「介護の管理職に就いて、キャリアアップをはかりたい」
そう考える人が増えています。
しかし、自分が管理職になるための条件を満たしているのかどうか、分からない人もいるでしょう。
この記事では、介護士が管理職に就くための必要条件や資格・給料・業務内容などを解説していきます。
一人前の管理者になるためのコツも紹介していますので、興味のある人は最後まで読んでみてくださいね!
目次
1.介護業界の管理職の概要や仕事内容
最初にお話するのは、介護業界の管理職の概要や仕事内容についてです。
介護の施設管理者は、事業所の形態によって管理者または施設長と呼ばれています。
介護施設の責任者として、運営や管理をするのが主な仕事です。
全体をまとめる人がいなければ、施設はうまく機能していきませんよね。
ここでは、施設管理者の具体的な仕事内容を4つに分けて説明していきます。
- 施設の管理
- 施設の運営
- スタッフの管理
- 利用者の管理
介護の管理職に就いて、今後活躍したいという人は必見です!
仕事内容1.施設の管理
施設管理者の仕事内容の1つは、介護施設の管理です。
施設を良い状態に維持するのは、管理職の仕事です。
環境や設備の不備は、利用者やスタッフの安全に関わります。
たとえば、機能しない設備は修理するか、新しい物へ交換を手配しなければなりません。
そのほか、具体的な施設の管理内容は以下を参考にしてください。
- 建物の雨漏りの修理
- 施設の壁紙の張り替え
- 劣化した手すりの交換
- 車椅子の買い替え
- 介護ベッドの修理
修理や交換手配、代金支払いなど、介護の管理職に就くとすべての施設管理を担当します。
仕事内容2.施設の運営
介護施設の運営も、施設管理者にとって大きな仕事です。
施設の利用者が、心地よく過ごせるようサービスを提供するには、様々な計画や実行能力が必要とされます。
年間の行事をはじめ、月単位や週単位などでスケジュールやタスク管理をし、施設をスムーズに運営していくことが大切です。
施設運営の主な仕事内容は、次の通りです。
- 年間行事の計画
- 運営方針や目標の設定
- 営業や入居促進イベントの開催
- 行政機関との連絡
- 地域や医療機関との連携
- 介護保険の請求
- コストマネジメント
副施設長や事務長がいる施設では、業務を分担できるため、施設管理者の負担は軽減します。
小規模施設では、介護業務を兼任するケースもあり、施設形態によって柔軟な対応が求められると言えるでしょう。
仕事内容3.スタッフの管理
良い人材の確保は、施設にとって大きなメリットです。
しかし、介護業界では人材不足が問題になっているため、施設管理者にとっては難しい業務とも言えるでしょう。
人材管理においては、多くの業務内容が含まれます。
- スタッフの採用
- 人材育成・定着サポート
- 人員配置
- 勤務表の作成
- シフトの作成
- 労働時間や残業の管理
- 有給休暇の取得状況の管理
- スタッフの相談・悩みの解決
スタッフと施設管理者の間には、良好なコミュニケーションが必要なのは言うまでもありません。
スタッフのことを考えずに上から目線の言動をしてしまうと、反感を買うこともあります。
たとえば、現場の大変さをよく理解せずに無理な指示ばかり出していると、スタッフはついてこないでしょう。
施設管理者はスタッフと密にコミュニケーションを取りながら、働きやすい環境づくりに努めるべきです。
仕事内容4.利用者の管理
介護施設のサービスは、利用者があってこその仕事です。
利用者や家族のニーズを満たし、質の高いサービス提供を心がけたいもの。
利用者管理の主な仕事内容は、次の通りです。
- 利用者のケアプランや健康状態の把握
- 利用者や家族への対応
- 入退去時の面談
- クレーム処理
利用者1人ひとりの体調や性格も考慮したうえで、真摯な姿勢で対応しましょう。
介護業界の管理職の仕事内容は、大体イメージできたのではないでしょうか?
次の章でお話するのは、介護施設で管理職に就くメリットについてです。
2.介護施設で管理職に就く3つのメリット

前章で紹介した管理職の仕事内容で、施設管理者にはマネジメントの総合力が必要なのがわかったと思います。
しかし、こんな疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
「管理職に就いたら大変そうけど…メリットはあるのだろうか?」
今よりも忙しくなるだけで、メリットが少ない場合は管理職に就こうとは思えませんよね。
ここでは、介護施設で管理者に就く3つのメリットについて確認していきましょう。
- 給料がよくなる
- 責任感のある仕事でやりがいがある
- 介護の経験を活かしたマネジメントができる
モチベーションを上げて、介護の管理職へのキャリアアップに挑戦したい人は、ぜひ参考にしてみてください。
メリット1.給料がよくなる
介護の管理職に就くうえで、もっとも期待するのは給料ではないでしょうか。
管理職ではない介護職員の給料は、決して高いとは言えません。
生活やマイホームを購入するためなど、管理職に就いた際には人それぞれ給料に対する理想があるはずです。
厚生労働省の調べによると、介護業界の管理職の平均給料は329,220円です。
一方で、管理職でない介護職員の平均給料は297,280円で、その差は31,940円になります。
管理職になると、年間平均383,280円の給料アップが見込めるため、この差を大きいと感じる人は多いでしょう。
給料が増えた分を、ローンの返済や旅行資金に回すこともできますよね。
給料アップは、介護職の管理者を目指すうえで大きなメリットと言えるでしょう。
メリット2.責任感のある仕事でやりがいがある
介護の管理職に就くメリットの1つには、自分が先頭をきって施設を良い方向に導けるという点があります。
あなたのやり方次第で、利用者にもスタッフにも心地よい環境を提供できるからです。
たとえば、認知症の緩和ケアに取り組むことで、利用者の前向きな変化やスタッフのやりがいにもつながります。
一方で、目標や計画性のない運営をしていると、利用者からのクレームやスタッフの離職といった問題に直面するでしょう。
施設管理者の仕事は、施設全体をまとめる役割を担うため、大きな責任とやりがいがあります。
メリット3.介護の経験を活かしたマネジメントが可能
介護職員として長年働いて管理職に就く場合は、経験をそのまま仕事に活かせます。
現場のことをしっかりと理解したうえで、全体をまとめられるのは強いメリットです。
たとえば、スタッフへの指示も的確にできるため、信頼関係も築きやすくなるでしょう。
また、利用者や家族の対応にも慣れているので、気持ちにも寄り添いやすいはずです。
介護経験が大きな自信となり、施設管理者の仕事に活かせることは間違いありません。
メリットをしっかり把握しておくと、介護の管理職へのモチベーションにつながるでしょう。
次の章では、メリットの1つでもお話した、給料に焦点を当てて解説していきます。
3.介護施設で管理職になると給料はどのくらい?

前章では管理職に就くメリットをお話してきました。
その中でも特に、給料についてもっと知りたい人が多いのではないでしょうか。
お金が全てではありませんが、管理職ともなれば相応の給料を期待しますよね。
介護施設の管理職の平均給料は、先ほどもお話したように329,220円です。
ここでは、サービス施設ごとの管理職の平均給料も見ていきましょう。
公的施設が運営する、介護老人福祉施設の平均給料は402,900円で、もっとも高い金額となっています。
介護サービス | 平均給料 |
---|---|
介護老人福祉施設 | 402,900円 |
介護老人保健施設 | 369,250円 |
介護療養型医療施設 | 347,490円 |
訪問介護事業所 | 311,610円 |
通所介護事業所 | 313,660円 |
認知症対応型共同生活介護 | 326,050円 |
サービスの運営が民間施設の場合は、給料も少なくなる傾向にあるようです。
公的施設と民間施設では、施設の規模も運営のバックアップ体制も違うので、無理もありません。
高い給料を目指すなら、地方自治体や社会福祉法人が運営する施設の管理者に就くことがおすすめです。
一番気にかかる給料に関して明確なビジョンを持てると、キャリアアップも前向きに考えやすいですよね。
次に紹介するのは、もう一歩踏み込んで、管理職に必要な資格や求人の必須条件についてです。
4.介護業界で管理職に必要な資格や求人の必須要件
ここまでの説明で、介護の管理職の仕事内容や給料といった基本情報が、明確になりましたよね。
「管理職に就くために行動に移したい!」
そんな気持ちが強くなった人もいるでしょう。
ここでは、介護業界で管理職に必要とされる資格や、求人の条件について取り上げます。
まず、施設長や管理者になるには、以下の2つのケースがあります。
- 介護職員を経てキャリアアップする
- 異業種から転職する
施設管理者の場合、現場経験は必須条件ではありません。
しかし、現場のスタッフをまとめなければならないため、知識や経験はあったほうが有利です。
なぜなら、スタッフからも信頼されやすく、指示内容やアドバイスにも説得力が出やすいからです。
施設長や管理者の役職に就くために必要な資格や要件は、施設によって異なります。
たとえば、特別養護老人ホームには施設長のほかに管理者もいます。
管理者に資格は必要ありませんが、施設長は一定の条件を満たさなければなりません。
介護サービス | 資格 |
---|---|
有料老人ホーム・施設管理者 | 必要なし |
認知症型グループホーム・施設管理者 | 以下の条件を満たす必要あり ・2年以上の認知症介護経験 ・認知症対応型サービス事業者管理研修を受講 |
特別養護老人ホーム・施設長 | 以下の条件のうちいずれか1つを満たす必要あり ・社会福祉施設長資格認定講習会を受講 ・会福祉事業に2年以上従事 ・社会福祉主事の要件を満たす必要あり |
特別養護老人ホーム・管理者 | 必要なし |
介護老人保健施設の施設・管理者 | 都道府県知事承認済みの医師の資格が必要 |
施設長や管理者になるために、持っていると良い資格やスキルは、以下を参考にしてください。
- 主任介護支援専門員
- 介護支援専門員
- 介護職員基礎研修
- 管理者研修
- 初任者研修
- ホームヘルパー1級
- 介護福祉士
- 普通運転免許
介護以外のスキルでは、ExcelやWord、タイピングスキルなどがあると役立つでしょう。
介護の管理職は、デスクワークがメインです。
シフトの作成や介護保険の請求など、パソコンに向かう時間が多いと考えておきましょう。
介護業界で管理職に必要とされる資格を参考に、資格取得を検討するのもおすすめです!
次の章では、管理職として活躍できる介護施設を確認していきましょう。
5.管理職として活躍できる介護施設
介護の管理職に就くために必要な資格や応募条件については、前の章で解説した通りです。
ここでは、実際にどんな職場で働けるのか、管理職として活躍できる介護施設を見ていきましょう。
介護士からキャリアアップして管理職を目指す場合は、以下のような介護施設で活躍できます。
介護サービス施設 | 管理職 |
---|---|
有料老人ホーム | 施設長 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 施設長 |
特別養護老人ホーム | 施設長/管理者 |
認知症高齢者グループホーム | 管理者 |
老人デイサービスセンター | 管理者 |
訪問介護 | 管理者 |
デイサービス | 管理者 |
施設によっては、施設管理者としての役割が変わってくることもあります。
規模や運営形態、利用者の要介護度も違うためです。
たとえば、小規模の施設では、施設長が介護の仕事を兼務するケースもあります。
そのため、施設の形態に応じて柔軟な対応が求められることも、頭に入れておきましょう。
ここまでは、管理職として活躍できる介護施設について説明してきました。
自分が管理者としてどこを目指すべきなのか、頭に思い浮かんできた人もいるかもしれませんね。
最後の章では、介護施設で管理職に就いて働くうえでのコツを紹介します。
6.介護施設で管理職に就いて働くうえでのコツ

前章では、管理職として活躍できる介護施設についてお話してきました。
施設管理者になるために必要な情報が把握できたら、実践で役立つヒントもほしいですよね。
最後に紹介するのは、介護施設で管理職に就いて働くうえでのコツです。
以下の3つに分けて解説していきます。
- スタッフを信頼する
- 利用者1人ひとりの個性を把握する
- 経営知識を磨く
仕事のデキる施設管理者になりたい人は要チェックです!
コツ1.スタッフを信頼する
施設管理者は、スタッフから信頼されるべき存在です。
しかし、その前にあなたがスタッフを信頼することが前提条件です。
「施設管理者から頼りにされている」
そう思えると、スタッフのやる気や自信につながり、職場の雰囲気もよくなります。
定期的なミーティングを開くほか、スタッフと世間話をするなど、積極的にコミュニケーションを取っていきましょう。
「あなたがいてくれるから助かる」
「いつも頑張ってくれているから、安心してまかせられる」
そんな言葉をかけてあげてください。
そうすれば、スタッフとの信頼関係が築きやすくなるはずです。
コツ2.利用者1人ひとりの個性を把握する
施設管理者として、利用者に対して真摯な姿勢で向き合うことも大切です。
利用者は1人ひとり違う個性を持ち、健康状態も異なります。
利用者や家族の目線になり、柔軟な対応をしていく必要があります。
たとえば、利用者と普段からコミュニケーションをたくさん取っておけば、様々な変化にも気づけるはずです。
「今日はいつもより元気がないから、体調が悪いのかな?」
そんな風に感じた際には、事前にスタッフに見守りを強化するよう指示が出せるでしょう。
利用者の快適性や健康状態を第1に考えることが、管理者として仕事をするうえでのポイントです。
コツ3.経営知識を磨く
管理職の仕事をするうえで、経営に関する知識を磨くことも欠かせません。
知識が豊富だと業務の効率化がはかれるため、マネジメントが楽になります。
たとえば、経営に関するセミナーや管理者向けの研修などに参加するのも一つの手です。
また、経営や人材育成の本を読むのもいいでしょう。
良い施設管理者になるためには、向上心を持って仕事に取り組むことが大切です。
まとめ
介護の管理職の業務内容をはじめ、資格の有無や活躍できるサービスなどを紹介しました。
「今すぐにとはいかないけれど、いつか必ず管理職になりたい」
そう考えている人も、将来のビジョンが見えてきたのではないでしょうか?
資格の取得や求人状況のリサーチなど、一歩前に踏み出すと未来は動きだすはずです。
介護士のキャリアの集大成とも言える管理職を目指して、できることから始めてみましょう!