看護師の職場は、一般病棟や介護施設だけではありません。
実は「er」という職場で働く看護師も多くいます。
erはあまり聞きなれないという方が多いかもしれません。
しかし、erはキャリアアップや高収入を目指す看護師の転職先としておすすめできる職場なのです!
そこで、今回はerでの看護師の仕事や給与、メリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
転職をお考えの方は、ぜひこの記事を参考にerを検討してみてくださいね。
目次
1.erとは?
まずerという言葉の意味ですが、これは「emergency room」の略称です。
emergency roomとはつまり、救急搬送されてきた患者を受け入れる場所のことを指します。
erでは救急搬送されてきた患者の、一時的な治療を行なう場所です。
医療業界において、患者の症状のレベルは以下の3種類に分けられます。
- 1次救急(軽症)
- 2次救急(中等症)
- 3次救急(重症)
日本のerではこの中でも、特に3次救急にあたる重篤な患者の受け入れをメインで行なっています。
元々、erは北米から始まったシステムです。
北米をはじめとする海外では、1次救急から3次救急まで搬送されてきた患者を全て受け入れています。
海外では日本のように患者が外来を選ぶのではなく、医師が患者の行き先を全て決定するというシステムとなっているからです。
しかし日本では、全ての患者を受け入れてしまうと現場が混乱してしまうため、重篤者をメインとした受け入れを行っています。
いずれもerは救急搬送された患者に対応する場所ではありますが、日本と海外では受け入れ体制に違いがあるのです。
このような環境の中で、数多くの看護師が活躍しています。
2.er看護師の役割
ここまでerとは何かご説明しました。
ではerで働く看護師は、どのような仕事内容をこなしているのでしょうか。
erの看護師の仕事内容を簡単に挙げると、以下の通りです。
- 一時診療のサポート
- 診断のサポート
- 家族や付添人のサポート
ではそれぞれの仕事内容を詳しく見ていきましょう!
役割1.一時診療のサポート
erでは患者の命をつなぎとめるため、ドクターが一時診療を行います。
例えば、患者に対して検査を行なったり、痛みを取り除いたりするといった処置です。
看護師はその診療のサポートを行います。
必要な機材や医療器具をそろえて、すぐにドクターが検査や処置に取り掛かれるようにするのが看護師の仕事です。
意識がもうろうとしている患者に対しては、声掛けを行い続けることもあります。
ちなみに、いつどのような患者が運び込まれて来るかは分かりません。
さらに先ほどご紹介した通り、日本のerには重篤な患者が多く搬送されてきます。
そのため、看護師の仕事には迅速さや柔軟な対応が求められるのが特徴です。
どんな患者なのかを把握し、瞬時にドクターをサポートするのがerの看護師の仕事といえます。
役割2.診断のサポート
erでの一時診療が済んだ後は、患者のその後の行き先を考える必要があります。
erはあくまで一時的な対処をする場所なので、そのまま患者が入院したり留まったりすることはありません。
もちろん、患者にとって最適な診療科を決定するのはドクターです。
そのため看護師は、ドクターの診断をサポートするという役割があります。
検査や診療の結果を参考に、患者にどのような処置や検査が必要なのか総合的に判断するという仕事です。
また、検査結果だけにとらわれず、患者の見た目や様子からしかるべき搬送先を考慮することも必要となります。
ちなみにこの診断はドクターよりも、常日頃から患者と密接に関わっている看護師の方が優れている場合も少なくありません。
役割3.家族や付添人のサポート
患者が救急搬送されてくる際、家族や付添人が同行することがしばしばあります。
このような患者の家族や付添人に対応するのもer看護師の仕事です。
特に重篤な患者の付添人はパニックになってしまいがち。
看護師は付添人に寄り添い、なだめて今後の処置を説明します。
このときは付添人の感情に巻き込まれず、冷静に対処することが必要です。
落ち着きと、説得力のある説明が求められます。
erではこのような業務を、日夜繰り返しているのです。
では、erで働く看護師の勤務体系は一体どのようなシステムになっているのでしょうか。
3.er看護師の働きかた
erにおける看護師の役割についてご説明しました。
erで働く看護師の働き方は、日勤と夜勤の2種類があります。
2種類といっても、日勤をメインとしながらたびたびシフト制で夜勤に入るという勤務体系が主流です。
例えば、9時から17時が日勤のシフトで、17時から朝9時までが夜勤のシフト、といった勤務体系が多い傾向にあります。
夜勤の頻度は病院によって異なりますが、一般病棟の看護師よりも多いです。
ただし、erの看護師は夜勤に配置される人数が多く、日勤との交代がスムーズなのが特長。
つまり、夜勤が長引いて残業をしなければならない、という状況にはなりにくいといえます。
さらに、夜勤の場合は勤務中に1~2時間の仮眠時間が確保されている病院が多数です。
また、erには時間を問わず患者が運ばれてくるため、日勤にしても夜勤にしても、先ほどご紹介した仕事内容を繰り返しています。
このように、何かと忙しなさそうに見えるerの職場ですが、気になる給与事情は一体どのようになっているのでしょうか。
4.er看護師の給与事情
erでの看護師の働きかたについてご説明しました。
ここからはer看護師の給与事情についてご紹介します。
職場を検討する際に、給与を確認しておくことは非常に重要です。
それでは、ここから以下のer看護師の給与事情についてご紹介します。
- 給与
- ボーナス
ぜひご参考にしてください。
給与事情1.給与
厚生労働省が発表している「平成30年賃金構造基本統計調査」によれば、看護師全体の平均年収は479.9万円というデータがあります。
これに対し、erで働く看護師の平均年収はなんと約540万円!
全体の平均年収を約60万円も上回る額となっています。
また、職場別で看護師の年収を比較すると、以下の通りです。
erの看護師 | 約540万円 |
---|---|
大学病院の看護師 | 約490万円 |
総合病院の看護師 | 約470万円 |
クリニックの看護師 | 約390万円 |
職場ごとに平均年収を見ると、ダントツでerで働く看護師の給与が高い結果となりました。
これにはいくつか理由があります。
まず1つは夜勤が多いからです。
そしてもう1つは、erでの勤務は責任が伴い、経験のある看護師と採用する仕事だからという理由が挙げられます。
夜勤手当があるのはもちろん、その仕事柄erの看護師は基本給が高めに設定されていることが多いようです。
また、場合によっては「危険手当」といったerならではの手当てがつくこともあります。
給与事情2.ボーナス
erで働く看護師のボーナスは、働く病院によって異なります。
そのため、一概に平均の額を割り出すことができません。
ただし、民間の病院よりも国立病院の方が資力があるため、ボーナスが多い傾向にあるとされています。
また、地方よりも都心にある病院の方がボーナスは高い傾向にあるでしょう。
これは都心と地方で物価の違いがあるからです
つまり、ボーナスを多くもらうには都心の国立病院のerで働く方が良い、ということになります。
ちなみに、看護師全体のボーナスの平均額は799,900円。
er看護師のボーナスはこれを上回ることが多い傾向にあります。
このように、erの看護師は給与面で大きなメリットがあるということが分かりました。
しかし、erで看護師として働くメリットはこれだけではありません。
5.er看護師として働くメリット
er看護師の給与についてご説明しました。
erで看護師として働くと、次のようなメリットがあります。
- 幅広い知識と経験が身に付く
- 臨機応変な対応ができるようになる
- 人員が多い
- 一般病棟よりも高給
- やりがいを感じられる
ではそれぞれを詳しく紹介していきます!
メリット1.幅広い知識と経験が身に付く
erで働くことで、幅広い知識と経験が身に付きます。
なぜなら、erにはさまざまな症状の患者が搬送されてくるからです。
例えば、脳梗塞で意識を失った患者から、事故で外傷を負った患者まで。
これに対し、一般病棟で働くと特定の診療科に配属され、ある程度決まった症状の患者に対応することが多くなります。
このようにerで症状を問わずさまざまな患者を診ることで、幅広い知識と経験が身に付くのです。
身に付いた知識は今後、erではない職場に転職した際も汎用性が効くでしょう。
自分自身のスキルアップや、キャリアアップを考えている方にもおすすめです。
メリット2.臨機応変な対応ができるようになる
erで働くと、臨機応変な対応ができるようになります。
というのも、erではいつどのような患者が運ばれてくるか分かりません。
そのため、急に運ばれてきた患者に対して最善の処置をその場で考える必要があるのです。
これには柔軟かつ臨機応変な対応が求められます。
最初は忙しなく感じるかもしれません。
しかし一度こうした業務に慣れてしまえば、今後もし一般病棟で働くことがあっても、患者の急変に対応しやすくなるというメリットがあります。
メリット3.人員が多い
erは昼夜問わず、常に多くの看護師が配置されている傾向にあります。
これはどんな症状の患者にも対応できるようにし、なおかつ複数の患者が来た場合にも対応できるようにするためです。
人数が多ければ仕事の分担がしやすく、引き継ぎもスムーズになります。
特に一般病棟の夜勤看護師は人数が少ないため、あまりやりたくないという方は多いでしょう。
そんな方でも、erなら常に一定の人数が配置されているので安心です。
少なくとも、自分だけに看護の全責任がのしかかる、といったことはありません。
メリット4.一般病棟よりも高給
先ほどご紹介したとおり、erは一般病棟よりも給与が高い傾向にあります。
これは夜勤が多いことや、仕事内容のハードさに由来するものです。
結果的に一般病棟の看護師よりも高い給与をもらえます。
現在の給与に満足できていない看護師の人にとっては、うってつけの転職先候補といえるでしょう。
erで勤務し、キャリアを積めば月収35万オーバーも夢ではありません。
メリット5.やりがいを感じられる
erで働くことで、大きなやりがいを感じる看護師は多いでしょう。
なぜなら、erで働く看護師は一刻を争う患者の処置を行なうため、自身の処置が直接患者の生死を分けることもあるからです。
これにはもしかしたら、責任の重い仕事だと感じてしまう方が多いかもしれません。
しかし、自分の関わった患者が一命を取り留めたときには、直接的に仕事のやりがいを感じられます。
これに対して一般病棟の看護師は、患者の巡回や検温など決まったルーティンをこなす業務が多い傾向です。
erほど、患者の命に関わる業務を行うことはないでしょう。
このように、看護師がerで働くのにはさまざまなメリットがあります。
しかし、メリットがあるということはデメリットも当然つきものです。
看護師がerで働くには、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
6.er看護師として働くデメリット
ここまでer看護師として働くメリットについてご紹介しました。
看護師がerで働くデメリットは以下の通りです。
- 落ち着いて仕事ができない
- 幅広い知識が必要
- 患者からお礼を言われる機会が少ない
ではそれぞれの内容を詳しく見ていきましょう!
デメリット1.落ち着いて仕事ができない
er看護師は、患者が救急搬送されてくると常にせわしなく動き回ります。
そのため人によっては忙しなく、落ち着けない職場だと感じるかもしれません。
erに運ばれてくる患者はいずれも命の危険がある人がほとんどです。
そのため、処置にも急を要します。
これはerという職場柄、仕方のないことです。
しかし、全てのerが食事休憩も取れないほど忙しいというわけではありません。
患者の救急搬送の頻度が高い病院もあれば、比較的落ち着いている病院もあります。
忙しさの度合いは病院の立地条件や規模によりまちまちです。
デメリット2.幅広い知識が必要
erで働くとなると、幅広い知識が必要となります。
なぜなら、erではあらゆる症状の患者に対応しなければならないからです。
一般病棟での勤務とは違い、特定の診療科の知識だけあれば良いというわけにはいきません。
しかし、erは新卒でいきなり配属される場合もあります。
そのため、ベテランでないと勤務できない、というわけではありません。
働きながら覚えることもたくさんあるでしょう。
もちろん、経験豊富な看護師の転職先としてはおすすめです。
もし不安な方は、救急に関する資格を取るなどしておくと安心でしょう。
デメリット3.患者からお礼を言われる機会が少ない
erでは患者とのコミュニケーションがほとんどありません。
特にお礼を言ってもらうことや、感謝されるなどといったことはあまり期待できないでしょう。
なぜなら、重篤な患者の多いerではそもそも、患者の意識がないことが多いからです。
つまり直接「ありがとう」といった言葉を聞くこともほとんどありません。
人によってはこれが原因で、やりがいを感じられなくなってしまうケースがあります。
ただし、家族や付添人から手厚くお礼を言われることは少なくないでしょう。
そのような場合には、自分が患者を救っているという実感ややりがいを感じることができます。
このように、erでの勤務にはメリットもデメリットも両方存在するのです。
では、er看護師に向いているのは一体どのような人なのでしょうか。
7.er看護師はこんな人におすすめ
er看護師として働くデメリットについてご紹介しました。
erで働くのに向いているのは、次のような特徴がある人です。
- 自分のスキルや知識を伸ばしたい
- 看護師としての経験を積みたい
- 夜勤があっても気にならない
- 給与の高い職場がいい
- キャリアアップしたい
erでの仕事は夜勤があり、大きな責任が伴います。
しかしその反面、自分のスキルや知識、経験など代えがたいものを得られるのです。
もちろん給与も他の職場に比べて高水準となっています。
また、erで培った自分のスキルは次に転職することがあった場合、役に立つでしょう。
つまりer看護師に向いているのは、自身のステップアップにモチベーションのある人だといえます。
では、いざer看護師になるためにはどのような手順が必要なのでしょうか。
8.erで看護師として働く方法
er看護師に向いている人の特徴をご説明しました。
er看護師になるためには、erから出されている求人に応募する必要があります。
しかし、それ以前に準備しておくべきことがあるのです。
- 看護師免許を取る
- 専門の資格を取る
ではそれぞれの内容について、詳しく見ていきましょう!
方法1.看護師免許を取る
erで働くのに必要な資格は、看護師免許だけです。
つまりすでに看護師として働いている方は、新たに何か資格を取る必要はありません。
すでに看護師免許を持っていれば、er看護師の求人に応募するだけで転職ができます。
方法2.専門の資格を取る
erで働く際、自分の知識や経験に不安がある方は多いでしょう。
そんな方は、「救急専門認定看護師」や「救命救急士」などの資格を取っておくと安心です。
これらの資格は、救急搬送されてきた患者への対応に特化した知識を身に付けることができます。
さらに、こうした資格を持っているとerの看護師として採用されやすいというメリットがあるのです。
他にも、以下のような専門的な資格を取れば、救急対応に応用することができます。
- 内視鏡専門看護師
- 心臓カテーテル専門看護師
- 脳卒中認定看護師
ちなみに、これらの資格はerで働くのに必須ではありません。
しかし、持っておくとより業務がスムーズになることは間違いないでしょう。
時間のある方は、ぜひこうした資格の取得も検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
erで働く看護師の仕事内容や、給与事情などについてご説明しました。
erで働くとキャリアアップに必要な幅広い知識や経験が身に付くことが分かりましたね。
また、さらに一般病棟の看護師よりもお給料が高いというのもポイントです。
erは「忙しい」「大変」といったネガティブなイメージがありがちですが、このようメリットも多くあります。
特に、キャリアアップややりがいを求める方にはうってつけの職場といえるでしょう。
ぜひ、今回ご紹介したメリット・デメリットなどを参考にしながら転職先の候補としてご検討ください!