看護師

地域包括ケア病棟で働く看護師の役割や仕事内容、必要なスキルを徹底解説!

地域包括ケア病棟で働く人の声:
勤務歴9年 41歳女性 Sさん

――実際に働いてみてどうですか?

私はもともと一般病棟にいたのですが、救急や急性期のように患者さんが入れ替わり立ち替わりになる現場とはまったく異なる世界だなという印象です。

長期だったり、リピートだったり、とにかく患者さんとの腰を据えた付き合いが基本です。

答えの出ないような悩みを共有しながら働く現場です。

1日の仕事の流れは、朝の陰洗だったり検温だったり。普通の看護を行うことには変わりないと思います。命に係わる処置はほとんどないので、そういう面ではメンタルに優しいかもしれませんね。

――なるほど、それは安心ですね。看護以外の技術に関してはどうですか?

回復期にあたる患者さんの、退院後の生活まで考えてサポートしていくことになります。その人が退院後も安心できるために、必要なことは何なのか? というのを意識しています。

周辺の施設や、社会資源の活用を勧めたりしています。このように患者さんと密接に関わるのは、他の病棟では珍しいかもしれませんね。

――そうなんですね。

はい。患者さんの7割は在宅復帰が規定なので。反対に言えば3割は逸脱可能です。急性期病棟より地域包括の方が忙しくて遅くまで残って仕事している病院もあるとききます。

――意外に目まぐるしい職場なんですね。

「楽そうだな」という気持ちでならオススメできないかもしれません。

また、チーム間でのカンファレンスや他職種との連携も密に行う必要がありますから、コミュニケーション能力も重視されるでしょうね。

――それでは最後に、地域包括ケア病棟で働きたい後輩に一言アドバイスをお願いします!

そうですね、技術に関しては新人研修もありますし、基本的なものはそんなに変わりはないので安心してください。

急性期でバリバリやるのが不安で、患者さんとじっくり関わりたいというようにお考えの方はきっと向いていると思います。是非地域包括へ!

地域包括ケア病棟で働く看護師の仕事内容についてお調べですね。

地域包括ケア病棟とは、急性期治療後症状が安定した患者さんに対して復帰支援を行うための病棟です。

看護師の役割は、退院支援や家族支援を行うことです。

近年新しくできた病棟のため、興味を持っている看護師も多いでしょう。

今回は、地域包括ケア病棟における看護師の役割や仕事内容、必要なスキルなどをご紹介!

自分が地域包括ケア病棟で働くべきか判断し、キャリアアップに役立てましょう。

地域包括ケアで働くなら
「看護のお仕事」

1.地域包括ケア病棟で働く看護師の役割

地域包括ケア病棟で働く看護師の役割は、入院中の患者の看護に加え在宅復帰をするための退院支援を行うことです。

地域包括ケア病棟では、急性期の治療が終わっても回復に不安のある患者を受け入れ在宅復帰ができるまでお世話をします。

そのため、退院調整看護師と呼ばれることもあるのです。

地域包括ケア病棟では、患者のリハビリや自宅・介護施設などからの緊急受け入れを行います。

地域包括ケア病棟への入院は最大60日間と定められているため、短期間で復帰できるよう支援する必要があるのです。

そもそも地域包括ケア病棟とは

そもそも、地域包括ケア病棟とは、2014年に制定された比較的新しい病棟です。

急性期医療を経過した患者や在宅療養を行う患者を受け入れ、退院支援まで行います

施設の基準は以下の通りです。

  • 特定機能病院以外の保険医療機関
  • 疾患別リハビリテーションまたはがん患者リハビリテーションの届け出の提出
  • リハビリテーションを受ける患者について1日平均2単位以上の提供
  • 保険診療は最大60日まで

また、人員配置は以下のように定められています。

看護師 13:1
専従の常勤理学療法士、作業療法士、言語療法士のいずれか 1人以上
専任の在宅復帰支援担当者 1人以上

一般病棟と似た環境となっており、臨床経験のある看護師であれば戸惑うことなく働けます。

2.地域包括ケア病棟で働く看護師の仕事内容

実際に地域包括ケア病棟で看護師がどのような仕事をするのか気になりますよね。

看護師の主な仕事内容は、以下の4つです。

  1. 急性期患者の受け入れ
  2. 緊急時の受け入れ
  3. 退院支援
  4. 退院時の家族支援

順番に確認し、転職したときのイメージを膨らませましょう

仕事1.急性期患者の受け入れ

地域包括ケア病棟では、急性期患者の受け入れをします。

急性期病棟との違いは、急性期治療後症状が安定した患者ばかりであることです。

バイタルチェックやリハビリ、術後の管理、薬の管理など、患者によって行う処置は異なります。

院内からの転棟だけでなく他の病院からの受け入れも行うため、他院との連携も不可欠です。

引き継ぎをしっかり行い、60日間で患者が回復するよう医者とプランを立てる必要があります。

仕事2.緊急時の受け入れ

在宅療養や介護施設で緊急事態があった場合、患者を受け入れることがあります。

緊急で受け入れた場合、体の状態が十分に分からないことも少なくありません。

医師と連携しながら臨機応変な対応をしていくことを求められます。

仕事3.退院支援

地域包括ケア病棟には60日間しか入院が認められないため、退院後どのように治療を行なっていくかを一緒に考えていかなければなりません。

基本的に60日間で在宅復帰できる人が入院の対象となります。

しかし、中には他の施設に転院しなければならない人もいるので、早めに調整をしていかなければなりません。

在宅復帰するにしても、ケアマネージャーと連携を取りながら在宅治療・介護を受けるのかプランを立てる必要があります。

退院後、患者が自立するための支援も地域包括ケア病棟の看護師の大切な仕事です。

仕事4.退院時の家族支援

患者の退院支援と同時に、退院時の家族支援も必須です。

在宅介護をするのか、介護施設に入れるのか、といったところから悩みは絶えません。

特に、今回の退院後から在宅介護を決めた家族は不安でいっぱいになっているはずです。

退院後、行政サービスの案内やアドバイスをして患者のお世話をする家族の不安を取り除きましょう

退院後の在宅復帰に向けて「困ったことがあれば看護師に頼ろう」と思ってもらえるよう、情報提供をしてやるべきことを把握してもらいます。

このように、地域包括ケア病棟における看護師の仕事は多岐に渡ります。

特に、退院支援や家族支援は今までの病棟では経験しなかったという看護師も多いでしょう。

次の章で、このような仕事をする地域包括ケア病棟の看護師の給与事情を見ていきます。

3.地域包括ケア病棟で働く看護師の給与事情

地域包括ケア病棟で働く看護師の平均年収は、450万円程度です。

一般病棟で働く看護師と比べると、少し低くなっています。

というのも、超急性期の受け入れがなく、基本的に一度回復している患者の受け入れがメインだからです。

そのため、命に関わるような医療行為はほとんどありません。

精神的な負担の少ない仕事となるため、一般病棟の看護師よりも少し低い平均年収となっているのです。

4.地域包括ケア病棟で働く看護師に必要なスキル

もし、「地域包括ケア病棟で働きたい」と考えているのであれば、以下の3つのスキルを持っておくべきです。

  1. 臨床経験(主任・師長経験)
  2. 退院支援看護師育成プログラム
  3. 調整力

転職を決める前に、確認しておきましょう。

スキル1.臨床経験(主任・師長経験)

3年〜5年以上の臨床経験を求められるケースが多いです。

初心者の看護師でも求人は出ていますが、ある程度の臨床経験のある人が優遇される傾向にあります。

というのも、地域包括ケア病棟ではバイタルチェックなどは当たり前にできた上で退院支援をしなければならないからです。

大きな病院の地域包括ケア病棟では、主任や師長経験のある人が担当します。

このように、最低でも3年〜5年以上の臨床経験がある人が求められているのです。

スキル2.退院支援看護師育成プログラム

退院支援看護師育成プログラムという研修プログラムを受けておくことをおすすめします。

なぜなら、退院支援に必要な能力を養うことができるからです。

退院支援看護師育成プログラムは、以下のような6つの能力を養うプログラムとなっています。

  • 患者を生活者として捉える能力
  • 患者のセルフケア能力と自己管理能力の維持・促進を支援する能力
  • 患者を家族・キーパーソンも含めて支援する能力
  • 社会資源の必要性のアセスメントと調整能力
  • 同僚看護職とともに成長していく能力

地域によっては、退院支援看護師育成プログラムを受けることで通院調整看護師として働けることもあります。

転職を考えているのであれば、積極的にこのような研修を受けましょう。

スキル3.調整力

地域包括ケア病棟で働くためには、調整力が必要となります。

60日間で在宅復帰ができるようプランを立て、退院支援をする必要があるからです。

退院支援では、ケアマネージャーや患者の家族との仲介役にならなければなりません。

ほかにも、行政サービス・介護施設などと連携を取って総合的なコーディネーター役になる必要があります。

患者本人や家族の不安を取り除き、自立していく支援をするための調整力を身につけましょう。

ここまで、地域包括ケア病棟で働く看護師について見てきました。

しかし、転職を考えるのであれば、実際働く上でのメリットやデメリットも確認しておくべきです。

次の章から、地域包括ケア病棟の看護師のメリット・デメリットを見ていきましょう。

5.地域包括ケア病棟の看護師のメリット

地域包括ケア病棟の看護師のメリットを把握することで、転職先としてふさわしいか判断できます

地域包括ケア病棟の看護師のメリットは、以下の3つです。

  1. 地域医療や在宅療養の知識が身に付く
  2. 患者や家族に寄り添った看護ができる
  3. 急変が少なく残業が少ない

順番に見ていきましょう。

メリット1.地域医療や在宅療養の知識が身に付く

地域医療や在宅療養の知識を身に付けることができます。

なぜなら、地域包括ケア病棟で働くと地域の医療機関や施設との連携が必要不可欠だからです。

どこの病院でどのような治療がなされているのかを知るきっかけになります。

また、退院支援をするためには在宅療養の知識も必要です。

ケアマネージャーと会話をする上で、在宅療養の最低限の知識を身につけなければならない状況になります。

地域医療や在宅療養に興味のある人であれば、おすすめの職場です。

メリット2.患者や家族に寄り添った看護ができる

地域包括ケア病棟では、患者や家族に寄り添った看護ができます。

なぜなら、患者や家族の話をしっかり聞き、患者に合わせたプランを提案しなければ退院支援ができないからです。

そのためには、1人1人じっくりと向き合って信頼関係を構築しなければなりません。

退院支援をすることで、患者や家族から感謝されることも多いでしょう。

じっくりと寄り添った看護をし、感謝されることにやりがいを感じる人にはおすすめです。

メリット3.急変が少なく残業が少ない

地域包括ケア病棟では、患者の急変が少ないので残業も少ないです。

なぜなら、地域包括ケア病棟では急性期患者の中でも、一度回復をしている患者ばかりを受け入れるからです。

急な容態変化に対応することもないため、残業はほとんどありません。

そのため、定時で上がれて仕事とプライベートの両立ができます

家庭やプライベートを充実させたい人におすすめの働き方と言えます。

6.地域包括ケア病棟の看護師のデメリット

メリットを見てきましたが、地域包括ケア病棟の看護師にはデメリットもあります。

デメリットも知っておくことで、転職後後悔することが少なくなるでしょう。

地域包括ケア病棟の看護師のデメリットは、以下の2つです。

  1. 比較的新しい病棟なので不透明な点が多い
  2. 病院ごとに看護師・病棟の役割が異なる

順番に確認していきましょう。

デメリット1.比較的新しい病棟なので不透明な点が多い

地域包括ケア病棟は、2014年から出来た比較的新しい病棟なので、不透明な部分がたくさんあります。

病院によっても仕事内容に差があるため、思っていた仕事と違うケースもあるのです。

そのため、転職先の仕事内容をしっかり把握しなければなりません

面接時に自分から具体的な仕事内容を聞き、自分の思い描く働き方ができるか確認しましょう。

デメリット2.病院ごとに看護師・病棟の役割が異なる

病院ごとに看護師・病棟の役割が異なります。

なぜなら、地域包括ケア病棟の役割は多岐に渡るからです。

前述の通り、地域包括ケア病棟での看護師の仕事内容は以下のようになっています。

  1. 急性期患者の受け入れ
  2. 緊急時の受け入れ
  3. 退院支援
  4. 退院時の家族支援

病棟によって、連携する施設からの緊急受け入れをメインにしていたり、同じ病院に入院している患者の退院支援をメインにしていたりと、様々です。

そのため、転職したい先の地域包括ケア病棟がどのような仕事をメインとしているのか確認しましょう。

7.地域包括ケア病棟の看護師が向いている人・向いていない人

ここまで、地域包括ケア病棟の看護師のメリット・デメリットを見てきました。

メリット・デメリットを踏まえて、どのような人が地域包括ケア病棟の看護師に向いているのか、向いていないのかをまとめています。

それぞれ確認していきましょう。

(1)地域包括ケア病棟の看護師が向いている人

地域包括ケア病棟の看護師が向いているのは、以下のような人です。

  • 地域医療や在宅療養に興味がある人
  • 看護師としてスキルアップしたい人
  • マネジメント力・調整力のある人

当てはまるのであれば、地域包括ケア病棟の看護師になることでやりがいを感じるでしょう。

積極的に地域包括ケア病棟を転職先として検討することをおすすめします。

(2)地域包括ケア病棟の看護師が向いていない人

一方、地域包括ケア病棟の看護師が向いていない人は以下のような人です。

  • 明確な指示が欲しい人
  • 臨床や医療行為の仕事に集中したい人

このような人は、地域包括ケア病棟で働いてもやりがいを感じられないかもしれません。

これまで通り、病院やクリニックで働くことが向いている可能性が高いので、そちらの転職先を候補としてみましょう。

8.地域包括ケア病棟の看護師へ転職するときにおすすめの求人サイト

地域包括ケア病棟の看護師へ転職することを検討しているのであれば、求人サイトを一度見てみることをおすすめします。

なぜなら、仕事内容や給料、福利厚生を具体的に知ることができるからです。

あなたの希望に合う求人情報を探してみましょう。

求人サイト1.医療ワーカー

医療ワーカーとは、全国に9万件以上もの看護師の求人情報を掲載している業界大手の求人サイトです。

地域包括ケア病棟の検索をしてみると、2020年7月現在503件の求人が出ていました。

医療ワーカーは、登録すれば専任のキャリアアドバイザーが転職のサポートをしてくれます。

転職先の要望を伝えれば、キャリアアドバイザーが一般公開されていない求人情報を教えてくれるのです。

登録をしなくても、公開求人であれば詳細を見ることができます。

一度、地域包括ケア病棟の求人情報を見てみましょう。

求人サイト2.ナース人材バンク

ナース人材バンクとは、地方の求人も多く取り扱っている看護師専用の転職求人サイトです。

ナース人材バンクで地域包括ケア病棟を検索してみると、2020年7月時点で66件の求人情報が出てきました。

他のサイトと違って、東京以外の求人が多く掲載されています。

キャリアパートナーのサポートが手厚く、すぐに転職したい人におすすめの求人サイトです。

実際にキャリアパートナーと面談をした上で、仕事を紹介してもらえます。

さらに、面接の日程調整や条件交渉も任せることができるのです。

ナース人材バンクでは、登録しなくてもフリーワードに「地域包括ケア病棟」を入力すれば検索できます。

一度、自分のエリアで求人情報が載っているのか確認してみましょう。

求人サイト3.ナースではたらこ

ナースではたらことは、楽天のリサーチで看護師満足度No.1の転職サイトです。

地域包括ケア病棟で検索してみると、2020年7月現在177件の求人情報見つかりました。

ナースではたらこに登録すれば、専任のキャリアアドバイザーが転職希望者と勤務地の間に入って面接日時の調整や給与の交渉をしてくれます。

ほかにも、履歴書の書き方や面接対策もしてくれるので転職したい人にとって心強い存在です。

登録をしていなくても、フリーワード「地域包括ケア病棟」や「土日休み」「残業10時間以下」などの詳細検索ができます。

登録しない状態で希望条件に合う仕事が見つかるか検索してみましょう。

まとめ

地域包括ケア病棟とは、急性期治療後症状が安定した患者さんに対して復帰支援を行うための病棟として新設されました。

看護師の役割は、退院支援や家族支援を行うことです。

以下のような考えを持っているのであれば、地域包括ケア病棟での勤務はあなたに合っていると言えます。

  • 地域医療や在宅療養に興味がある人
  • 看護師としてスキルアップしたい人
  • マネジメント力・調整力のある人

このような人は地域包括ケア病棟で働き、看護師としてのキャリアアップに繋げましょう。

地域包括ケアで働くなら
「看護のお仕事」