「毎日のように患者さんからセクハラされる」
「セクハラを辞めるよう言っても効果が無い」
患者から看護師へのセクハラは珍しくなく、どうやって対処すべきか悩む看護師は想像以上に多いです。
しかし、よくあることだからと我慢し続けていると、心身の健康を損ない看護師の仕事を続けるのも難しくなるかもしれません。
この記事では、患者さんからセクハラが起こる原因と、試してみて欲しい対処法を解説します。
セクハラを受けたらどのように行動すれば良いのか知り、今の状況を少しでも良くしましょう。
目次
1.患者からのセクハラを経験する看護師は少なくない
2017年医労連の調査によると、セクハラが「ある」と答えた看護師は11.6%もいました。
そして、誰から受けたかというアンケートでは、71.5%もの看護師が「患者から」と回答しています。
このアンケートから、看護師の働く環境では患者からのセクハラが特に大きな問題だと言えるでしょう。
患者からのセクハラは、立場上強く拒否しにくいのも看護師を悩ませる理由の一つです。
セクハラを受けても、「病気の人だから仕方ない」「看護師は患者をケアする立場だから文句は言えない」と周りから我慢を強いられることも少なくありません。
先輩看護師に相談したものの、よくあることだから我慢してと言われ、1人で悩んでいる看護師もいるでしょう。
しかし、患者からのセクハラを看護師が我慢しなければならないというルールはありません。
あなたが苦痛を感じているなら、患者からのセクハラにしっかり対処すべきです。
まずは自分がどんなセクハラを受けているのか記録しておき、諦めず周りの人に相談してみましょう。
次は、具体的にどんなことがセクハラと言えるのか知っておきたい、という人に向けよくあるセクハラの内容を紹介します。
セクハラを受けたことのある人は、読むとつらくなる可能性があるので、不安なら「患者からのセクハラが起こりやすい理由」まで飛ばしてください。
2.患者からどんなことをされたらセクハラ?
セクハラとは、性的な発言や行動によって苦痛を感じ業務に支障が出ることを言います。
看護師から患者へのセクハラの場合、性的な発言や行動のせいで仕事ができなくなったり、スムーズに業務が行えなくなることを指すと考えられるでしょう。
具体的なセクハラの内容には個人差がありますが、以下のような発言・行動はセクハラと言えるでしょう。
- 採血や掃拭のときに身体を触られる
- ベットに引きずり込まれる
- 性的な言葉を言われる
- 性交の経験について聞かれる
- 「おっぱい大きいね」など容姿に言及される
- 自慰など性的なものを故意に見せられる
毎日のようにセクハラをされると、今の環境に慣れてしまい「大したことではないのかも」と考えてしまいがちです。
しかし、ひどい場合はセクハラに加え患者から暴力を受けることもあるので、他の看護師の被害を防ぐためにも早く声を上げることが大切だと言えます。
普段、患者さんからされて嫌だなと感じていることはしっかりメモしておき、他の看護師とも共有しましょう。
次は、患者から看護師へのセクハラが起こりやすい理由を解説していきます。
どうしてセクハラが起こるのか知り、自分なりの対処法を考えていきましょう。
3.患者からのセクハラが起こりやすい理由
患者から看護師へのセクハラは、入院施設を持つ病院やクリニックで広く問題視されていると言えるでしょう。
しかし、そもそもなぜ看護師は患者からセクハラを受けやすいのでしょうか。
ここからは、看護師がセクハラを受けやすい環境になっている原因を以下の通り解説します。
- 身体的な距離が近くなりやすいから
- セクハラについて注意を受けることが少ないから
- 看護師には女性が多いから
それぞれの原因を確認していきましょう。
理由1.身体的な距離が近くなりやすいから
看護師と患者は、処置を行う時どうしても身体的な距離が近くなりやすいので、患者の中には性的なサービスと混同する人がいるようです。
身体的に距離が近くなると、どうしても相手に対し好意を持ってしまいます。
その好意や興味が暴走して、セクハラという形で看護師に危害が加わってしまうのです。
もちろん、多くの患者は、自分の身体に触られても「必要な処置なんだな」と考えセクハラをしようとは思いません。
しかし、中には個室やカーテンの中で行われる処置を良いように誤解して看護師に性的なことをする患者もいます。
看護師の業務上、身体的な接触があるのは仕方のないことなので、セクハラを受ける看護師が悪いということにはなりません。
理由2.セクハラについて注意を受けることが少ないから
患者から看護師へのセクハラは、仕方ないとして注意されること無く見過ごされてしまいがちです。
その大きな理由は、患者が病気で入院していることにあるでしょう。
病気の間、患者さんには大きなストレスが掛かっていると考えられます。
そのため、処置をしてくれる看護師にセクハラをしたり、暴言を吐いても仕方がない、と考える医療従事者は多いのです。
また、しばらく我慢していれば患者は退院するので、いちいち患者に注意するより我慢したほうが早いと受け入れてしまう看護師もいるでしょう。
そのため、一般企業なら厳重注意となるセクハラでも、患者と看護師の間だと問題視されない可能性があります。
そして注意を受けない患者は「セクハラしても大丈夫なんだ」と考え、退院までセクハラを続けてしまうのです。
理由3.看護師には女性が多いから
看護師は女性の割合が9割ほどとなっており、男性患者と力の差が生まれやすい状況にあります。
そのため、女性看護師は男性患者に対して強く言い返しにくく、セクハラが放置されやすいのです。
また、男性患者の中には、男尊女卑的な考えを持ち「女性が男性に従うのが当然」と考えている人もいます。
そうした人は、女性は何を言っても良いと考えているので、仮に注意をしても何が悪いのか分からずセクハラを繰り返すのです。
以上が、患者から看護師へのセクハラが多い原因でした。
セクハラを受け、「もしかすると自分の対応が悪かったのでは」と悩む看護師は多いです。
しかし、セクハラの原因は働く環境にあることが多いので、自分を責める必要はありません。
患者からのセクハラには、毅然とした態度で対応しましょう。
次は、患者からのセクハラに対応する具体的な方法を解説していきます。
セクハラを無くしたい、という気持ちを忘れず行動を起こしましょう。
4.患者からのセクハラに対処する方法5つ
患者からのセクハラは頻繁に起こるので、同じ看護師同士でも見過ごされてしまいがちです。
また、「患者はいつか退院するからそれまでの辛抱」と対策を諦めている先輩看護師も少なくありません。
しかし、職場全体が「患者からであってもセクハラはダメなことだ」という意識を持てば、患者に注意をする、配置を変えるなどの対策はできます。
ここからは、被害を受けた看護師がすべき対処法を5つ解説していきます。
- 同僚や上司に報告する
- 被害があれば病院の診察を受ける
- 担当を変えてもらう
- 外部の人に相談する
- 転職をしたいと言う
まずは信頼できる人や窓口を見つけて、今の状況を話してみましょう。
方法1.同僚や上司に報告する
患者からセクハラを受けたら、まずは同僚や上司に相談をしてください。
自分1人で悩みを抱えていても、事態は解決しません。
まずは少しでも理解のある人を探し、どんなセクハラを受けたか報告しましょう。
本来、患者からであってもセクハラは咎められるべきことです。
上司が理解ある人なら、相談することで患者に直接注意してくれる可能性もあるので、諦めずまずはセクハラの事実を伝えましょう。
方法2.被害があれば病院の診察を受ける
精神・身体的に被害があるなら病院の診察を受け、診断書をもらいましょう。
診断書をもらうことで、被害が明確になり上司にもセクハラの被害を伝えやすくなります。
暴力などの被害がない場合でも、精神的に大きなダメージを受けた場合は精神科や心療内科へ行ってみてください。
なかなか対応してくれない上司でも、医師からもらった診断書があればセクハラ解決に向けて動いてくれる可能性は高いでしょう。
方法3.担当を変えてもらう
特定の患者さんが繰り返しセクハラをしてくる場合、担当を変わってもらうのが効果的です。
患者さんによっては、大人しそうな看護師を選んでセクハラを繰り替えしていることもあります。
ベテランの先輩や男性看護師に変わってもらえば、セクハラがピタリと止む可能性はあるので先輩や同僚に担当を変わってもらえないか聞いてみてください。
もし、職場に担当を代われる人がいない場合、他の看護師と一緒に診察やケアをするのも良いでしょう。
他の看護師の目がある状況なら、患者も冷静になって処置を受けてくれるはずです。
方法4.外部の人に相談する
職場内に頼れる人がいない場合、外部の窓口に相談をしてください。
看護師のセクハラは重大なこととして扱われず、上司からも「我慢して」と言われるケースが少なくありません。
しかし、セクハラを我慢するのは大きな負担になるので、職場以外の人に相談して気持ちを少しでも楽にしましょう。
各都道府県の労働局では、看護師を含め全ての労働者のための相談窓口があります。
労働局は必要であれば病院やクリニックの問題点を指摘したり、セクハラを無くすよう指導をすることが可能です。
また、法的措置を取りたいと考えているなら被害の状況を詳細に記録し、弁護士に相談するのも良いでしょう。
職場内で対処してもらえないからと諦めるのではなく、外部の人の力を頼ることも大切です。
方法5.転職をしたいと言う
上司がどうしてもセクハラに対処をしてくれない場合、転職をしたいと伝えてみましょう。
セクハラの重大性を理解していない上司だと、労働局に指導をしてもらっても対策をしない可能性があります。
さらに、ひどければ外部の人に相談した報復として評価をわざと下げる上司もいるでしょう。
しかし、セクハラが改善されなければ退職すると上司に伝えれば、人材が減る不安から対処してもらえる可能性があります。
医療現場の人材不足は深刻なので、1人でも退職されたら現場が回らなくなる、という状況の職場は多いです。
そうした状況なら、自分の退職を鍵にして上司に改善を要求することができるでしょう。
以上が、患者からのセクハラに対処する方法でした。
1人で注意しても止まないセクハラには、他の人に協力してもらって対処するしかありません。
まずは信頼できる人に相談して、患者さん別に対応を考えていきましょう。
一方、上司に理解してもらえず、全く対応してもらえないという職場も少なくありません。
誰に相談しても状況が変わらない場合、転職を本気で検討するのも良いでしょう。
次は、セクハラへの対処ができない職場であれば転職すべき理由を解説していきます。
5.どうしてもダメなら本気で転職を検討して
セクハラに対する組織の体制が不十分で、フォローをしてもらえない場合は転職も本気で検討してください。
セクハラを我慢し続けるのは、想像以上に辛いことです。
セクハラされた記憶がフラッシュバックし、仕事に行けなくなる看護師もいるので対策がされないなら職場を変えるべきでしょう。
もし今の職場を辞めたくはない場合、休職するという手もあるのでまずは今の職場をしばらく離れることを考えてください。
看護師へのセクハラは常態化しているため、「セクハラくらいで休職したり、転職したりするのは馬鹿らしい」と感じてしまう人もいるはずです。
しかし、今つらいと感じている自分のことを大切にして、セクハラをしてくる患者とは距離を置きましょう。
まとめ
患者さんからのセクハラを経験する看護師は少なくありません。
セクハラを受けたら、1人で抱え込むのではなくまずは職場にしっかり報告することが大切です。
同僚や先輩看護師でも良いので、信頼できる人に現状を伝え対策を一緒に考えてもらいましょう。
一方、職場環境が悪いとセクハラの報告をしても、まともに取り合ってくれないこともあります。
職場を辞めたいと伝えても上司が何もしてくれない場合、転職を検討して自分の身を守りましょう。