日本の深刻な問題のひとつとして挙げられる高齢化問題。
2025年には第一次ベビーブームで誕生した団塊の世代が75歳を迎え、後期高齢者となります。
2025年問題と呼ばれているのを聞いたことがあるかもしれません。
大きな問題が控えている中、介護業界自体も人材不足や離職といった問題を抱えています。
そんな中、2015年に生まれたのが認定介護福祉士という資格。
比較的新しい資格であることから、詳しい内容は知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、認定介護福祉士とはどんな資格なのか、介護福祉士とは何が違うのかといった点を解説していきます。
目次
1.認定介護福祉士って一体どんな資格?
認定介護福祉士は、2015年に一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が定めた資格です。
一般社団法人が定めていることからも分かるように、資格の区分は民間資格。
より専門的で、高度な知識を身につけることから介護士の最上位資格と表されることもあります。
最上位の資格だけあって、取得難易度も高いです。
受講条件に、介護福祉士として5年以上の実務経験が求められます。
必要な講習にも多くの時間をかけなければいけません。
なぜ、取得難易度が高い資格が作られたのでしょうか。
認定介護福祉士が定められた背景を知ることで、より理解しやすくなります。
認定介護福祉士が定められた理由は、大きく分けると2つです。
- 介護士のキャリアパスをつくるため
- 社会的地位の向上のため
それぞれ解説していきます。
背景1.介護士のキャリアパスをつくるため
キャリアパスという言葉を聞いたことがあるかと思います。
聞いたことはあっても、詳しく説明できないという人がほとんどではないでしょうか。
キャリアパスとは、職歴という意味のcareer(キャリア)と、人が通る道という意味のpath(パス)を組み合わせて作られた言葉です。
働いている職業や職場での昇進の道筋、目標の職位までのステップアップで辿る道と考えると、分かりやすいのではないでしょうか。
認定介護福祉士は、介護福祉士の資格取得後のキャリアパスとして生まれました。
理解すべきは、認定介護福祉士という資格が介護福祉士の取得後のキャリアパスとして定められた理由です。
認定介護福祉士が生まれる前は、経験を積んだ介護福祉士の昇進の基準が不明瞭でした。
介護士の仕事を未経験から始めた多くの人が目指すのが、介護福祉士の資格取得です。
介護福祉士の資格取得までの間には、介護士初任者研修や実務者研修といったステップアップの道しるべが明確に示されています。
しかし、介護福祉士の資格を取得した後はどうでしょうか。
資格勉強で学んだ技能を現場で活かしながら働くことはできても、次のステップで明確なものがありません。
経験を積んだことで幅広い介護の知識を持ち、実践できる介護福祉士は、その技術を次の世代に伝えていく必要があります。
そこで生まれたのが、認定介護福祉士でした。
認定介護福祉士では、グループのリーダーとして活躍する人材に対しての指導方法やマネジメントについて学べます。
つまり認定介護福祉士は、経験豊富な介護士福祉士が次の世代の介護人材を育成するための知識を得られる資格ということです。
介護スタッフの小グループのリーダーとして活動する役割がある介護福祉士。
そして、介護福祉士より専門的な知識を持つ認定介護福祉士というステップアップの構図が成り立ちます。
背景2.社会的地位の向上のため
認定介護福祉士が定められたもう1つの狙いが、介護士の社会的地位の向上です。
介護福祉士の資格が生まれるまで、お年寄りはその家族がお世話をすることが常識とされていました。
その常識を残しつつ、介護福祉士の資格が誕生したのが1987年。
当時はまだ厚生労働省となる前の厚生省が、社会福祉士及び介護福祉士法を定めたことで介護福祉士という資格が生まれました。
高齢化社会に、介護士の仕事は必要不可欠といえるでしょう。
重要な介護士の仕事ですが、介護は家庭で行うものだという認識を持っている人達がいることも事実です。
仕事内容に対しても、キツイ・臭い・汚いの3Kという言葉で、表現されてしまう現状があります。
特に、地位の低さを痛感するのは、医師や看護師と比べて介護士は誰にでもできるという発言です。
介護士として働いていれば、このような悲しい、虚しい思いを感じたことがあるのではないでしょうか。
認定介護福祉士には、介護士の地位向上の狙いがあると言いました。
認定介護福祉士で身につけるのは、介護福祉士より専門的な知識です。
介護の専門家として活動することは、介護士の社会的地位の向上につながります。
介護についての深い知識、それを体系的に伝える能力は誰にでも簡単に手に入れられるものではありません。
認定介護福祉士の能力は、利用者や家族の安心に直結します。
伝える力は、介護士に対する誤解を解くことも可能です。
さらに、認定介護福祉士は、超高齢化社会でさらに需要が高まる介護士の資質を高めていく役割も担います。
正しい伝え方や指導力により、介護士の技術や知識は当然として、プロ意識も高めることでしょう。
働く人達がプロ意識を持つことは、職種の地位向上に直結します。
介護士の社会的地位の向上は、現場で働く人のためにも、早急に解決しなければならない問題です。
今後、認定介護福祉士を取得する人が増えることで、問題が解決する方向に向かうのではないでしょうか。
2.認定介護福祉士で身につく技能はどんなもの?
認定介護福祉士を取得すると、どのような技能が得られるのでしょうか。
認定介護福祉士を定めた一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構では、資格に以下の3つの役割があるとしています。
- 地域単位での介護力向上
- 施設の介護サービスマネージャー
- 介護サービスの連携の中心になる
この3つの役割を果たすために必要な技能について、解説していきます。
役割1.地域単位での介護力向上
認定介護福祉士には、地域単位での介護力を向上させる役割が求められています。
具体的には、どのようなことを行うのでしょうか。
介護力とは、要介護者に対して正しい介護を行える力を指します。
必要とされるのは、地域と正しく関わっていく以下のような能力です。
- 介護施設の利用者とその家族に対して行う支援や不安を軽減する力
- 地域のボランティアや他の施設で働く介護士に助言を行う力
- 地域でどのような介護が求められているかを理解し実施する力
認定介護福祉士では、地域の人々に介護力を提供していくだけでなく、地域が求めている介護を分析する能力も獲得します。
役割2.施設の介護サービスマネージャー
施設で働く介護スタッフに対して、マネジメントや人材育成を行う役割が求められます。
マネジメントや人材育成を行うために、認定介護福祉士で学ぶ能力はこちらです。
- リハビリテーション知識を応用した介護を計画・実施する力
- 実施する介護の根拠を説明する力
- 認知症のBPSDに正しく向き合い軽減する力
リハビリテーション等の知識を応用した介護の目的は、利用者の生活機能の維持や向上です。
また、実施する介護のプログラムをスタッフに正しく伝えることで教育を行います。
介護の質としては、認知症との向き合いかたも考えなければなりません。
施設の介護サービスマネージャーとして、認知症のBPSDについて正しい知識を取得します。
BPSDについて
BPSDとは、認知症精神行動症状のことです。
Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの頭文字をとり、BPSDと表します。
認知症によって起こる記憶障害などに様々な要因が加わり、引き起こす症状も様々です。
具体的には、精神症状で幻覚が見えたり、妄想が酷くなるといった症状。
行動症状では、徘徊や収集癖が現れる、暴言や暴力をふるうようになる症状などです。
中核症状である記憶障害や思考機能障害より、本人と介護者の負担が大きくなります。
しかし、忘れてはいけないのは、認知症状とは違ってBPSDは適切なケアで軽減できるということです。
BPSDの要因となるのは環境や心理的なものであったり、身体的なものであることがほとんど。
症状がでた人に対して叱ったりすることは、心理的に不快な要因になり、BPSDを加速させ悪循環に陥ります。
対処法は、症状を正しく理解し、寄り添うことです。
症状を正しく理解し、褒めたり、認めたりすることで良い循環が生まれます。
役割3.介護サービスの連携の中心になる
認定介護福祉士には、介護サービスの連携の中心になる役割があります。
介護サービスの連携で必要になるのは、他職種である医者や看護師とのコミュニケーションです。
連携の中心の役割を果たすために身につける能力は、具体的にこのようなものになります。
- 医療的な情報を適切に聞き入れスタッフに共有する力
- 他職種との連携を介護に結びつける力
- 利用者の状態を他職種に適宜伝えられる力
例えば、介護を行うことはできても、言語化して伝えられない介護スタッフは存在します。
実際に、自分で行ってみるとその難しさに気付けるかもしれません。
正しい状況把握、論理的に理解し伝える能力を身につけることは重要です。
他職種との連携も、介護には必要不可欠と言えます。
論理的に他職種に説明する力は、介護サービスの中核を担う人材に必須と言えるでしょう。
3.認定介護福祉士と介護福祉士の違いについて
ここまで、認定介護福祉士について説明してきました。
「介護福祉士と認定介護福祉士は何が違うの?」
と疑問に思う方もいるかもしれません。
当たり前ですが、認定介護福祉士は介護福祉士の上位資格であるため、受講内容の違いがあります。
資格の内容以外の点では大きく2つの違いがあるといえるでしょう。
- 資格の区分の違い
- 資格取得者に求められる仕事内容の違い
それぞれ詳しく見ていきます。
違い1.資格の区分
1つ目の違いは、資格の区分です。
介護福祉士は国家資格、認定介護福祉士は民間資格として作られています。
上位資格の認定介護福祉士が民間資格という点を、不思議に感じるかもしれません。
国家資格は、国の法律に基づいたものです。
一方民間資格は、団体や個人でも審査基準を自由に作り、資格にできます。
しかし審査基準が自由なものだからといって、民間資格が国家資格に劣っているという認識は正しいと言えません。
例えば、就職や転職の際に有利とされているTOEICという資格があります。
多くの企業が参考にしているTOEICですが、実は民間資格です。
民間資格の中には、海外でも通用する知識を含んだ国際的な資格も存在します。
フードコーディネーターは民間資格であるものの、海外でも試験が行われ共通の知識を保有している国際資格です。
日本の法律で定められた国家資格は、海外で資格の証明にならないこともあります。
一概に、どちらの資格が優れているとは言えないのです。
認定介護福祉士では、受講資格として介護福祉士の実務経験も求められます。
つまり認定介護福祉士を取得した人は、必然と国家資格も持っているということです。
違い2.仕事内容
認定介護福祉士と介護福祉士のもう1つの違いとして、仕事内容が挙げられます。
介護福祉士を取得した人が働く際に求められるのは、専門的な技術や知識を活かして現場で活躍することです。
認定介護福祉士では、長年にわたり培ってきた経験を活かして、スタッフやそのリーダーへ指導や教育を行うことが求められます。
もちろん、全ての認定介護福祉士が教育係として働いているわけではありません。
認定介護福祉士を持たない施設長や管理者もいます。
上級の資格を持つことで求められる役割が変わり、それに伴って仕事内容が変わると考えておきましょう。
4.認定介護福祉士を目指すなら知っておくべきこと
認定介護福祉士を目指すのであれば、知っておくべきことがあります。
ここでは、特に重要なものを3点に分けました。
- 多くのコストがかかる
- 資格の評価が確立されていない
- 給料が上がるとは限らない
それぞれ詳しく解説します。
(1)多くのコストがかかる
認定介護福祉士の取得には、多くのコストが必要です。
ここでは、認定介護福祉士の取得の際にかかるコストを2つに大別します。
- 時間的コスト
- 金銭的コスト
それぞれ詳しく解説していきます。
時間的コストについて
研修には合計600時間と膨大な時間がかかります。
600時間の研修終了は、開始日から毎日欠かさず1時間続けた場合で約1年半後。
しかし、講義を受けるための移動時間も加味すると、毎日1時間という計算は現実的ではありません。
また、資格の特性上、働きながら資格勉強を行うことになります。
受講者の多くが、仕事が休みの日に講義を受けることになるでしょう。
講義の受講以外にも事前課題が課せられ、難易度も高いです。
そのため順当に取得に向けて進んだとして、少なく見積もっても約2年はかかります。
2.金銭的コストについて
受講費用は基本的に60万円程です。
60万円という金額は、他の一般的な資格よりも大きな金額と言えます。
さらに、受講期間の長さから、受講機関への移動費についても考えなければなりません。
住んでいる都道県によっては、受講機関が遠くの可能性もあります。
必要な費用を計算する際は、「想定していた金額より多くかかった…」と後悔しないように、移動費も視野に入れて考えましょう。
(2)評価が確立されていない
認定介護福祉士の資格は、既に認知されている他の介護関係の資格に比べ、評価が確立していません。
資格を持った人が少ないことが原因の1つです。
2020年7月時点の認定介護福祉士取得者は、認定機構が発表している数で60人とされています。
資格に対する評価が確立していないということは、これからの取得者の行動や実績によって認識が変わっていくということです。
どんな資格でも同じことが言えますが、新しいものでは特に取得後の自己研鑽が必要といえるでしょう。
評価が確立されていないことから、必ず資格に見合った役職が与えられるということもありません。
これも他と一緒で、与えられた資格に相応しい活躍をすることで施設や地域から認められ、裁量の余地が大きくなっていくと考えましょう。
(3)給料が上がるとは限らない
給料面での待遇を期待して認識介護福祉士の取得を考えるのであれば、辞めておいた方がいいかもしれません。
評価が確立していない点でも述べたように、認定介護福祉士を取得したから役職が上がるとは言い切れない現状があります。
もしかしたら、資格に対する手当で給料が上がることはあるかもしれません。
しかし、資格手当の判断は施設ごとに行うものです。
実際のところ、積極的に手当を支給する施設が珍しいことは想像に難くないのではないでしょうか。
可能性として、特定処遇改善加算に当てはまりやすくなることはあります。
認定介護福祉士の取得を目指す場合は、勤続年数も長くなっているかもしれません。
特定処遇改善加算は、介護士の処遇改善を目的に2019年から行われた報酬を加算する制度です。
対象を勤続年数10年以上の介護福祉士としています。
この加算について、政府は経験、技能のある介護人材に重点化する方針です。
今後認定介護福祉士の取得が、経験や技能の証明になることが期待されます。
5.認定介護福祉士を取得するメリット
難易度の高さや、現状の評価にばかり注目される認定介護福祉士という資格。
しかし、取得するメリットが無い資格などありません。
認定介護福祉士を取得するメリットを3つに分けて説明していきます。
- より高い介護スキルとマネジメントスキルの証明になる
- 介護士以外の視点を持てるようになる
- 地域に必要な人材になれる
1つずつ確認していきましょう。
メリット1.より高い介護スキルとマネジメントスキルの証明になる
認定介護福祉士の資格取得にかかる費用や時間は、そのままスキルの証明につながります。
現状の課題としては、評価が確立していない問題があるものの、学んだ知識が自身につながることは明白です。
認定介護福祉士では、介護の専門家として、介護スタッフのマネジメントについての知識をつけられます。
超高齢化社会を支えるキーパーソンになるために必要なのは、利用者への対応より、介護人材の育成能力です。
認定介護福祉士で学ぶスキルは、今後介護業界で活動する際に必ず大きなメリットとなってくるでしょう。
メリット2.介護士以外の視点を持てるようになる
認定介護福祉士の取得は、介護以外の視点を身につけることにもつながります。
考えなければならないことも増えますが、様々な視点で介護に向き合うことが可能です。
他職種との連携の際にも、幅広い視点が役立ちます。
介護スタッフとしての視点も大事ですが、意固地になってしまうと貴重な意見も理解が難しくなり、聞き入れられません。
医療的な考え方、リハビリテーションの考え方を意識して状況を捉えると、利用者側の視点も自然と見えてきます。
利用者の視点を意識することで可能になるのが、介護のアプローチの多様化です。
利用者に対してより良いサービスを提供できるようになることは、大きなメリットといえるでしょう。
メリット3.地域に必要な人材になれる
介護福祉士より専門的な知識を取得することで、地域と関わる機会が増え、必要とされます。
認定介護福祉士の取得は個人的なことに留まらず、地域としてもメリットです。
介護の専門的な知識を持ち、それを論理的に伝える力は地域で講演を行う場合にも役立ちます。
介護の在り方としても、地域社会に寄り添ったものであることに越したことはありません。
地域と深く関わりを持つことで、介護事情に積極的に参加していくことが可能になります。
6.認定介護福祉士を目指すときの流れ
認定介護福祉士の理解が深まってきたのではないでしょうか。
ここでは、認定介護福祉士の詳しい資格の取得の流れを見ていきましょう。
認定介護福祉士を取得するためには、4つの段階を踏む必要があります。
- 介護福祉士として5年の実務経験を積む
- 認定介護福祉士養成研修i類を受講する
- 認定介護福祉士養成研修ii類を受講する
- 認定の申請する
順番に見ていきましょう。
流れ1.介護福祉士として5年の実務経験を積む
認定介護福祉士の取得には、研修の受講が必要です。
そして認定機関では受講要件として、2つの条件を定めています。
- 介護福祉士として5年の実務経験
- 現任研修100時間以上の受講歴
また、必須ではないものの、経験があればなお良いとされているものもあります。
- 5〜10人程度の小規模介護サービスチームのリーダーとしての実務経験
- 居宅サービスと施設サービスの双方での生活支援経験
介護福祉士の資格を持っていない場合は、先ずはそこから始めなければいけません。
すでに介護福祉士として働いている場合は、積極的に研修に参加しましょう。
さらに、必須では無いとされている点は、研修の理解しやすさにも関わってきます。
余裕があれば、チームのリーダーや居宅・施設の双方を経験することがおすすめです。
流れ2.認定介護福祉士養成研修「i類」を受講する
認定介護福祉士の受講要件をクリアしている場合、認定介護福祉士養成研修i類から受講します。
詳しいカリキュラムの内容をまとめたものが、こちらです。
- 認定介護福祉士養成研修導入
- 医療に関する領域
- リハビリテーションの領域
- 福祉用具と住環境に関する領域
- 認知症に関する領域
- 心理・社会的支援の領域
- 生活支援・介護過程に関する領域
これらを受講することで修了と認められるわけではなく、様々な試験も課されます。
試験は、レポートとしてまとめた事前課題の提出や、小テストといった内容です。
i類では、345時間の演習を含んだ講習を受けることになります。
流れ3.認定介護福祉士養成研修「ii類」を受講する
認定介護福祉士養成研修i類を修了すると、ii類のカリキュラムを受けられるようになります。
カリキュラム内容は、i類で学んだ知識を活かすものです。
- 医療に関する領域
- 心理・社会的支援の領域
- マネジメントに関する領域
- 自立に向けた介護実践の指導領域
心理・社会的支援の領域はi類のカリキュラムでも登場しますが、内容が異なります。
i類では基本的に知識と技術を身につける内容ですが、ii類では地域に対する介護の仕組みとその実践について学ぶものです。
演習や講習の方法はi類と変わりません。
ii類の合計時間は255時間となります。
流れ4.認定の申請をする
i類とii類、合わせて600時間の講習を修了することで、認定介護福祉士の認定申請が可能です。
認定介護福祉士認証・認定機構に対し、認定申請を行うことで審査が行われ、認定証が発行されます。
注意しなければならないのは、5年ごとに更新手続きを行う必要がある点です。
更新手続きを行う際にも要件が定められています。
定められた更新要件は3点です。
- 認定介護福祉士の資格を持っている間に実務経験が2年以上
- 従事日数が180日以上
- 現任研修や介護の研修の講師を行い20ポイント以上取得する
この3点の要件を満たした場合に更新を行うことができます。
気になるのは、講師を行いポイントを獲得するという点です。
認定介護福祉士認証・認定機構では、認定介護福祉士に対して更新研修を毎年行います。
この研修は、更新期間内で2回の受講が定められたものです。
さらに、研究論文や実践レポートの提出も更新期間内で1度行わなければなりません。
研修の受講では5ポイント、レポートの提出で3ポイントの獲得が可能です。
そのほかに選択必修として定められた研修を行うことで、さらにポイントを獲得して、20ポイントに到達させる必要があります。
7.認定介護福祉士研修の実施団体
認定介護福祉士の研修を行っている団体は多数あり、それぞれ違いがあります。
受講料の差や、受講を行う期間も違うため、知っておかなければ後から損をしたなんてことになりかねません。
研修を行う団体は、一般社団法人認定介護福祉士認証・認定機構が随時承認を行っています。
各県の介護福祉士会
認定介護福祉士の研修を募集している介護福祉士会は、全国各地に存在します。
しかし、研修自体は認められている介護福祉士会でしか行われません。
つまり、募集している介護福祉士会が近隣県でも、開催地が遠方の可能性があるということです。
申し込みの際には十分注意しましょう。
また、研修を実施する介護福祉士会の会員となることで、受講にかかる費用が平均で20~30万円程割引されます。
特に、京都府の介護福祉士会の受講費用は、府の助成金によって他県より5万円程安いです。
受講費用を考える際には、移動費の観点も考えなければなりません。
個人によって状況は異なってくるため、注意して受講場所を決めましょう。
8.認定介護福祉士の職場と具体的な仕事内容
認定介護福祉士となった場合、どのような働き方が予想されるのでしょうか。
実は、一概にこのような働き方と決められているものはありません。
認定介護福祉士として活躍する人が少ない点から、モデルケースも少ないです。
しかし、認定介護福祉士に求められる役割は、介護施設の施設長や管理者といった役職で必要とされるものに似ています。
施設長となった場合、介護スタッフと大きく変わるのが、仕事内容と年収です。
施設長の年収は、公益社団法人介護労働安定センターの調べによると、500万円程となっております。
施設によっても変わりますが、スタッフより給料が高くなるというのは容易に想像できるのではないでしょうか。
では、気になる介護施設長・管理者の業務内容はどういったものでしょう。
介護施設長・管理者となった場合の業務内容
介護施設長または介護施設管理者と呼ばれる役職では、実務をサポートとして行いつつ、介護スタッフのマネジメントを主に行います。
実務は、利用者に直接接する他の介護スタッフと変わらない仕事です。
ここでは、スタッフのマネジメントと打ち合わせという2点について見ていきましょう。
- マネジメント業務
- 打ち合わせ
一体どのような内容でしょうか。
内容1.マネジメント業務
施設長は、マネジメント業務の全般を担うことがほとんどです。
中でも最も大切なのは、介護スタッフと施設利用者に対するマネジメント。
利用者の状態を理解し、どのようなサービスを提供するか、時には相談や面談を行いながら把握していきます。
そして、施設の利用者の満足度に直結してくるのが、介護スタッフの状態です。
- 問題が起きない人材の配置であるか
- スタッフの育成は十分であるか
- スタッフに行われている教育は十分であるか
介護の現場では、どうしても避けられないのが予期せぬ事故です。
事故が起きてしまった場合には、利用者は勿論、介護スタッフのケアにも務めます。
施設を管理する長として、コンプライアンスの遵守も徹底しなくてはいけません。
また施設によって差はあるものの、収支の管理も行います。
内容2.打ち合わせ
施設長ならではの仕事として、打ち合わせがあります。
打ち合わせを行う相手は利用者の家族や、地方行政も対象のひとつです。
他職種との打ち合わせを行うこともあります。
施設で受け入れる利用者の状態を記録しておくことの重要度は、よく理解されていることでしょう。
利用者の精神状態や性格、病歴を打ち合わせによって知れます。
そこで得られた情報を伝える先は、介護スタッフはもちろん、理学療法士・看護師といった他職種です。
正しい情報共有が行われると、利用者の安全や満足度に良い影響を与えます。
地域に密着した介護を目指すために、地方行政と打ち合わせを行う機会も出てくるかもしれません。
地域と深く関わる介護施設を作り上げることで、臨時の受け入れ先として機能することも可能になります。
9.認定介護福祉士を目指す際に今からできること
ハードルの高い認定介護福祉士の資格ですが、取得を目指すのであれば今から少しずつ始められることがあります。
今すぐにでも始められることを3つにまとめました。
- 実務者研修を取得する
- 介護福祉士の資格を取得する
- 介護福祉士ファーストステップ研修を受講する
現状と照らし合わせながら確認してみましょう。
(1)介護職員の実務者研修を取得する
現在、無資格で介護士として働いている人には、実務者研修の取得がおすすめです。
実務者研修は資格を持っていない人でも挑戦することができます。
実務者研修を取得すると、介護の3年の実務経験と合わせることで、介護福祉士の受験要件を満たすことが可能です。
介護に必要な、たん吸引についての基礎知識も学べます。
(2)介護福祉士の資格を取得する
介護士として3年以上働いているが資格を持たないという人は、介護福祉士の取得を目指してみてはいかがでしょうか。
実務経験が3年ある場合、実務者研修を取得することで介護福祉士の受講要件が満たされます。
介護福祉士は国家資格であることから、利用者から得られる信頼も大きいです。
他の職場を経験してみたいと感じた時、転職にも役立ちます。
また、認定介護福祉士の要件のひとつが介護福祉士として5年の実務経験です。
認定介護福祉士を目指す際に直接関わってくる資格でもあるため、取得を積極的に考えてもいいのではないでしょうか。
(3)介護福祉士ファーストステップ研修
介護福祉士として2年の実務経験があると、介護福祉士ファーストステップ研修を受講することができます。
ファーストステップ研修では、介護の実践力とともに周りに働きかける力も養われます。
この能力は、認定介護福祉士でも求められるものです。
業務に慣れてきた段階で、どのくらい技能が身についているのか確認する目的でも、実りのある研修になるのではないでしょうか。
地域ごとに開かれる研修会に参加する
ファーストステップ研修は民間団体が開く研修です。
そういった研修の他に、地域ごとに研修会が開かれている場合もあります。
病院や施設で開催している場合もあり、その内容も様々です。
研修の受講に苦手意識を感じる人は、地域で行われる研修会に参加して慣れることから始めてもいいかもしれません。
興味がある内容ならば、受講して損になることはまず無いでしょう。
他の職場の介護士と関わる機会にもなり、新鮮な刺激を受けるメリットもあります。
まとめ
認定介護福祉士という資格について、介護福祉士との違いや取得方法を解説してきました。
これからさらに需要が高まることが予想される介護業界では、リーダーシップを発揮していく役割が必要です。
認定介護福祉士がその役割を担っていくことが期待されています。
取得することで、実践可能な介護の幅が広がる可能性についてもご理解いただけたのではないでしょうか。
また、取得までのハードルの高さについても解説しました。
難易度の高い資格ではありますが、それだけ貴重な役割を与えられることの裏返しでもあります。
介護業界の未来を背負っていく覚悟で、取得を目指してみてはいかがでしょうか。