「将来は介護職に就きたいけど、いきなりキツイ仕事はちょっとな…」
「学生でもできる介護の仕事があれば、試してみたいけど…」
もし、あなたがそんな風に考えているのであれば、是非一度、ガイドヘルパーを検討してみてください。
ガイドヘルパーは障がい者の外出や移動を手助けする介護の仕事。
数日間の講習と実習をうければ、大学に通いながらでも取得できる、介護の資格です。
この、ガイドヘルパーという仕事、介護職の中でも今後需要が増えるであろう、注目の職種であることをご存知でしたか?
この記事では、ガイドヘルパーがなぜ必要とされているのか、またどうやったらなれるのかをわかりやすく説明していきます。
あなたの手助けで、多くの障がい者の方々と、そのご家族に笑顔が戻るかもしれません。
是非、最後までお読みください。
目次
1.ガイドヘルパーは短期間での取得も可能!
ガイドヘルパーはほかの介護職の資格に比べると、取得のしやすい資格と言えます。
なぜなら、種類やスクールによってばらつきはあるものの、研修が数日間で完結するからです。
実は、ガイドヘルパーと一言でいってもその種類は3つにわかれます。
3種類については後から詳しく解説しますが、その3つとも、1日から長くても4日間程で資格が取れるのです。
- 視覚障がい者の移動を補助する「同行援護従業者養成講座」
- 全身障がい者の移動を補助する「全身障がい者ガイドヘルパー」
- 知的障がい者・精神障がい者の移動を補助する「行動援護従事者」
まず、視覚障がい者の移動を補助する「同行援護従業者養成講座」ですが、「一般」と「応用」の2つのコースに分かれます。
一般課程の研修時間は20時間、日数にして約3日間、応用課程に至ってはさらに減って、12時間、2日あれば修了可能です。
全身障がい者の移動を補助する「全身障がい者ガイドヘルパー」の研修時間は16時間、日数にして1~3日間、有資格者であれば最短1日で取得できてしまいます。
最後に、知的障がい者・精神障がい者の移動を補助する「行動援護従事者」。
研修時間は20時間、日数にして3~4日間です。
他の介護系の資格が少なくとも数ヵ月かかることに比べれば、かなり短期間ですよね。
(1)初任者研修・実務者研修・介護福祉士となにがちがうの?
介護資格と言えば、初任者研修、実務者研修、そして介護福祉士が有名ですが、ガイドヘルパーと何がちがうのでしょうか?
ガイドヘルパーと初任者研修・介護福祉士では、介助する対象者と介助の範囲が違います。
ガイドヘルパーは「全身障がい者」や「視覚障がい者」も介助の対象に入り、しかも「移動」に特化しているからです。
初任者研修や介護福祉士を取得すると、ガイドヘルパーの仕事の大部分は行うことができるようになります。
ですが、目の不自由な方にに対しての外出・移動介助はできません。
ガイドヘルパーの中の、同行援護従業者を取得する必要があります。
同様に、全身障がい者に対する移動補助も、初任者研修や介護福祉士ではできません。
全身障がい者ガイドヘルパーを取得する必要があります。
全身障がいとは、四肢マヒや四肢体幹筋力低下など、全身にわたる運動・機能障がいのこと。
こういった、重度の障がいがある方々の移動介助には、ガイドヘルパーの資格が必要です。
このように、ガイドヘルパーは初任者研修や介護福祉士が担当しない範囲の障がいもカバーし、移動中の介助の専門家である、と言えます。
(2)他の介護資格と合わせるのがおすすめ
ガイドヘルパーは、他の介護資格と合わせて取得することも視野に入れておきましょう。
なぜなら、以下の違いがあるからです。
- 背景にある法律
- 研修時間と取得までの期間
- 就職や給料など、待遇への影響
多様な障がいに対して対応できるガイドヘルパーですが、残念ながら就職や給料にはそれほど有利に働きません。
「外出」や「移動」に特化しており、仕事の範囲が限定的だからです。
初任者研修や介護福祉士は、研修時間も長く、介護全般にわたる知識や技術を習得します。
それだけに即戦力として求められ、就職や転職にも強いです。
本格的に介護の道に進むことを視野に入れているのであれば、どちらも取得するのがベスト。
スキルとしても鬼に金棒ですし、転職・就職・給与アップにも強くなります。
それでは、次からガイドヘルパーについて、より詳しく説明していきますね。
先ほどお伝えした通り、3つの種類を順番に見ていきましょう。
2. まずはガイドヘルパーについて知ろう
ここから、ガイドヘルパーについて、もっと詳しくなっていきましょう。
前述の通り、ガイドヘルパーは3種類に分けられます。
- 同行援護従業者養成講座(視覚障がいに対応)
- 全身障がい者ガイドヘルパー養成研修(全身障がいに対応)
- 行動援護従事者研修(知的障がい・精神障がいに対応)
ガイドヘルパーとはこの3つの総称で、様々な障がいを持つ方々の外出時の移動に関して、サポートを行う人のことを言います。
合格試験は無く、カリキュラムを修了した時点で修了証が発行され、都道府県単位で資格が付与されますが、登録後は全国で勤務可能です。
仕事内容や活躍の場など、1つずつみていきましょう。
(1)同行援護従業者
同行援護従業者は、目の不自由な方々が外出する際に外出先での支援・援護をするガイドヘルパーです。
例えば、視覚障がい者の方が公共手段を使って出かけるところを想像してみてください。
階段の昇降、電車が勢いよく入ってくるホーム、どこをとっても危険がいっぱいですよね。
切符を買うこと1つとっても難関と言えます。
健常者にとってはなんともない場面でも、視覚障がい者にとっては常に危険との隣り合わせ。
そういった危険から視覚障がい者を守り、安全に目的地まで辿り着けるようにサポートするのが同行援護従業者です。
具体的には、以下のような援助を行います。
- 階段や段差につまずかないように情報を伝える
- 外出時の食事や、お手洗いでの援助
- コミュニケーションを取る際の代筆や代読
同行援護従業者がいてくれることで、視覚障がい者の方々も安心して外出を楽しめるようになるのです。
(2)全身障がい者ガイドヘルパー
全身障がい者ガイドヘルパーは、その名の通り全身にわたる運動・機能障害をお持ちの方々の移動を介助するガイドヘルパーです。
「全身障害」とは、以下のような障害をさします。
- 先天性の脳性麻痺により身体を上手く動かせない
- 交通事故などの後遺症による麻痺が残ってしまって歩行が困難
- 筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- 身体障がい者手帳1級の重度の障害
全身障がいの方々は家の中でも一人では困難な場面が多く、ましてや外出となると誰かのサポートが必要。
その時に外出介助を行うのが、全身障がい者ガイドヘルパーです。
初任者研修や介護福祉士の資格でも、全身障がい者の介護を担当することはできます。
しかし、移動介助となると、全身障がい者ガイドヘルパーの資格が必要です。
車いすや補助具の安全な操作、利用者の姿勢維持、移乗など、移動介助における専門知識を求められます。
そのため、全身障がい者ガイドヘルパーという専門性が必要となるわけです。
(3)行動援護従事者
行動援護従事者は知的障害・精神障害を持つ利用者の外出支援を行うガイドヘルパーです。
なぜ専門の資格が存在するのか、考えてみると分かりやすくなります。
例えば、知的障害・精神障害の方々は、ときに本人や周りの人々に危険が及ぶような突発的な行動をとることがあるはずです。
- 感情が高ぶった時に押さえられず自分や相手を傷つける
- 本来食べられないものを口にしてしまう
- 赤信号にも関わらず道路に飛び出してしまう
これらは、知的・精神障害者がとる突発的な行動例の一部です。
こういった行動を未然に防ぐためにも、外出時は特に専門の知識を持ったヘルパーが援助する必要があります。
そして、その援助を担うのが行動援護従事者。
行動援護従事者は、万が一、こういったパニックが起こった場合の適切な対応や、パニックを未然に防ぐ先回りの行動が求められます。
以上が、ガイドヘルパーに含まれる3つの資格の概要です。
残念ながらまだまだ知名度が低く、数も少ないガイドヘルパー。
昨今ではその重要性に注目が集まっており、今後ますます必要とされてくる介護職でもあります。
では、ガイドヘルパーになるメリットはあるのでしょうか。
メリットはたくさんありますが、今回はその中から4つに絞ってお伝えしますね。
3.ガイドヘルパーを取得するメリットは?
ここからは、ガイドヘルパーを取得するメリットについてお話ししていきます。
- 無資格・未経験の学生でも短期間で専門知識が学べる
- 空いている時間を利用して人の役に立てる
- 初任者研修とはまた違った介護知識を学べる
- 人手不足で需要が高く将来性がある
1つずつ確認してみてください。
メリット1.無資格・未経験の学生でも短期間で専門知識が学べる
ガイドヘルパーは無資格・未経験の学生さんでも、短期間で資格取得が可能です。
介護の仕事の中でも「移動介護」に特化して学ぶため、研修時間が少なく済むからです。
介護職の場合、資格取得までに時間がかかるものも多いです。
最低でも数ヵ月、長いと半年以上かかるものもあり、中には受験資格を得るまでに介護現場での実務経験が3年以上、というものも。
その点、ガイドヘルパーは比較的、短期間で取得可能です。
3種類、どの資格でも、2~3日,長くても4日間ほどで研修は終わるので、大学に通いながらも無理なく取得できます。
メリット2.空いている時間を利用して人の役に立てる
ガイドヘルパーは自分の空いている時間で、障がい者やそのご家族の手助けができます。
移動介護が必要とされる場面は外出時のみ、限られた時間の仕事だからです。
どのような場面で必要かというと、週に1回の通院同行や、朝の通学の同行の30分間など。
そのほかにも、美容院に行きたい、週に数回の散歩30分をお願いしたいなど、短時間の同行援護の依頼はたくさんあります。
空き時間を利用して、そういった人たちを助けることができるのです。
1日みっちり介護の仕事に就くのはまだちょっと…という人でも、これなら始めやすいですよね。
空き時間の利用といっても、利用者さんの安全・安心な外出を補助するのに必要不可欠な存在。
利用者さんが外出を楽しめるようになるとともにご家族の負担が減りますから、同時にたくさんの人を手助けしていることになります。
メリット3.初任者研修とはまた違った分野の介護知識を学べる
ガイドヘルパー研修では、初任者研修などでは学ばない領域の知識と技能を学びます。
視覚障がい者への移動援助や、知的・精神障がい者への移動援護知識は、初任者研修などでは扱わない範囲だからです。
そして、その知識や技術は介護の道に進む限り、必ずどこかで役だつもの。
たとえば、あなたが将来、高齢者施設の介護職として働いた場合、視覚障がい援助の知識は、高齢者介護にも役立つでしょう。
高齢から視力が衰えてくる利用者さんもいるからです。
ガイドヘルパーを取得するのは、将来、介護士として本格的に働き始めたあとも使える知識や技術を先取りするようなもの、と言えます。
働きだして忙しくなる前に取得しておくのは、賢い選択かもしれませんね。
メリット4.人手不足で需要が高く将来性がある
ガイドヘルパーは将来活躍の場が増える可能性が大きいと言えます。
移動支援を含めた障がい者の自立した生活を実現することは、国の政策の1つでもあるからです。
厚生労働省が各自治体に向けて出している「地域生活支援事業実施要綱」。
これは、障がい者であっても自立して、安心して暮らすことのできる地域を作っていくために、厚生労働省が自治体に向けて出している実施要項です。
障がい者への移動支援はここに掲げられている項目の1つでもあります。
つまり、移動介助は、国として普及に勤めているサービスであり、ガイドヘルパーに対しての注目は今後ますます増えると言えるでしょう。
ここまでで、ガイドヘルパーを取得するメリットがおわかり頂けたかと思います。
では、次の章から早速、ガイドヘルパーになるにはどうしたらいいのか、研修内容や費用、取得までの期間についてみていきましょう。
4.ガイドヘルパーになるにはどうしたらいい?
ガイドヘルパーを取得するメリットは、たくさんあることがわかりました。
ここからはガイドヘルパーになるための研修内容や取得期間、費用について詳しく書いていきます。
- 同行援護従業者
- 全身障がい者ガイドヘルパー
- 行動援護従事者
まずは同行援護従業者(資格障がい者へのガイドヘルパー)から見ていきましょう。
(1)同行援護従業者
同行援護従業者の資格は、民間の福祉スクールやNPO団体の運営する「同行援護従業者養成研修」を受講することで取得可能です。
研修には「一般課程」と「応用課程」があり、それぞれ研修時間と日数が違います。
一般課程、応用課程の研修時間と取得までの期間を表にまとめたのでご覧ください。
講義 | 演習 | 合計 | 研修日数 | |
一般課程 | 12時間 | 8時間 | 20時間 | 3日間 |
応用過程 | 2時間 | 10時間 | 12時間 | 2日間 |
一般課程と応用課程が2週に分かれて開講されることがあり、その場合、両方取得しようとすると研修終了まで2週間かかりますが、それでもたった2週間。
どちらか1つなら2~3日間、両方でも2週間なので、かなり短期間で取得できる資格と言えます。
受講内容
一般課程、応用課程、それぞれの学習内容と時間数は以下の表の通りです。
応用課程では12時間中10時間が演習にあてられており、実践練習に重点をおいていることがわかります。
どちらもカリキュラムを修了した時点で証明書が発行され、合格試験はありません。
【一般課程】
科目名 | 時間数 | 学習内容 |
---|---|---|
視覚障がい者(児)福祉の 制度とサービス |
1 | 障がい者福祉の背景、動向、制度、サービス、概念、定義など |
同行援護の制度と従業者の業務 | 2 | 同行援助制度の概論・職業倫理・業務・リスクマネジメント・留意点など |
障がい・疾病の理解① | 2 | 視覚障がい者についての理解・実態とニーズなど |
障がい者(児)の心理① | 1 | 先天性視覚障がい者の心理、中途視覚障がい者の心理 |
情報支援と情報提供 | 2 | 移動中の口頭による情報支援、状況や場面別での情報提供 |
代筆・代読の基礎知識 | 2 | 代筆・代読・点字・音訳・情報支援機器の種類など |
同行援護の基礎知識 | 2 | 視覚障がい者への接し方、同行援護中の留意点、歩行に関する補助具・用具の知識など |
基本技能(※演習) | 4 | してはいけないこと、狭い場所の通過、椅子への誘導、段差・階段など |
応用技能(※演習) | 4 | 様々な階段・ドア、エレベーター、エスカレーター、車の乗降、食事、トイレ、車いす利用の対応など |
合計: | 20 |
【応用課程】
科目名 | 時間数 | 学習内容 |
---|---|---|
障がい・疾病の理解② | 1 | 「盲」と「弱視」、視覚障がいの二次的障がい、など |
障がい者(児)の心理② | 1 | 障がい者の家族の心理、障がい者とのコミュニケーションなど |
場面別基本技能(※演習) | 3 | 日常的な外出先での技能を習得、食事介助など |
場面別応用技能(※演習) | 3 | 目的に応じた外出先での技術(トイレ、その他様々な場面) |
交通機関の利用(※演習) | 4 | バス、電車など交通機関での移動支援技術 |
合計: | 12 |
一般課程と応用課程は、できればどちらも取得することをオススメします。
理由は、2つあるので確認してみましょう。
1つは、応用課程にふくまれる、「交通機関利用時の実習」がかなり実践的で、受講する価値があるからです。
実際の同行援護の仕事において、交通機関を利用する場面は多く、資格取得研修の段階で演習を行っておくことが望ましいと言えます。
スクールによっては、この演習は必須と判断し、一般課程だけの開講は行っていないところもあるほど。
2つ目の理由は、応用課程を修了することで、のちのちサービス提供責任者へ挑戦できるからです。
一般課程終了だけでも同行援護従業者として働けますが、サービス提供責任者になるには応用課程を修了している必要があります。
いまここで2日間プラスして研修を受けることで、将来のキャリアが広がるのであれば、あと少し頑張ってみる価値はありますよね。
以上の理由から、一般・応用課程どちらも合わせて取得することをおすすめします。
費用
同行援護従業者養成研修の費用ですが、一般課程は3万~4万程、応用課程が2万~3万程、
合計で5万~7万円、といったところです。
一般課程・応用課程のセットコースだと、4万~5万円くらいが相場。
ちなみに、同行援護従業者養成研修は、民間の福祉系のスクールだけでなく、社会福祉法人などの団体も開催しています。
そちらの方が少しだけ割安感があるので、費用が気になる場合は福祉法人が主催しているコースを探してみるのもおすすめです。
(2)全身障がい者ガイドヘルパー
全身障がい者ガイドヘルパーは、「全身障がい者ガイドヘルパー養成研修」を受講することで取得可能です。
全身障がい者ガイドヘルパー養成研修で義務付けられている研修時間は16時間。
講義12時間+演習4時間という内訳で、日数にして、1~3日間で取得可能です。
全身障がい者ガイドヘルパーは、ガイドヘルパーの3つの中では一番、初任者研修や介護福祉士などと内容が近い資格と言えます。
研修内容が重複するところがあり、初任者研修や介護福祉士をすでに取得していると免除される科目があるからです。
無資格から取得する場合、研修日数は3日間が一般的で、初任者研修や介護福祉士を取得している人だと1~2日で取得できてしまいます。
受講内容
全身障がい者ガイドヘルパー養成研修の科目と各時間数は以下の通りです。
有資格者の場合、研修時間は6時間少なくなって、講義・演習合わせて10時間で取得できてしまいます。
こちらも合格試験はありませんので、カリキュラムを修了すれば資格取得です。
科目名 | 無資格者時間数 | 有資格者時間数 |
---|---|---|
障がい者(児)福祉の制度とサービス | 2時間 | ✖(免除) |
障がい者(児)の心理 | 1時間 | ✖(免除) |
ホームヘルプサービス概論 | 2時間 | ✖(免除) |
ホームヘルパーの職業倫理 | 1時間 | ✖(免除) |
移動介護従業者の制度と業務 | 1時間 | 1時間 |
重度肢体不自由者における障がいの理解 | 1時間 | 1時間 |
介助にかかわる車いす及び補装具等の理解 | 1時間 | 1時間 |
移動介護における姿勢保持 | 1時間 | 1時間 |
移動介護時におけるコミュニケーション | 1時間 | 1時間 |
事故防止に関する心がけと対策 | 1時間 | 1時間 |
車いすでの移動介護に係わる技術:生活行為の介助(※演習) | 1時間 | 1時間 |
車いすでの移動介護に係わる技術:移動介助の方法(※演習) | 3時間 | 3時間 |
合計: | 16時間 | 10時間 |
車いすや補助具の知識・操作方法が講義にも演習にも含まれてくるのが、全身障がい者ガイドヘルパーの特筆すべき点でもあります。
費用
全身障がい者ガイドヘルパー養成研修の受講費用ですが、無資格の人が受ける場合民間の介護スクールで3万円台、認定NPO法人などで2万円台が相場です。
有資格者の場合、民間介護スクールで2万5千円くらいに下がりますし、スクールによっては受験資格を有資格者に限定して、1万円台で提供しているところも。
また、初任者研修との抱き合わせで割引を設定しているところもあるので、初任者研修と一緒に取得してしまうのも選択肢の1つです。
(3)行動援護従事者研修
行動援護従業者養成研修は、都道府県、もしくは都道府県の認定するスクールやNPO法人が実施しています。
24時間の研修時間が義務付けられており、その内訳は講義10時間+演習14時間、研修日数は、3~4日が平均的です。
基本的には資格や実務経験の有無に関わらず、誰でも受講が可能ですが、実施団体によっては実務経験や介護資格がないと受講できないことも。
受験資格を設けているかどうかは、念のため実施団体に確認することをおすすめします。
受講内容
行動援護従業者養成研修の学習内容と、時間数をみてみましょう。
下の表をご覧いただくとわかるように、「強度行動障害」についての講義が多く含まれます。
強度行動障害とは、自分や他人を傷つける、物を壊すといった行動があり、特別な支援が必要な状態のこと。
知的・精神障害者の中には、強度行動障害をもつ方々もいるので、専門知識を学ぶ必要があるからです。
また、講義より演習に多くの時間が割かれているのも特徴的。
より実践的な行動援護術を身につけるために、疑似体験などを取り入れているからです。
合格試験は無く、カリキュラムを終了した時点で終了証明書が発行されます。
講義 | 時間数 |
---|---|
強度行動障害がある者の基本的理解 | 2.5時間 |
強度行動障害と生活の組み立て | 2時間 |
強度行動障害のある者へのチーム支援 | 2時間 |
強度行動障害に関する制度及び支援技術の基礎的な知識 | 3.5時間 |
合計: | 10時間 |
演習 | 時間数 |
---|---|
行動障害がある者の固有のコミュニケーションの理解 | 2.5時間 |
障がい特性の理解とアセスメント | 2.5時間 |
行動障がいの背景にある特性の理解 | 2.5時間 |
基本的な情報収集と記録等の共有 | 1時間 |
環境調整による強度行動障がい者の支援 | 3.5時間 |
記録に基づく支援の評価 | 1時間 |
危機対応と虐待防止 | 1時間 |
合計: | 14時間 |
実際に働き始めたあとのことを考えると、講義より演習が多いのは安心材料と言えるかもしれませんね。
費用
行動援護従業者養成研修の研修費用は3万5千円~4万円が相場。
NPO団体が実施する場合、2万円台からあったりもします。
また、学生には大幅な割引がされて、中には1万円台前半というところもあるので、自分の通いやすい地域でいろいろ探してみてくださいね。
以上がガイドヘルパーになるための研修の詳細でした。
次からは、ガイドヘルパーになるには知っておきたいことを書いていきます。
押さえておいて欲しいポイントを3つ、書いていますので、是非読んでみてください。
5.ガイドヘルパーになるなら知っておきたいこと
ここでは、ガイドヘルパーになるなら知っておきたいことを3つ、ご紹介します。
ポジティブなこと、ネガティブなこと、両方含まれますが、包み隠さず現実をお伝えしています。
- 初任者研修と合わせて取得することで就職・転職が有利に
- 給料・待遇面へのプラスはそれほど期待できない
- 体力・気力ともに必要になる
1つずつ、みていきましょう。
(1)初任者研修と合わせて取得することで就職・転職が有利に
ガイドヘルパーの資格は、初任者研修や介護福祉士などと合わせて取ることで、就職や転職には有利になります。
初任者研修で網羅的に介護を学び、ガイドヘルパーでプラスアルファーの知識と技術を身につけるからです。
いうなれば、英語の教師が数学も教えられるようなもの。
需要が増えるのも簡単に想像できますよね。
介護業界では、「初任者研修以上を持っていること」というのが求人の条件になることが多いです。
ですので、ガイドヘルパーと初任者研修を合わせて取得しておくことで、就職や転職の間口が広がる、と言えます。
(2)給料・待遇面へのプラスはそれほど期待できない
ガイドヘルパーの資格が給料・待遇へのプラスになることは、残念ながらあまり期待できません。
ガイドヘルパーは移動に特化した、限定的なスキルや知識ということもあり、初任者研修や、介護福祉士の方が重視されるからです。
実際、初任者研修や介護福祉士は、介護全般に関してかなりの研修時間をかけて学んでおり、即戦力として場面を問わず求められます。
それに比べ、ガイドヘルパーは研修時間も短く、限定的な範囲を扱うので、待遇面をアップするほどの影響力はありません。
ガイドヘルパーを取得するならば、自分のスキルアップのために学ぶつもりで望みましょう。
(3)体力・気力ともに必要になる
ガイドヘルパーとして働くには、体力・気力ともに必要になってきます。
利用者をストレッチャーや車いすに乗せて移乗したり、危険を先読みするために常に神経を尖らせておく必要があるからです。
自分で動くことができない全身障がい者を、時に抱きかかえたりすることもあるので、体力を使います。
また、周囲の状況や利用者の言動に常に気を配りながら移動をサポートすることは、かなり労力のいる仕事です。
特別に鍛える必要はありませんが、そういった場面に対応できるだけの体力は必要。
緊急時にも慌てず落ち着いて判断・行動できる、気持ちの強さも必要になります。
時には体力的にも、精神的にもしんどいこともあるのがガイドヘルパーです。
ガイドヘルパーには、体力・気力が必要だと書きましたが、その他にも必要な要素はあるのでしょうか?
次の章では、どんな人がガイドヘルパー向いているか、について書いていきますね。
6.どんな人が向いている?必要な資質は?
ガイドヘルパーに向いている人の要素を6つ、書き出してみました。
どれか1つでも当てはまるようであれば、あなたはガイドヘルパーの素質があると言えるでしょう。
- 自信はないが自分のできる範囲で介護職に携わりたい人
- 思いやりがあり社会貢献したい人
- 障がい者であっても外出を楽しんでいきいきと生活してほしいと思っている人
- コミュニケーション能力の高い人
- 危険を察知し適切な方法で回避する行動が取れるなど判断力のある人
- 介助に対応できる体力がある人
特に、1~3のうちのどれかが当てはまっていれば、是非チャレンジしてほしいです。
4~6は、研修を通して高めていける能力でもありますから!
できることからスタートし、あなたに合っているかを決めても遅くはないはずです。
チャレンジする精神は、どのような職種でも求められる要素なので覚えておくと良いでしょう。
7.どんなスクールがあるか見てみよう
では、ここからは実際にどのようなスクールがあるか、みていきましょう。
民間の福祉系スクールと、そのほかにNPOや社会福祉法人などの団体主催のコースも参考までにご紹介します。
- 未来ケアカレッジ
- 藤仁館医療福祉カレッジ
- 各自治体の認めたNPOなどの団体
それぞれ見ていきましょう。
①未来ケアカレッジ
全国展開しており、「同行援護従業者養成」、「全身障がい者ガイドヘルパー養成」、「行動援護従業者養成」3つとも開催しています。
運営会社名 | 株式会社 EE21(イーイーニジュウイチ) |
住所 | 大阪府大阪市北区太融寺町5-15 梅田イーストビル5F |
対応エリア | 関東・東海・関西・九州 |
TEL | 06-6363-2400(代表) |
公式サイト | https://www.miraicare.jp/ |
料金目安 | ¥20,000~¥40,000 |
②藤仁館医療福祉カレッジ
都内、埼玉、横浜、群馬でスクールを開催しており、「同行援護従業者養成」と「行動援護従業者養成」の扱いがあります。
運営団体名 | 有限会社プログレ総合研究所 |
住所 | 埼玉県さいたま市大宮区大門町3-88 逸見ビル2階 |
対応エリア | 都内、埼玉、横浜、群馬 |
TEL | 048-640-4401 |
公式サイト | http://www.omiya-fukushi.co.jp/ |
料金目安 | ¥20,000~¥40,000 |
③各自治体の認めたNPOなどの団体
各自治体の認めたNPOなどの団体も、スクールを開催しています。
いくつか紹介するので、参考にしてみてください。
特定非営利活動法人み・らいず2
大阪を拠点とするNPO法人で、主に学生を対象に講座を開講。
学生限定で、ガイドヘルパーはなんと¥1,000-という破格で提供しています。
運営団体名 | 特定非営利活動法人み・らいず2 |
住所 | 大阪市住之江区南加賀屋4-4-19 |
対応エリア | 大阪 |
TEL | 050-5840-3119 |
公式サイト | https://www.me-rise.com/ |
料金目安 | ¥1,000~ |
社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会
東京新宿区にある、視覚障がい者福祉の総合施設団体。
同行援護従業者養成コースを開催しています。
一般課程だけでは実践適さないと独自判断しており、一般・応用を合わせて32時 間/4日間の研修として実施しています。
運営団体名 | 社会福祉法人 東京ヘレン・ケラー協会 |
住所 | 東京都新宿区大久保3-14-20 |
対応エリア | 東京 |
TEL | 03-3200-0525 |
公式サイト | https://www.thka.jp/index.html#main |
料金目安 | ¥49,000-(一般・応用一環コース) |
もちろん、これらはほんの一部であり、探せば他にもたくさん出てきます。
アクセスの良さ、費用、研修日程などを総合的に判断して選んでくださいね。
【Q&A】気になることは確認しておこう
最後に、気になることにQ & A方式でお答えします。
参考になれば幸いです。
Q1.どんな年代の人が受講しているの?
10代~60代までの幅広い年齢層が受講しています。
年齢制限はないので、やってみたいと思ったときがチャンスです。
Q2.利用者さんの年代は?
小学生のお子さんから高齢の方まで、幅広い年代の方がいらっしゃいます。
視覚障がい者さんの移動介助の場合、年齢と共に目も不自由になるので、高齢者の割合が多いです。
色々な年代とのコミュニケーションを通じて、自らを高めることができるのも利点ですね。
Q3.利用者さんが依頼してくる目的って具体的にどんなこと?
例えば、以下のような目的の人から依頼が来ることが多いです。
- 買い物やスポーツ
- カラオケや映画
- 渋谷で服を買いたい
- 表参道のパンケーキが 食べたい
- 好きな演歌歌手の追っかけに同行して欲しい
- 陶芸がしたい
- 放課後、デイサービスまでの送迎支援
中には、2ヶ月に1度開催されるダンスパーティーに同行してほしい、なんていう依頼もあります。
Q4.仕事は平日だけ?土日もある?
利用者の目的によっては土日の支援もあり得ます。
通学の際の援助であれば平日のみですが、娯楽のための外出だと休日の依頼になることもあるのです。
Q5.服装や髪型に規制はある?
所属団体にもよりますが、中には服装・髪型自由、革ジャンにジーンズ、金髪や赤髪でもOK!というところまであるくらい。
働くところの規則に従うようにしましょう。
ただ、身体の動きを制限しない格好でいるイメージを持つと働きやすいです。
まとめ
障がい者であっても外出を楽しみ、いきいきと生活できる社会をめざす流れのなかで、今後ますます需要が増えてくるであろうガイドヘルパー。
一方で、現時点では慢性的に人手が足りておらず、初任者研修などと比べるとまだまだ知名度も低いという現実もあります。
1日の内の数時間、空いた時間に人助けが出来るという点で、挑戦しやすい仕事でもあり、学生さんにもっと知ってもらいたい資格です。
あなたが外出を援助することで、利用者さんに笑顔が増え、ご家族の負担もへり、大げさではなく、みんなが少しずつ幸せになると言えます。
迷っているなら是非、チャレンジしてみませんか?
一人でも多くの障がい者の方に、外の世界と触れ合う楽しさを提供してあげましょう。