ホスピスでは、病気の寛解に向けた治療を行いません。
そのため、看護師の仕事内容も一般的なものとは異なる点が出てきます。
この記事では、そんなホスピス看護師の役割や具体的な仕事内容を解説。
さらに、ホスピスにまつわる疑問にもお答えしています。
ホスピス看護師を目指すなら、きっと役に立つ内容でしょう。
まずは、ホスピスの概要から確認していきます。
目次
1.ホスピスとは
ホスピス看護師の仕事内容を分かりやすくするために、ホスピスの概要を確認しましょう。
一般的にホスピスとは、余命宣告を受けた人に、人間らしい最期を送ってもらう医療機関のことを指します。
しかし日本での定義としては曖昧で、緩和ケアとして説明されることもしばしば。
そのため名称に惑わされず、自分がどのケアを行いたいかという点を明確に決める必要があります。
ここでは冒頭で紹介したような、一般的なホスピスの内容に従って見ていきましょう。
2.ホスピス看護師の役割
患者により良い最期を迎えてもらうために、ホスピスの看護師はどのような役割が与えられているか見ていきます。
ここでは大まかに、2点の役割に分けました。
- 患者と家族に寄り添う
- 環境作り
それぞれ解説していきます。
役割1.患者と家族に寄り添う
冒頭で述べたように、ホスピスは人生の終わりに関わる場です。
患者が最期の時間を迎えるまでの間、ホスピスの看護師が1番傍にいるといっても過言ではありません。
そのため、患者やその家族とより深い信頼関係を築く必要があります。
信頼できない看護師に、大切な人の最期は任せられないですよね。
患者と家族の双方に寄り添った看護で、できる限り安心して貰いましょう。
役割2.環境作り
ホスピスは、家族団欒の場となることもあります。
看護師の役割として、心地いい空間を生み出す環境作りも欠かせません。
真っ先に思い浮かぶ例として、雰囲気作りがあります。
看護師があからさまに忙しくしていると、患者家族に良い印象を与えるとは思えません。
他にも、病室に患者が好きなものを飾るような気配りも行えるはずです。
心地良い環境作りも看護師の役割の1つと、意識しましょう。
3.ホスピス看護師の仕事内容
ここまで見てきた役割を踏まえて、具体的な仕事内容を見ていきましょう。
ホスピスで行う業務は、一般病棟と変わらない内容もあれば、違う点もあります。
例えば、一般病棟の入院患者に対する業務はこのようなことを想像するはずです。
- バイタルチェック
- ラウンド
- 点滴や採血
- 生活介助全般
ここでは、ホスピスならではの仕事内容を確認していきます。
- 身体的変化の処置
- 傾聴
- エンゼルケア
それぞれ見ていきましょう。
業務1.身体的変化の処置
ここで説明するのは、がんによって身体的な変化が起こる場合の処置です。
ホスピスでは患者の苦しみを避けるため、抗がん治療をストップしています。
するとがんの浸食が進み、外見の変化が起こる場合も。
例えば皮膚がんでは分かりやすく、出血や腫瘍が見られる場合もあります。
清潔に保つことに加え、患者が望んだ場合は目立たないようにすることも考えましょう。
業務2.傾聴
ホスピスでは、業務として傾聴の割合が増えます。
患者の訴える苦しみを理解するためにも、ホスピスでの傾聴は必要不可欠です。
患者が抱える不安や悩みに寄り添うことにもつながります。
ホスピス看護師の大事な役割、信頼関係の構築にも関わる点です。
幸いホスピスでは、看護師1人に対する患者数も少ない場合がほとんど。
必要と感じたなら、多少時間がかかったとしても傾聴を行うようにしましょう。
業務3.エンゼルケア
職場によって、看護師がエンゼルケアを行うことがあります。
エンゼルケアといっても、ピンとこない人もいるはずです。
エンゼルケアとは、遺体に行う処置。
逝去時ケアと呼ぶこともあります。
具体的に行うのは、以下のようなケアです。
- 状況に応じた詰め物
- 消毒
- 傷跡の手当
- 排泄物の処理
- 化粧
- 着替え
ホスピスで、初めてエンゼルケアの業務を経験する人もいるでしょう。
真剣にホスピスで働くことを考えるなら、知っておいてもいい知識といえます。
4.ホスピス看護師に必要なスキル
ここまで、業務内容を見てきました。
次は、業務を行う際に必要とされるスキルを確認していきます。
ホスピス看護師に必要とされるスキルは、以下の3つです。
- 各症状の理解
- 全人的ケア
- 疼痛コントロール
それぞれ確認していきます。
スキル1.各症状の理解
必要なスキルの1つ目は、各症状の理解です。
特に、がんの症状や苦しみの理解が必要といえるでしょう。
患者によって、痛みや苦しみは変わります。
つまりよくある症状の知識と同時に、患者1人ひとりに対する理解も必要です。
患者の理解という点では、次に紹介するスキルにもつながる部分があります。
スキル2.全人的ケア
ホスピスでは、全人的という言葉が良く使われれるでしょう。
全人的なケアとは、身体精神以外に社会苦痛やスピリチュアル面での看護のこと。
トータルペインのケアと呼ばれる場合もありますね。
社会的な苦痛は例えば、このようなものです。
- 経済面の不安や悩み
- 家族間の心配
- 遺産相続の悩み
- 仕事関係の悩み
またスピリチュアル面とは、このようなものとされています。
- 命の終わりに対する恐怖
- 人生の意味
- 自分を責める気持ち
全人的ケアを重要視するのは、初めてかもしれません。
そのため働きながら、身に付けていくスキルともいえます。
患者の安らかな最期のために、全人的な視点で看護を行いましょう。
スキル3.疼痛コントロール
ホスピスでは、疼痛コントロールの知識が必須です。
何故なら、ホスピスは患者の苦しみをなるべく和らげることが目的だから。
疼痛に関する知識に加え、円滑に行うための工夫も必要です。
例えば、入院患者のトラブルとして自然抜去があります。
自然抜去により、再度疼痛コントロールが行えなくなることも。
このように疼痛コントロールの知識を深め、広い視野で患者の苦痛に配慮しましょう。
5.ホスピス看護師に役立つ資格
ここではホスピスで必要なスキルを学べる資格を紹介します。
結論からいえばホスピス看護師には、緩和ケア認定看護師がおすすめです。
ホスピスの募集求人では、優遇している場合もあります。
ちなみに認定団体である日本看護協会は、2020年から緩和ケアにがん性疼痛看護を統合しました。
つまり緩和ケア認定看護師で、ホスピスで働くために必要なスキルが学べるということです。
日本看護協会の改定カリキュラムを基に、具体的に学ぶことができるスキルを以下にまとめました。
- 全人的ケアにアセスメントする知識や技術
- トータルペインに対するマネジメント
- チーム医療の知識
- 家族の喪失に対処する知識や技術
受験資格としては、認定分野での3年以上の経験が必要。
そのため、働いてからより深い知識を得たいと思ったときに取得を考えましょう。
6.ホスピス看護師として働ける職場
ホスピス看護師として働くための知識が深まったところで、職場について見ていきましょう。
ホスピス看護師として働ける、代表的な職場を以下にまとめました。
- ホスピス
- 総合病院のホスピス病棟
- 総合病院のホスピスチーム
- 在宅ホスピス
- 緩和ケア病棟
職場の名称としては、このような例があります。
しかし実際に応募するときは、その職場で行う看護について注意が必要です。
注意点に関して、以下で詳しく説明します。
職場選びの注意点
注意点は、職場で行っているケアが自分が行いたいものか吟味することです。
日本でのホスピスの定義が曖昧なため、業務内容が想像していたものと違うという可能性もあります。
特に緩和ケア病棟では、がん治療が中心という場合も。
求人内容や入社前の下調べ時点で、あなたが行いたい看護とマッチしているか吟味しましょう。
転職を考えるときは、自分が行いたい看護を明確にしておくことが大事ですね。
7.ホスピス看護師に向いているのはどんな人?
ここまで見てきて、他の医療現場と少し違ったホスピスの特色を感じたかもしれません。
「自分は本当にホスピスで看護師として働けるだろうか」
このような疑問が生まれた人は、どんな人がホスピスに向いているか確認してみましょう。
以下で、ホスピス看護師に向いている人の特徴をまとめました。
- 人の人生の最期と向き合える
- 家族の気持ちも理解できる
- コミュニケーションが得意
- 淡々と業務をこなせる
いかがでしょうか。
淡々と業務をこなせるというのは、他の特徴と相反する内容にも見えますね。
しかし、ホスピスでは重要なポイントです。
何故なら度々ショックを受けていては、あなたの心と身体が持たないから。
寄り添いながら、1歩距離を置くことも大事と心に留めておきましょう。
【Q&A】ホスピス看護師でよくある疑問
ここでは、本文中で伝えきれなかったホスピス看護師にまつわる疑問をご紹介しています。
よくある疑問を、以下の3点にまとめました。
- ホスピスケアと緩和ケアの違いは?
- ホスピスでも退院がある?
- やりがいはどうやって見つければいい?
気になる点からご覧ください。
疑問1.ホスピスケアと緩和ケアの違いは?
ホスピスを調べていると、ホスピスケアと緩和ケアという言葉をよく見かけるかと思います。
また、ターミナルケアという言葉も見かけたのではないでしょうか。
実はこれらのケアは明確な定義が無いため、違いとして覚えることもできないというのが現状です。
解決策としては、一般論として違いを覚えることをおすすめします。
一般的に使われる言葉の意味を、以下の表でご覧ください。
ケア名称 |
一般的な認識 |
ホスピスケア |
ホスピスで行われる看護全般 |
ターミナルケア |
終末期のケア全般 |
緩和ケア |
がん治療と並行して行い、治療の辛さを和らげるケア |
緩和ケアの内容は、2012年に閣議決定したがん対策推進基本計画を参考にしています。
以上の表を基本として、当てはまらない場合は柔軟に考えましょう。
疑問2.ホスピスでも退院がある?
ホスピスでも退院があります。
退院がある理由は患者に、より人間らしい最期を送ってもらうため。
医師の診断で症状コントロールが安定したとされたとき、退院が可能です。
その場合は、本人や家族の希望によって退院します。
ちなみにその後も通院はあるので、看護師として築いた信頼関係が無くなることはありません。
本人の人間らしい最期のためにも、喜ぶべきことですね。
疑問3.やりがいはどうやって見つければいい?
ホスピスでのやりがいは、自分で見つけることが大切です。
他の看護師の仕事と違い、ホスピスでは患者が回復に向かうことはほぼありません。
そのため、やりがいを見つけるのが難しく感じるでしょう。
参考までに患者の思いをくみ取ることや笑顔が増えることから、やりがいを見出すことができるかもしれません。
ときには、患者や家族から感謝されることもあるでしょう。
やりがいの感じ方は、人それぞれです。
働きながら、あなたならではのやりがいを見つけましょう。
まとめ
ホスピス看護師の役割や仕事内容を見てきました。
仕事内容には、難しさを感じることもあるかもしれません。
しかしホスピスで看護師として働くことで、あなたの人生観に影響を及ぼすこともあるはずです。
興味があれば、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
あなたがホスピス看護師にトライするとき、この記事の内容が少しでもお役に立てることを願っております。