看護師

看護師から助産師になるには?資格取得のルートとその後のキャリアを解説

看護師から助産師になった人の声:看護歴7年 41歳女性Tさん

――幸せそうなお仕事かと思いますが、実際に働いてみてどうですか?

たしかに分娩の介助をするおめでたいイメージがあるかも知れませんが、現実は厳しいです。もちろん幸せな瞬間はたくさんありますよ!

でもそれだけじゃないんです。

合併症のある妊産婦さんも多いですし、急変時には的確な判断力と確かな看護技術が求められます。出産だけではなく堕胎の処置をすることだってあります。分娩停止、胎盤早期剥離、子宮内胎児死亡、中期中絶。そういったこととも向き合わなくてはいけません。

イメージというか理想を追い求めすぎるとしんどいかもしれません。このあたりは資格取得のために勉強していく中で分かってくることだとは思いますが。

――なるほど。Tさんが助産師を志すきっかけを教えてください。

わたしは婦人科に務めていたので、キャリアアップしたくて休職して助産師資格を目指しました。大変でしたが、仕事に対する理解も深まって良かったなと感じています。

――それでは、これから助産師を目指す後輩に一言アドバイスをお願いします!

大変な資格です。心が折れるようなこともあるかと思います。

それでも分娩の喜びであったり、やりがいのある仕事です。厳しいこともありますが、どうか頑張ってください!

「看護師以外のキャリアにも興味がある」

「実習中に見たお産の光景が忘れられない」

看護師から助産師を目指したい、と考える人は多いでしょう。

しかし助産師として働くには、専門の国家資格を取得して経験を積まなければいけません。

この記事では、看護師から助産師になるルートと方法、助産師の働き方について解説します。

助産師の仕事に興味のある人は、ぜひ助産師としての働き方となり方について深く理解しておきましょう。

1.看護師から助産師になるには国家資格が必要

助産師の仕事には専門的な知識が必要となるので、看護師から助産師になるには看護師免許に加え助産師免許を取得しなければいけません

助産師は、母子ともに問題なく出産が行える正常分娩の際、妊婦と赤ちゃんの健康指導、お産の手助けを行います。

看護師資格のままでは、お産のサポートをしたり、赤ちゃんを取り上げたりすることはできません

また、助産師は正常分娩で出産できるかどうか判断する必要もあるので、助産師には専門の資格が設定されているのです。

帝王切開など異常分娩になった際麻酔を打ったり、手術することはできませんが、赤ちゃんの誕生を間近で見られるのは助産師のお仕事ならではのやりがいと言えるでしょう。

こうした助産師のお仕事には、看護師資格取得時に学んだ知識だけでなく、お産に特化した知識が必要です。

そのため、看護師資格だけではお産を直接助けたり、母子の健康指導を主体的に行うことができません。

まずは、助産師になるためのルートを具体的に見ていきましょう。

2.看護師が助産師免許を取得する流れ

看護師が助産師になるには、看護師免許に加え助産師免許という国家資格が必要になります。

助産師免許がなければ、助産師として働くことはできないので必ず定められた勉強を行いましょう。

助産師免許取得までの流れは、以下の通りです。

助産師になるまでの流れ

  1. 看護師免許を取得する
  2. 助産師教育機関で勉強する
  3. 助産師の国家試験を受けて合格する

自分の今の生活を見直し、このまま助産師を目指せるかどうか考えてみましょう。

流れ1.看護師免許を取得する

助産師の資格を取得するには、看護師免許が必須です。

そのため、現時点で准看護師の人は、助産師免許を取ることができません

看護師免許を持っていない人は、以下のルートで看護師資格を取得してください。

看護師資格を取得する方法

  1. 全日制の看護師学校養成所に2年通う
  2. 定時制の看護師学校養成所に3年通う
  3. 実務経験7年を積んで通信制学校に2年通う

中学卒業から准看護師になった人は、全日制、定時制学校に通うまでに3年以上の実務経験が必要なので注意してください。

看護師学校養成所で勉強した後は、看護師国家資格を受験し、合格を目指しましょう。

流れ2.助産師教育機関で勉強する

看護師資格をすでに持っている人は、助産師教育機関を受験して合格しましょう。

助産師教育機関として代表的なのは、以下の通りです。

  1. 大学院
  2. 大学専攻科
  3. 大学別科
  4. 専修学校

このいずれかに受験して、合格する必要があります。

学校に合格した後、助産師資格を得るまでの勉強期間は、最短で1年です(大学院の場合、2年の勉強が必要)。

学校では、病院や助産所で実習を行い、専門知識を取得していきます。

ちなみに、助産師の学校の学費は1年通う場合、100万円~250万円が相場とされています。

優秀な成績で入学できれば奨学金制度が利用できる学校もあるので、まずはここから全国助産師教育協議会に加盟している近隣の学校を調べましょう。

流れ3.助産師の国家試験を受けて合格する

助産師の学校で決められた課程の学習を終えたら、国家試験を受けましょう。

国家資格がなければ、助産師になれないので試験に向けしっかりと勉強する必要があります。

ただし助産師国家試験の合格率は99.4%(2020年度)と非常に高く、基本的なことを勉強しておけば取得できる可能性は高いと言えるでしょう。

以上が、看護師から助産師を目指す流れでした。

助産師資格を得るには最短で1年が必要となるので、その間の収入をどう確保すべきか悩んでいる方も多いでしょう。

そこで次は、看護師の仕事をしながら助産師を目指せるのか、解説していきます。

3.看護師をやりながら助産師の勉強はできる?

看護師をやりながら助産師の教育課程をこなすのは、非常に難しいといえます。

なぜなら、助産師養成課程の多くは全日制で、昼間に学校に行かなけれ必要単位を取得できないからです。

例えば、長崎市医師会看護専門学校の助産学科は、始業は8時40分、終業は16時20分となっており毎日4コマ授業があります。

さらに終業後、グループワークを行うこともあるので昼間に働くのはかなり難しいでしょう。

夜間コースを開講している学校もありますが、数が少なくエリアによっては通えません。

現在、こちらのサイトによると夜間コースを開講しているのは東京、名古屋のみとなっています。

助産師として必要な実習量、勉強量から考えて、看護師としてフルタイムで働き続けるのはかなり難しいでしょう。

もし学校に通っている間の収入が不安なら、パートとして働き続けるという方法もあります。

ただし、助産師教育課程で勉強している間は、授業と実習が最優先になるので時間が調整できるパートを探す必要があるでしょう。

看護師から助産師になることはできますが、かなりの苦労が必要です。

そのため、助産師のキャリアを知り本当に目指すべきか悩んでいる方もいるでしょう。

そこで次は助産師になった後の働き方について解説していきます。

4.看護師から助産師になった後の働き方

看護師から助産師になったら、助産師として新しいキャリアがスタートします。

これまで助産師と関わりの無かった人は、助産師がどのように働いていくかイメージできていないこともあるでしょう。

そこでここからは、助産師が働く場所や働き方、キャリアアップなどについてわかりやすく解説します。

自分のやりたいことと、助産師の仕事がどう結びついているかイメージしてキャリプランを立てましょう。

4−1.助産師が働く場所

助産師の約90%が、病院や診療所などで働いています。

勤務体系は場所よって異なりますが、お産がいつあるか分からないので夜勤がある病院も少なくありません

労働環境や条件については、いろんな病院・診療所の話を聞いて自分に合う場所を選びましょう。

また、助産師の中にはフリーランスとなり必要に応じて病院や診療所、助産所などで働く人もいます。

さらに、独立して自分で助産院を開業して自分なりのお産のサポートを行う人も少なくありません

しかし、フリーランスや独立には、それ相応の経験と十分な知識が必要です。

助産師になりたての時は、病院や診療所で働き経験を積むことを最優先にしましょう。

4−2.助産師のキャリアアップ

助産師がキャリアアップをする方法は、大きく分けて3種類です。

  1. 同じ職場で出世を目指す
  2. 転職して経験を積む
  3. 独立を目指す

助産師になった後は、転職・独立も可能なのでキャリアに関して明確な道が決まっているわけではありません。

しかし多くの人が、病院や診療所で役職をステップアップさせることでキャリアを築いています。

病院などでは、助産師としての経験が3年以上になると「プリセプター」という仕事に就くことが可能です。

プリセプターは、後輩の助産師に仕事を教える役割を指します。

プリセプターになれば助産師として一人前になれたと言えるでしょう。

そしてその後はさらに経験を積み、主任、助産師長と役職アップを目指します。

少子化と言われる世の中ですが、母子の気持ちに寄り添える助産師の存在は今も必要とされています。

まずは病院や診療所などで働きながら、自分に合ったキャリアを考えていきましょう。

5.助産師の給料・年収

経験によっても変わりますが、助産師の年収は平均して500万円前後だとされています。

月給で考えると、ボーナスが100万円ほどの場合、33万円くらいだと考えられるでしょう。

一方、看護師の平均年収は470万円前後です。

助産師の方が資格取得まで時間がかかることを考えれば、平均給与が看護師より増えるのは当然のこととも言えるでしょう。

しかし経験がまったくない助産師の場合、職場によっては月給22万円ほどでスタートすることもあります

同じ職場の先輩の様子などを見つつ、経験を積んで高い給与を目指すことが大切です。

以上が、助産師のキャリア・給与についてでした。

看護師として今しっかりキャリアを積んでいるなら、新たに助産師になることで一時的に給与が下がる可能性もあります

そのため、看護師から助産師を目指すかどうかは、自分のやりたい仕事ができるかどうかで判断すべきです。

次は、追加で学校に通ってでも助産師を目指すべき人について解説していきます。

6.看護師から助産師になって得られるやりがい

看護師が助産師免許を取得するには、最低でも1年はかかります。

助産師としての勉強の他、新たな就職先を探すとなるとさらに時間が掛かる可能性もあるでしょう。

そのため、助産師の仕事をしたいという強い気持ちがなければ、勉強と就職をするのは難しいでしょう。

ここからは、助産師の仕事ならではのやりがいについて解説していきます。

どんなやりがいが得られるか知り、自分がこれからやっていきたい仕事は何なのか考えましょう。

やりがい1.赤ちゃんの誕生を間近で見ることができる

助産師の人が仕事に最もやりがいを感じるのは、赤ちゃんが誕生する瞬間です。

お産は非常に厳しいものですが、命が誕生する瞬間を見て助産師を目指す人も多くいます

直接子供を取り上げることは、看護師資格のままでは叶いません。

1年近くに渡ってサポートをしてきたお母さんの元気な子供を直接とりあげ、お母さんに届けることができるのは、大きな感動です。

赤ちゃんが好きな人、お産を見て感動した経験のある人には向いている職業だと言えるでしょう。

やりがい2.母親から直接感謝してもらえる

助産師になり、母子の健康サポートをすることで、直接感謝の言葉をもらえることも大きなやりがいの一つです。

特に小さな診療所などでは、出産前のメンタルケアからお産、産後の育児アドバイスなど1年以上に渡って母子と関わりを持つことも少なくありません。

もちろん婦人科病棟の看護師としても、お産や育児のサポートを行うことはできます。

しかしお母さんに直接アドバイスをしたり、子供の様子を聞いて深いコミュニケーションが取れるのは、助産師だけです。

自分が頑張ってサポートしたお母さんと子供が元気に毎日を過ごす様子を見て、自分の仕事の意義を感じる方も多くいます。

以上が、助産師として仕事をする上でのやりがいでした。

助産師の仕事は、母子にとって欠かせないものですが、助産師になるまでの道のりは、難しいものです。

助産師の資格を取得することを考えるうちに「やっぱりこのまま看護師を続けていくほうが良いかも」と感じた場合はどうすれば良いでしょうか。

次は、看護師としての仕事を続けつつ、お産に関わる仕事をする方法について解説していきます。

7.助産師に近い仕事をしたい看護師の方へ

助産師になりたいけれど、お金と時間の都合で資格取得が難しい、という場合は看護師のまま今の仕事を見直してみましょう。

女性や子供の健康、お産について興味があるという方は、助産師の資格がなくても産婦人科の看護師として転職する方法もあります

現在、産婦人科では看護師、准看護師、看護助手の求人などがあるので近くで求人がないか、まずは探してみましょう。

また、資格取得まで時間はかかりますが「専門看護師」という資格うち、「母性看護」を取得することで母子に関わる専門的な知識を身につけることも可能です。

今後どのようにして助産師に近い仕事をしていくのか、今の職場環境や今後のキャリアのことを考えて慎重に決める必要があるでしょう。

まとめ

最低でも1年、助産師としての勉強をする必要はありますが、看護師から助産師を目指すことは可能です。

特に赤ちゃんが好きな人、お産に思い入れのある人なら助産師の職業は向いていると言えるので、時間とお金が確保できる方はぜひチェレンジしてください。

助産師としてのキャリアを踏み出すには、助産師の資格が取れる学校を探すのが最初です。

助産師になりたいと思ったら、通える学校を探して資料請求などを行いましょう。