診療科の中で、唯一生命が誕生する産婦人科。
そんな素敵な診療科で働いてみたいと感じたことがあるはずです。
しかし、実際働くとなると気になるのは給料面。
この記事で解説するのは、産婦人科で看護師として働いた場合の給料についてです。
また、職場による違いやキャリアパスについても触れています。
詳しく知りたい人は、ぜひ合わせてご覧ください。
先ずは、産婦人科の看護師の給料がどれくらいなのか見ていきましょう。
目次
1.産婦人科で働く看護師の給料はどれくらい?
2019年の日本看護協会の調査によると、産婦人科看護師の年収は、平均で約400~450万円ほどです。
この年収は、諸手当込み、ボーナス2ヶ月分の場合。
月給換算すると、基本給が20~28万ほどとなり、ここに残業代や夜勤手当が追加されます。
他の診療科との差は、ほとんど無いといってもいいでしょう。
もちろん、給料は経験や勤務先によって変わります。
より具体的に産婦人科看護師の給料を知るために、職場と給料の関係について見ていきましょう。
2.産婦人科看護師の職場と給料の関係
公立病院などで働く準公務員看護師でない限り、勤務先によって年収は大きく変わります。
特に産婦人科では、職場の給料差も大きい傾向があるようです。
産婦人科のある職場の違いを、2つに分けて見ていきましょう。
- 総合病院
- 診療所(クリニック)
それぞれ解説していきます。
(1)総合病院の産婦人科
総合病院の産婦人科は、小さなクリニックに比べて給料が良いです。
基本的に、給料は病床数に比例して増えていきます。
2019年の日本看護協会の調査で、病床数99以下と500以上の病院を比較したデータをご覧ください。
病床数 | 平均基本初任給与額(円) | 勤続年数10年の平均基本給与額(円) |
99床以下 | 204,144 | 236,936 |
500床以上 | 215,193 | 266,767 |
勤続年数が増えると、約3万円の差が出ることがわかります。
これは、あくまでも平均の給与額です。
勤務地や勤務先によっても違いが生まれるということは、忘れないようにしましょう。
(2)クリニックの産婦人科
大きな経営母体を持たないクリニックでは、経営状況が給料に反映されやすくなります。
事業であるため、経営者である院長もない袖は振れません。
そのため、平均給与は総合病院と比べると安いです。
しかし、高級志向のクリニックでは給料が高めに設定されている傾向があります。
その理由は、利益の上げやすさと利用者のニーズに関係があるようです。
- 自由診療で利益が上げやすい
- 利用者は出産一時金で支払いやすい
- 綺麗な設備やフレンチ料理など付加サービスを提供している
一部のクリニックでは、設備を利用できるといった福利厚生を設けている場合もあるようです。
また、晩婚化の影響から、不妊治療専門クリニックにも需要が集まっています。
業務は婦人科中心になるものの、残業や夜勤がほとんどないというのが特徴です。
給料を中心に職場を選ぶ際には、ホテルのような産婦人科で働くことを考えてもいいかもしれません。
3.産婦人科で看護師に求められる役割
産婦人科は女性特有の診療科で、求められる役割も特殊です。
働く際の役割を理解することで、自ずと給料アップにつながります。
産婦人科で看護師に求められる役割は、どのようなものでしょうか。
看護師の役割を、以下の3点にまとめました。
- 患者・妊婦の身体的ケア
- 患者・妊婦の精神的ケア
- 医師・助産師の補助
それぞれ解説していきます。
役割1.患者・妊婦の身体的ケア
他の診療科と同じように、患者や妊婦の身体的ケアは看護師の基本の役割です。
産婦人科の特徴としては、対象となる妊婦が元気ということが挙げられます。
妊娠は病気ではないため、必然と療養上の世話が少ないです。
そのため、看護師の役割は、出産前のバイタルチェックや採血・診察介助などが中心になります。
療養上の世話をする回数が少ないといっても、全くないわけではありません。
婦人科では、術後の処置なども行うため、他の診療科と近い役割を行います。
今一度、身体ケアの知識について復習してみましょう。
役割2.患者・妊婦の精神的ケア
産婦人科で働く際には、女性特有の悩みのケアはつきものです。
看護師の役割としては、入院や出産の不安も和らげることが必要になります。
そのため、コミュニケーション能力は特に重要といえるでしょう。
手術や出産前後にも様々な不安が生まれるものです。
正しい知識を持って、ときに寄り添いながらケアしていく必要があります。
役割3.医師・助産師の補助
助産師資格を持たない看護師は、分娩介助を行えません。
医師若しくは助産師が分娩を行うため、看護師は機材出しや外回りを行います。
そのため、重要とされるスキルは、薬剤や分娩リスクの知識です。
事実として、医療訴訟も多い産婦人科。
看護師も知識を備えておいて無駄になることはありません。
4.産婦人科で働く看護師の具体的な仕事内容
これまで見てきた内容を元に、産婦人科で働く看護師の具体的な仕事内容を確認してみましょう。
産婦人科はお産や新生児が対象であるため、スケジュール通りに一日が終わることはありません。
あくまでも一例となりますが、一日の流れを表にまとめました。
それでは、見ていきましょう。
時間 |
業務 |
具体的な内容 |
9:00~ |
出勤・引継ぎ |
出勤後、申し送りをして業務開始です。 |
10:00~ |
分娩の間接介助 |
機器準備、外回り、モニタリング等。 |
11:30~ |
昼食 |
昼食の配膳を行い次第、休憩を取ります。 |
12:30~ |
新生児ケア |
授乳・沐浴指導などを行います。 |
14:00~ |
家族対応 |
母子の生活サポートも、看護師の役目です。 |
15:00~ |
分娩の間接介助 |
一日に数回分娩に当たることもあります。 |
~17:30 |
申し送り・退勤 |
夜勤担当者に引継ぎして、業務終了。 |
5.産婦人科で看護師として働くメリット
ここまで業務内容や役割について見てきました。
どんなに良い給料を貰ったとしても、仕事にやりがいが感じられなければ続けることは難しいです。
ここでは、産婦人科の看護師になると得られるメリットややりがいを以下の3点で紹介します。
- 命の誕生に立ち会える
- キャリアパスになる
- 働きかたの選択肢が幅広い
それぞれ見てみましょう。
メリット1.命の誕生に立ち会える
新しい命が生まれる瞬間は、産婦人科の特権といってもいいです。
出産は人生の中でも、大きな喜びの瞬間になります。
そのため、感じられるやりがいも大きなものになることでしょう。
また、副産物として、自分の出産時に知識が活かせることも挙げられます。
人の役に立つ仕事をしたいと考える人にとっては、見逃すことのできないメリットですね。
メリット2.キャリアパスになる
産婦人科で働くことは、キャリアパスにも繋がります。
母子に深く関わるのが、産婦人科の特徴です。
その知識は、小児科でも活かすことができます。
経験を積み、助産師へステップアップしてもいいでしょう。
助産師取得後も経験を積むことで、独立も可能です。
明確なキャリアパスがあることが、メリットといえるでしょう。
メリット3.働きかたの選択肢が幅広い
夜勤の求人は、どうしても大きな病院が多いという印象はありませんか?
産婦人科では、入院設備が整っているという特徴があります。
つまり、クリニックでも夜勤があるということです。
求人を見てみると、夜勤専従で募集していることもあります。
ライフスタイルや仕事観に合わせて職場を選びやすいことは、産婦人科で働く利点といえるでしょう。
6.産婦人科の看護師が辛いと感じること
やりがいを感じる仕事でも、辛さを感じるときがあります。
産婦人科で働く場合の辛いことは、どのようなものがあるでしょうか。
細かいものは様々ですが、ここでは以下の2点にまとめました。
- 妊婦・患者の精神ケア
- 理想の業務とのギャップ
それでは、見ていきます。
(1)妊婦・患者の精神ケア
産婦人科では、妊婦・患者の精神ケアで辛さを感じることがあります。
なぜなら、産婦人科では女性特有のセンシティブな悩みが多くなる特徴があるからです。
精神ケアの際には、傾聴も行います。
女性特有の悩みから、共感しているうちに自分まで辛い気持ちになることもあるでしょう。
共感力が高い自覚を持つ人は、覚悟しなければいけません。
患者に寄り添いながらも、割り切って考えるスキルを身に付けましょう。
(2)理想の業務とのギャップ
産婦人科では、思い描いていたような看護ができない場合もあります。
妊婦が想像以上に元気で、看護師の仕事が無いと感じる人もいるでしょう。
また、セレブ産院では、サービス業で行うような接客を求められることもあります。
この辛さを避けるためには、職場選びの段階での業務確認が大切です。
喜んでもらうことを工夫し、楽しんでしまうのも良い手段といえるでしょう。
7.産婦人科の看護師は助産師資格を取るべき?
産婦人科で働くのであれば、助産師の資格を持っておいて損はありません。
その理由や取得方法について、以下の3点にまとめました。
- 看護師と助産師の違い
- 給料面で見た看護師と助産師の違い
- 助産師資格の取得方法
気になる所からご覧ください。
(1)看護師と助産師の違い
看護師は行えないものの、助産師は分娩介助が可能です。
保健師助産師看護師法では、異常分娩は医師が行うものの、正常分娩の介助は助産師が行えると定められています。
産婦人科では、この違いが一番大きな差です。
単純に行える業務が増えるため、転職時にも有利になります。
また、経験を積むことで助産院の開業も可能です。
(2)給料面で見た看護師と助産師の違い
次に、給料面での違いを見ていきましょう。
助産師の給与が分かる2018年看護職員実態調査報告を元に、簡単な表を作成しました。
職種 | 平均給与額(円) |
看護師 | 362,300 |
助産師 | 381,427 |
表からも分かる通り、給与の差は月に約2~3万円ほどです。
この差があることで、ボーナスも含めて考える年収では約40万円の差が生まれます。
補足として、公立病院で準公務員として働く場合も見てみましょう。
国家公務員看護師等俸給表では、看護師と助産師の等級が同じです。
手当なども付かないため、助産師を考える際は覚えておきましょう。
(3)助産師資格の取得方法
助産師資格の取得方法を確認します。
助産師資格の取得の流れを、以下にまとめました。
- 看護師資格取得
- 1~2年の助産師課程を修める
- 助産師国家試験受験
- 合格
- 免許申請
実は助産師国家試験の合格率は、2019年と2020年ともに99%以上と高いです。
取得の際にネックとなるのは、1~2年間学校に通わなければならないことでしょうか。
病院やクリニックによっては、資格取得補助を積極的に行っているところもあります。
金銭面に加え、実務と知識を反復して身につきやすくなることは、大きなメリットです。
助産師を目指すのであれば、資格補助を行っている求人を意識してもいいかもしれません。
まとめ
産婦人科で働く看護師の給料や、その役割について見てきました。
職場選びのポイントを抑えることで、思わぬ高待遇求人に巡り合えるかもしれません。
産婦人科ならではといえるメリットもご紹介しました。
特殊な診療科である産婦人科では、大きなやりがいを感じられる反面、難しさもあります。
より役に立ちたいと考える人は、助産師の資格取得も一考の価値があるといえるでしょう。
この記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。
あなたが産婦人科で活躍する日が来ることを心待ちにしています!