんど自分で動いたり、喋ったりすることができない人に会うことも少なくないでしょう。
しかし、意思表示が難しいからと言って、利用者の生活スタイルを勝手に決めたり、利用者がやりたいと思っていることを邪魔するのはNGです。
介護の主体は高齢者であり、介護士はその高齢者をサポートする役割となっています。
介護のやりすぎ、ケアのしすぎには十分注意をして、仕事を進めていきましょう。
次は、介護の基本的な考え方を知る上で大切な「介護の三原則(アナセンの三原則)」について細かく解説していきます。
介護初心者の人は、高齢者にとってより充実した介護を実現するためぜひ読んでみてください。
2.基本として知るべき「介護の三原則」を解説
介護の基本的なルールは、「介護の三原則(アナセンの三原則又は高齢者福祉の三原則とも言う)」にまとめられています。
この原則はデンマークに住むベント・ロル・アナセン氏が1982年に提唱したもので、日本を含む世界中で介護に影響を与えました。
介護の基本的な考え方を知るなら、ぜひ最初に確認しておきましょう。
「介護の三原則」は以下の3要素でできています。
- 生活維持の原則
- 自己決定の原則
- 残存能力活用の原則
それぞれの原則を確認していきましょう。
原則1.生活維持の原則
生活維持の原則とは、たとえ心身が弱っていたとしても、高齢者にはなるべくこれまで通りの生活をしてもらうべきという考え方のことです。
高齢者が生活環境を変えることにより起こる負担は想像以上に大きく、認知症が進行してしまう可能性もあります。
これまでの環境をなるべく維持してもらいながら介護を行うことは、高齢者がより長い間健康に過ごすために重要なのです。
一方、生活維持の原則に則れば家から離れ、高齢者が介護施設で暮らすのはおすすめできないことになります。
もし施設でのケアが必要な場合は、家で使っていた家具をそのまま持ち込む、配置を家と同じにするなどの工夫が必要です。
原則2.自己決定の原則
自己決定の原則では、生き方や暮らし方は本人が決めるべきという考え方が大切にされています。
介護士や高齢者の家族の中には、「本人に聞いても意味がない」と考え、高齢者の生き方を勝手に決める人もいます。
しかし、これまでと同じように話したり、身体を動かしたりすることが難しくなっても、高齢者の意志を最優先で尊重すべきです。
高齢者の気持ちを聞かないまま周囲が勝手に物事を進めれば、高齢者に適さない介護が行われてしまうかもしれません。
介護を受ける高齢者自身が何をしたいのかを尊重し、周囲の人はサポートに務めることが重要です。
原則3.残存能力活用の原則
残存能力活用の原則とは、高齢者ができることはなるべく高齢者自身にやってもらうという考え方のことです。
心身の調子が悪くなってくると、介護士も高齢者の家族も、高齢者ができなくなったことに目を向けることが多くなります。
しかし、高齢者介護で大切なのは、高齢者ができることに焦点を当てたサポートです。
まだできるのに周りが勝手にサポートや手助けをすると、認知症が進行しやすくなるとも言われます。
高齢者にはできることをやってもらい、心身の機能が低下するのを防ぎましょう。
以上が、アナセンが唱えた介護の三原則でした。
介護を行う際は、高齢者の気持ちを尊重しながら最適な介護を見つけていくことが大切です。
高齢者の決めるべきことを周りが勝手に決めていないかしっかり考え、仕事を進めていきましょう。
次は、実際の仕事で介護の基本を活かすポイントを解説します。
介護の仕事に慣れていない人は、ぜひチェックしてください。
3.実際の仕事で介護の基本を守るため意識すべきこと
介護の基本的な考え方と原則を理解しても、実際の仕事にどう活かせば良いか悩んでしまうという人は少なくありません。
介護の原則を守るため仕事の中で意識すべきポイントは、以下の通りです。
- 必ず本人の意見を聞く
- 本人にできることはやってもらう
- 自分がしてほしい介護をする
実施の仕事で介護の基本をどう活かすか、それぞれを参考に考えていきましょう。
(1)必ず本人の意見を聞く
高齢者の意志を尊重した介護を実践するため、何か物事を決めるときは必ず本人の意見を聞きましょう。
話すのに時間がかかる高齢者でも、しっかりと自分の意志を持っているケースは多いです。
介護士や家族だけで勝手に話を進め、高齢者自身の意志に反した介護をすると、気分が落ち込みメンタル面が不安定になる可能性もあります。
介護の方針をどうするか、どんなところでサポートが必要なのか、必ず本人に確認しましょう。
(2)本人にできることはやってもらう
高齢者の心身の機能が低下するのを防ぐため、時間がかかっても、本人にできることは本人にしてもらうよう心がけましょう。
食事や着替えが終わるまでに長い時間がかかると、介護士側がイライラしてしまい余計な手助けをしてしまうことも少なくありません。
しかし、周りがサポートをしすぎると高齢者の能力低下につながってしまうので、手助けは必要最低限にとどめましょう。
ただし、本人に任せすぎると事故につながる可能性もあるので、介護士の先輩とも連携しながら高齢者を見守ることも大切です。
(3)自分がしてほしい介護をする
介護のやり方に迷ったら、自分がどんな介護をしてほしいか考えてみましょう。
介護される側の立場を想像すれば、何もかも身の回りの世話をされることや、自分の意見を聞いてもらえないことの辛ささを感じられるはずです。
もし自分だったら何をサポートしてほしいのか、どんな接し方をしてほしいのか考え、利用者とのコミュニケーションに活かしましょう。
以上が、介護の原則を実際に活かすポイントでした。
介護の原則は介護に挑む気持ちを示したものなので、具体的な実務でどう活かすかは自分で考える必要があります。
介護の仕事に慣れ、自分なりの介護を見つけていきましょう。
次は、介護の現場で必要となる基本的なスキルを解説していきます。
どんな力を身に付ければ良いか分からない、という人はぜひ参考にしてください。
4.身に付けるべき介護の基本技術を知っておこう
これから介護士として活躍していきたい人は、基本的な心構えだけでなく、実務ですぐ使える技術やスキルを知っておかなければいけません。
介護の経験が無い、という人も、介護業界で求められるスキルを事前に知っておくことで仕事を覚えやすくなります。
介護初心者は介護の基本技術を重点的に身に付けられるよう意識しながら、先輩の話を聞きましょう。
介護で必要な基本技術は、以下の通りです。
- コミュニケーション技術
- 身体介助技術
- リスクマネジメント技術
それぞれ確認していきましょう。
基本技術1.コミュニケーション技術
介護で大切なのは、利用者やその家族に対するあたたかなコミュニケーションです。
いくら介助が上手でも、利用者や家族に挨拶をしなかったり、暴言を吐いたりするような介護士は現場を不安にさせるでしょう。
たとえ仕事をまだ覚えていない介護士でも、笑顔でしっかり挨拶をすれば利用者の気持ちを明るくすることができます。
人を傷つける発言は避け、前向きな姿勢で仕事に臨みましょう。
基本技術2.身体介助技術
介護の実務で必要となるのが、食事・排泄・移動などの身体介助技術です。
誤った身体介助をしてしまうと、転倒や誤嚥で重大な事故や病気につながるリスクもあります。
利用者が安心して介護サービスを利用できるよう、特に利用者の身体に触れる介助は十分注意して行いましょう。
また、身体介助の際には利用者が不快な気持ちにならないよう適宜コミュニケーションを取ることも重要です。
どんな場面で利用者が不快に感じるか経験を元に考え、「大丈夫ですよ」「痛くないですか?」など必要な声掛けをしましょう。
基本技術3.リスクマネジメント技術
もしもの時に対処するため、リスクマネジメント技術を向上させることも必須です。
介護中に事故が起こった時は、適切な対処が利用者の命を救います。
間違った処置をしてしまわないよう、介護中によく起きる事故を把握するとともに対処法を覚えていきましょう。
以上が、介護の仕事で必要な基本技術でした。
介護の基本的な考え方を活かして仕事をするには、実務を覚えることも重要になります。
様々な経験を積んで介護の原則を身に付けるとともに、必要な仕事を少しでも早くこなせるよう努力しましょう。
次は、介護の基本を身につけるためのポイントを解説します。
これから介護のプロを目指す人は、ぜひ読んでおいてください。
5.介護の基本を身に付けるには実践が大切
介護の基本は本で学ぶこともできますが、実際に働きながら実現していくことが最も大切です。
働いている施設の研修制度を利用する、初任者研修、実務者研修を受講するなどして、介護の基本を身に付けていきましょう。
もし、研修や教育を満足にしてもらえない環境なら、上司に不満を伝えて改善してもらうか、転職を考えなければいけません。
研修や教育をを受けられないまま働き続けても、スキルアップできず昇給が難しくなります。
また、仕事を教えてもらえない状態で現場に出ていると、知識不足から深刻な事故につながることもあり危険です。
1人で仕事がこなせるようになるまでは、先輩や上司にアドバイスをもらいながら介護の基本を身に付けてください。
まとめ
介護で大切なのは、利用者の尊厳を尊重することです。
利用者は1人の個人で、独立した考え方や感じ方があるとしっかり理解し、利用者が納得できる介護をしていきましょう。
介護の考え方を仕事の中で活かすには、実践や経験が最も大切です。
信頼できる先輩にサポートしてもらいながら、利用者のためになる介護を身に付けていってください。