介護士が働く職場は様々ありますが、その中のひとつにサービス付き高齢者向け住宅があります。
サービス付き高齢者向け住宅は、サ高住ともいわれており、その名の通り高齢者向けの住宅施設です。
近年、日本の高齢化社会に伴い、増加傾向にあります。
ですが、サ高住ではどのようなサービスが行われるかご存知ない方も多いのではないでしょうか?
そこで、本記事ではサ高住について解説していきます。
この記事を読むことで、サ高住の仕事やサービス内容、職場としてのメリット・デメリットを知ることが可能です。
今、介護士として転職を考えている方は是非ご覧ください。
目次
1.サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)とは?
はじめに、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)について紹介していきましょう。
サ高住とは、高齢者が入居することができる住宅施設です。
高齢者の住まいの安定を確保することを目的とした「高齢者住まい法」が改正されたことにより、サ高住は登録が始まりました。
「高齢者住まい法」の改正は平成23年なので、比較的新しい制度の施設といえます。
高齢者を対象とした法律に基づいているので、サ高住に入居できる条件は以下のどちらかに該当する人です。
- 60歳以上の人
- 要介護または要支援認定を受けている60歳未満の人
また、次に詳しく紹介していきますが、基本的なサービスは見守りサービスが主となります。
そのため、入居される方はある程度自分で生活を自立している方が多い傾向です。
このように高齢者向けの住宅施設というのが、サ高住の基本構造となります。
では、提供されるサービスにはどのようなものがあるのでしょうか?
次にサ高住で提供されるサービスについて、具体的に見ていきましょう。
2.サービス付き高齢者向け住宅の仕事内容は主に2つ!
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者向けの住居を提供する施設だと紹介しました。
サービス付きとあるように、サ高住では提供が必須となるサービスがあります。
そのサービスとは主に2つです。
- 安否確認
- 生活相談
各サービスについて、確認していきましょう。
仕事内容1.安否確認サービス
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で提供されるサービスの1つが「安否確認サービス」になります。
安否確認サービスは、入居者様の安心と安全の確保を目的に職員が入居者様のもとへ行き、状況確認を行うものです。
多くのサ高住では午前中などに入居者様の居室を訪ねて、直に体調の確認や当日の外出予定などを伺ったりします。
そのため、日に一度は入居者様の状態を確認することができ、日々の体調変化を把握することが可能です。
また、入居者様のお部屋には呼び出しボタンやセンサーなどが取り付けられています。
入居者様からの呼び出しがあったときには、職員がすぐに入居者様のもとへと行き、対応することも安否確認サービスのひとつです。
仕事内容2.生活相談サービス
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で提供される2つ目のサービスが「生活相談サービス」となります。
生活相談サービスとは、入居者様と生活状況に関する相談を行い、入居者様にとって必要となるサービスを確認するものです。
必要と判断したサービスは地域包括支援センターや訪問介護事業所などと連携をとり、適切なサービスが提供されるよう調整します。
提供されるサービスとしては、身の回りの生活をサポートする訪問介護や身体の健康を維持・向上させるリハビリテーションなどです。
このように不便なく、円滑に入居者様が生活できるように調整していくサービスが生活相談サービスとなります。
サ高住で提供されるサービスは「安否確認」と「生活相談」が主なものです。
それでは、次にサ高住で働くための条件について解説していきましょう。
3.サービス付き高齢者向け住宅で働くために必要な資格は?
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で、提供されるサービスについて知っていただけたかと思います。
ここからは、実際にサ高住で働くときに必要となる資格について確認していきましょう。
ほとんどのサ高住の求人では「介護初任者研修」を修了していることが、求人条件となっています。
なぜなら、サ高住では日中、ケアの専門家が常駐してサービスを提供する必要があるからです。
そのため、多くの求人では介護初任者研修を修了していることを求人条件としています。
また、無資格の場合でも入職後に介護初任者研修を受講するケースがあるようです。
ケアの専門家には介護初任者研修以外にも以下のものがあります。
- 社会福祉法人、医療法人、指定居宅サービス事業所等の職員
- 医師
- 看護師
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 介護支援専門員
ただし、例外としてサ高住の中でもコンシェルジュ(フロント業務)を中心とした事務や雑務を主に働く場合には資格条件がない求人もあるようです。
介護初任者研修とは?
サ高住にはケアの専門家が常駐する必要があると述べました。
そのケアの専門家の中でも取得しやすいものが介護初任者研修です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の求人条件となる「介護初任者研修」は、介護の基本的な技術や知識を習得します。
受講することで、適切な介護方法や状況に合わせた考え方ができるようになるからです。
介護初任者研修は、誰でも130時間程度の研修を受講することで取得できます。
介護分野で人と接する方は、取得しておいて損はない研修なので、介護業界で働く人は取得しておきましょう。
では、次にサ高住で働くことのメリットについて紹介していきます。
4.サービス付き高齢者向け住宅で働くメリット
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で、働くための条件をお伝えしました。
ここからは、サ高住で働くことのメリットについて紹介していきます。
サ高住で働く主なメリットは、下記の3つです。
- 身体的な負担が少ない
- 安定した勤務時間
- 急変対応が少ない
それぞれのメリットについて解説していきましょう。
メリット1.身体的な負担が少ない
メリットの1つ目は、身体的な負担が少ないということです。
先ほど紹介したように、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の主な仕事内容は「安否確認」と「生活相談」になります。
そのため、オシメ交換や入浴介助など、身体ケア中心の介護サービスを提供することは、介護施設に比較して多くありません。
身体ケアが少ないということは介護士にとって重労働な仕事も少ないため、身体的な負担が軽減されます。
このように身体的な負担が少ない職場なので、体力に不安がある方でも働くことが可能です。
メリット2.規則正しい生活ができる
多くの介護職で、悩みのタネとなりやすいことの1つが夜勤でしょう。
夜間帯でも介護を必要とする方がいるので、施設によっては夜勤が必須となります。
夜勤があることにより、生活リズムが崩れ、体調を崩してしまう方も。
ですが、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に就職すれば、生活リズムが崩れる悩みを解消することができます。
なぜなら、サ高住では基本的に職員が日中常駐していれば良いので、勤務形態も日勤が主になるからです。
勤務時間も多くの仕事と同様に8時間前後の求人が多く、安定して働きやすくなっています。
日勤が中心で、安定した勤務時間となっているサ高住での仕事は、規則正しい生活をする上で良い職場でしょう。
ただし、職場によっては朝食や夕食などの対応ができるように早番・遅番制度や夜勤を導入しているところもあります。
規則正しい生活をしたいと考えている方は、職場のシフトは確認しておきましょう。
メリット3.急変対応が少ない
メリットの3つ目は、急変対応が少ないということです。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居される方の多くは、生活が自立している方や要介護度1〜2の方がほとんど。
平成25年に行われた調査では、サ高住全体の平均要介護度は1.76という結果が出ています。
そのため、身体の状態が安定している方が多く、急変が起こりにくい職場といえるでしょう。
急変が少なければ急変対応も当然少ないので、安心して働くことができます。
以上が、サ高住で働く上での主なメリットです。
介護業界の中では、比較的仕事のイレギュラーが少なく、安定して働ける職場といえます。
ですが、どの職場においてもメリットだけではありません。
次にサ高住で働くデメリットについて紹介していきます。
5.サービス付き高齢者向け住宅で働くデメリット
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で、働くメリットをみていただきました。
ここからは反対に、サ高住で働くデメリットについて紹介していきましょう。
デメリットは下記の3つです。
- 介護技術を活かせない
- 入居者様の個々の生活スタイルを把握する必要がある
- 介護士兼務の場合は、身体的負担が高くなる
それぞれのデメリットを確認していきましょう。
デメリット1.介護技術を活かせない
先ほどお伝えした通り、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の仕事は直接身体ケアを行う機会があまりありません。
そのため、これまで介護士として身につけた移乗動作や体位交換などの介護技術を活かすことができない可能性があります。
いわゆる介護士の仕事でイメージされる身体ケアを行いたいと考える方には、不向きな職場です。
介護技術を存分に使って働きたい人は、仕事内容をよく確認しましょう。
デメリット2.入居者の生活スタイルを把握する必要がある
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居されている方は、ご自由に活動できる方が多いです。
自由に生活することができるので、入居者様はそれぞれ自分に合った独自の生活スタイルがあります。
サ高住で働く上で適切なサービスを提供するためには、この独自の生活スタイルを把握する必要があるのです。
なぜなら、サ高住のサービスは安否確認や生活相談など直接対応します。
そのため、時間を合わせてサービスを提供するためには、入居者様それぞれの生活スタイルを知っていないと対応することが困難です。
入居者様の中には、1日のほとんどの時間をサ高住で過ごす方も居ますし、反対によく外出される方も居ます。
このように入居者様はそれぞれの生活スタイルがあるので、各入居者様の生活スタイルを把握する必要があるのです。
はじめに各入居者様の生活スタイルを覚えるのは大変ですが、一度把握してしまえばあとはスムーズに仕事ができるようになるでしょう。
デメリット3.介護士兼務の場合は身体的負担が高くなる
最後に紹介するデメリットが、介護士兼務の場合は身体的負担が高くなるということです。
基本的にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の業務は見守り業務が中心となります。
しかし、例外としてサ高住に訪問事業所を併設しているところがあることに注意が必要です。
この例外の場合は、サ高住の職員として働く傍ら、訪問事業所の介護士を兼務する可能性があります。
すると、介護士として介護サービスを提供する仕事を行わなければならないので、身体的な負担が少ないというメリットがなくなってしまうのです。
このようにサ高住で働く場合には、デメリットもあります。
自分の働き方や生活スタイルを考えて、メリットやデメリットを把握した上で仕事選びを行うと良いでしょう。
では次に、サ高住スタッフ1日の流れを紹介していきます。
6.サービス付き高齢者向け住宅スタッフの1日
ここまで、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で働くことのメリットやデメリットについて紹介しました。
ですが、「まだサ高住スタッフの働き方のイメージがつかない。」という人もいると思います。
そこで、実際にサ高住で働いた場合の1日の流れを下記に表記しているので、ご覧ください。
実際にどの時間帯にどのような仕事をするのか、お分かりいただけると思います。
7:00 | 起床・体調確認 |
---|---|
8:00 | 朝食準備 |
10:00 | 安否確認サービス |
12:00 | 昼食準備 |
13:00 | 生活相談サービス |
15:00 | 体操や行事などレクリエーション |
18:00 | 夕食準備 |
21:00 | 就寝 |
なんとなくサ高住スタッフとしての1日の流れをご理解いただけたでしょうか?
ここで紹介した1日の流れは、あくまで一例なので当てはまらないサ高住もあります。
サ高住の勤務形態には日勤だけではなく、早番や遅番、夜勤などがある職場はこの流れとは異なるでしょう。
また、施設によって力を入れているサービスなどがあり、そのサービスに合わせて仕事内容が変わる可能性もあります。
仕事内容に関しては、求人をよく読み、施設見学などの際に確認すると良いです。
では、次に働く上で気になる給料についてみていきましょう。
7.サービス付き高齢者向け住宅の給料は?
ここまででサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の仕事内容について、だいぶ理解が進んだと思います。
働く上では仕事内容も大事ですが、給料も気になるところです。
実際にサ高住で正職員として、働いた場合の給料を確認していきましょう。
サ高住の給料水準に関しては、現在のところ施設設立の年数が浅いこともあり、公的な資料がありませんでした。
ですが、介護系の施設であることから、一般的な介護士と同様の給料水準となる傾向にあるようです。
平成30年の介護職員の平均給与額が「300,970円」となっているので、この金額に近い給料水準となることが予想されます。
この平均給与額には手当てや賞与などが含まれているので、実際の基本給部分の平均額は、「181,220円」となるようです。
このように給料面では、他の介護施設と大きくは変わらない給料を得ることができるかと思います。
それでは、最後に職場を選ぶときに注意したいポイントについて紹介していきましょう。
8.サービス付き高齢者向け住宅の職場選びでの注意点は?
職場選びでは先ほど紹介した給料も確認するべきポイントですが、そのほかにも注意点があります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の職場を選ぶときの注意点は、下記の3つです。
- 勤務形態は日勤のみか、夜勤などもあるか?
- 仕事内容には介護サービスの提供も含まれるか?
- 施設が力を入れているサービスは?
それぞれの注意点について、確認していきましょう。
注意点1.勤務形態は日勤のみか夜勤などもあるか確認する
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の勤務形態にはこれまで説明してきたように、日勤以外に早番・遅番、夜勤などがあります。
そのため、勤務形態の確認を怠ると、日勤のつもりで入職したのにその他の勤務も行わなければならない可能性があるのです。
自分の働き方に合わない勤務形態は、仕事をする上で大きなストレスとなります。
睡眠時間をしっかり取りたい人なのに、夜勤があれば十分な睡眠時間が確保できません。
また、早起きが得意ではないのに早番がある勤務では、起きるのに苦労するでしょう。
このように、自分のライフスタイルや生活上の特徴に合わせた勤務形態を選ばないと、仕事が身体に大きな負担となってしまいます。
そのため、快適に仕事をするためにも勤務形態の確認はしっかりと行うようにしましょう。
注意点2.仕事内容には介護サービスの提供も含まれるか確認する
続いての注意点は、仕事内容についてです。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の中には、訪問介護事業所が併設されていたり、介護サービスを提供したりするサ高住があります。
これらのサ高住に就職した場合は、見守りサービス以外に介護サービスも行うということに注意が必要です。
仕事内容については、求人票の仕事内容の欄に入浴介助やオシメ交換などの身体介助が含まれるか記載されています。
ほかにも募集職種の欄に、併設の訪問介護事業所で介護士兼務といった記載がある場合もあり、要確認です。
サ高住だから見守りサービスだけだと思っていたら、身体ケアも行う施設だったということにならないように、仕事内容は確認しておきましょう。
注意点3.施設が力を入れているサービスは何か確認する
最後の注意点は、施設が力を入れているサービスを確認することです。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は同じサ高住でも、施設としての強みや売りは施設ごとに異なります。
そのため、レクリエーションやイベントなどに力を入れている施設では、イベントの企画・実行も仕事のひとつです。
力を入れているサービスには、イベント以外に以下のものなどがあります。
- 買い物やゴミ出しの家事代行
- 病院受診時の付き添い
- 電球の取り替えといった身の回りのサポート など
施設の特徴によっても仕事内容が変わる可能性があるので、職場を選ぶ際には注意するようにしましょう。
このようにサ高住にも様々な職場があるので、自分のワークスタイルにあった職場選びを心がけてください。
まとめ
日本は高齢化社会が進んでおり、それに伴う形でサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)も増加傾向にあります。
そのため、求人数も多く、職場選びは難しくないでしょう。
サ高住は見守りサービスを中心に、入居者様の生活をサポートする仕事です。
コミュニケーションをとる機会も多いので、関係性を築き、長く生活をサポートしたいと考えている方におすすめの仕事といえます。
サ高住に興味がある方は、本記事を転職の参考にしてみてください。