看護歴8年 32歳女性Tさん
――事前アンケートによると、元々は別の領域で看護されていたんですよね?
はい。最初は外科にいました。外科にいたころは回復期は楽なんだろうなあと思っていましたが、24時間ずっとナースコールが鳴りっぱなしで忙しい職場です!
――そうなんですね。
トイレなどを見ることも多いので、そういう細かいのをたくさん集めたイメージです。体力勝負ですね(笑)
体力と言えば、回復期は認知症の患者さんが多いです。地道な対応が求められるので、そういう意味でも体力勝負だなぁと実感します。
――良かった点はありますか?
時間外がほとんどなかったので、それに関しては良かったなと!
――それでは、反対に悪かった点、気になることはありますか?
点滴をしあり注射を打ったり……というような王道!という感じの看護ではりません。理想のイメージとかけ離れている……としょぼりしている後輩がいました。そういうナースにあこがれを持っているような人はモチベーションを保つのが難しいかもしれませんね。
でもですね、回復期だって立派な看護です!というのは強調しておきたいです。やりがいのある場所です。
――具体的にはどのようなところが?
患者さんの何が問題なのか、何を必要としているのかを考えてそれを提供するのが看護かなと思います。回復期はたまたまそれが点滴や注射、包帯などではなく日頃の手助けだったりするわけなんですよね。たしかに「格好良い看護」ではないかもしれませんが、表面的なプライドを捨てて頑張ってみると、また違った新しいプライドに出会えるはずです。
――なるほど、勉強になります。それでは最後にこれから回復期を目指す後輩にアドバイスをお願いします!
具体的なスキルを発揮する機会は他に比べて少ないかもしれませんが、抽象的な看護の概念を考え直す良い経験になると思います。頑張ってください!
回復期で看護師として働こうとお考えですね。
回復期で働くのは急な残業が発生しにくく、幅広いスキルアップも狙えるので多くの看護師に人気です。
しかし、急性期で働くのと同じくらいハードな面もあるので、事前に詳しい働き方を知っておかなければなりません。
そこで今回は、回復期で働く看護師についてメリットや向いている人を見ていきます。
回復期で働くのが良いのかを考えて、自分に合った働き方を見つけましょう。
目次
1.回復期で働く看護師とは?
回復期で働く看護師は、回復期リハビリテーションで働いています。
回復期リハビリテーションというのは、患者が日常生活に戻れるように体の調子の回復を目指す入院施設です。
患者が退院後に食事や排泄、入浴などをできるように、毎日リハビリを行っています。
回復期リハビリテーションは、看護師以外にもいろいろな専門職種がチームになって働いているのが特徴です。
ここで、回復期で働く看護師が関わる専門職について見ておきましょう。
1−1.回復期で働く看護師が関わる専門職の種類
回復期リハビリテーションで働くのは、看護師だけではありません。
回復期リハビリテーションには、看護師以外に以下のような専門職が働いています。
- リハビリ専門医
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 介護職
- ソーシャルワーカー
回復期で働く看護師は、多くの専門職の人たちと連携しながら患者の回復をサポートしていきます。
そのため、他の分野の専門的な知識にも関心を持ち、積極的に協力していくことが大切です。
1−2.回復期で働く看護師が関わる患者の特徴
回復期の患者は、約66%が75歳以上と高齢者が主となっています。
そして、回復期リハビリテーションの患者の大きな特徴は、リハビリ時間の長さです。
1日最大で3時間のリハビリを行うので、看護師の業務もリハビリのサポートが中心となります。
もちろん、3時間のリハビリ以外に、起床から就寝までの日常的な動作のサポートも24時間体勢で行うことが必要です。
また、回復期リハビリテーションへ入院する患者については、厚生労働省が対象となる疾患を決めています。
そのため、医師による診断がなければ入院ができません。
入院期間も疾患によって60日〜180日と決められています。
対象疾患 | 入院期間 |
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷などの発症後もしくは手術後、または義肢装着訓練を要する状態 | 150日 |
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷および頭部外傷を含む多部位外傷 | 180日 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折、または2肢以上の多発骨折の発症後、または手術後の状態 | 90日 |
外科手術または肺炎などの治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後または発症後 | 90日 |
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節または膝関節の神経、筋または靭帯損傷後 | 60日 |
股関節または膝関節の置換術後の状態 | 90日 |
患者によっては180日と長期的に入院するので、精神的なケアも必要となります。
ここからは、回復期で働く看護師の業務内容についてもっと詳しく見ていきましょう。
2.回復期で働く看護師の業務内容

回復期で働く看護師の業務内容は、バイタルチェックやリハビリ看護、患者や家族の精神的ケアです。
回復期リハビリテーションではチーム医療が行われるので、多くの専門職の人達と患者や家族との橋渡しも業務の1つとなります。
長期的に入院する患者は、病院が生活の場です。
そのため、24時間365日ずっと入院患者が快適に暮らせる環境を整えます。
そして、退院後の不安や悩みについても一緒に向き合い、前向きな気持ちで退院してもらうために業務を行うのです。
以上、回復期で働く看護師の基本的な事柄について見てきました。
ここからは、回復期で看護師として働く3つのメリットを見ていきましょう。
3.回復期で看護師として働く3つのメリット

回復期で働くかどうかお悩みなら、メリットを確認してから考えてみるのがおすすめです。
回復期で働く看護師には、3つのメリットがあります。
- 患者の回復過程を見れてやりがいがある
- 患者や家族とじっくり関われる
- 急な残業が発生しにくい
回復期の施設で働く看護師は、やりがいの多さやプライベートの両立のしやすさを感じる人が多いです。
患者や家族とじっくり関われるので、コミュニケーションをとることに喜ぶ人も少なくありません。
それぞれのメリットについて、順番に確認していきましょう。
メリット1.患者の回復過程を見れてやりがいがある
回復期で働くことで、患者の回復過程を間近で見ることができます。
患者ができることを増やしていくのを見ることに、やりがいを感じる看護師は少なくありません。
回復期リハビリテーションに入院する患者は、失われた身体機能を取り戻すために毎日リハビリをしています。
入院時には難しかった食事や着替えのような日常的動作ができるようになったとき、大きなやりがいを感じることでしょう。
メリット2.患者や家族とじっくり関われる
回復期リハビリテーションで働けば、患者や家族とじっくり関われます。
入院期間が長い患者だと、180日もの日数を一緒に過ごすことになるのです。
患者や家族は、ほとんどの場合で何らかの不安を抱えています。
そのため、単なるリハビリのサポートだけではなく、いろいろな話を時間をかけてしていくことも必要です。
急性期などの他の施設では難しい、患者や家族の心に寄り添った丁寧なケアも行うことができます。
メリット3.急な残業が発生しにくい
回復期での業務は、急な残業が発生しにくいです。
回復期の患者は突然大きく体調が変わることは少ないとされています。
救急指定もなく、スケジュール通りの入退院が主なので、急な残業の発生は起こりにくいので働きやすいです。
そのため、回復期リハビリテーションには、子供がいる看護師や、家族の介護をしている看護師もたくさん働いています。
プライベートと仕事の両立がしやすいのは大きなメリットだと言えるでしょう。
以上、回復期で看護師として働く3つのメリットをご紹介しましたが、知っておくと良い注意点もあるので見ていきましょう。
4.回復期看護師に転職する前に知っておきたい注意点

回復期で働く前に、注意点を知っておけば後悔しにくいです。
回復期で看護師として働く前に知っておきたい注意点は、3つあります。
- リハビリに消極的な患者との関わりが大変である
- 急性期と同じくらいハードさを感じる看護師も多い
- 急性期と比べて医療行為の実務経験が積みにくい
それぞれの注意点について、順番に確認していきましょう。
注意点1.リハビリに消極的な患者との関わりが大変である
回復期で働く際には、リハビリに消極的な患者とも関わっていかなければなりません。
回復期リハビリテーションに入院する患者は、今までできたことができなくなったことへの気持ちの整理がついていない人も多いです。
しかし、リハビリへの意欲がない患者にも、前向きに取り組んでもらうことが必要となります。
人の内面に時間をかけて寄り添わなければならないことに、慣れるまでは大変さを感じる看護師は多いです。
じっくりと患者や家族と話し、関係性を築いて気持ちのケアを進めていきましょう。
注意点2.急性期と同じくらいハードさを感じる看護師も多い
回復期リハビリテーションの業務に、急性期での業務と同じくらいのハードさを感じる看護師も多いです。
回復期で働くのは急性期よりも楽だとイメージしている看護師は少なくありません。
しかし、回復期は急性期の施設と比べて、圧倒的にナースコールが多いです。
夜勤中であってもナースコールが頻繁に鳴ります。
そのため、業務量が少なくて楽だろうと考えて回復期で働くと、後悔する可能性が高いです。
ナースコールへの対応が遅れると、自力で行動しようとした患者が転倒して病態が悪化するケースもあるので気をつけましょう。
注意点3.急性期と比べて医療行為の実務経験が積みにくい
回復期では、急性期と比べると医療行為の実務経験が積みにくいことも知っておくのが良いです。
点滴や注射を行う回数が、回復期リハビリテーションでは少ないとされています。
リハビリや生活の介助がメインの業務なので、医療行為のスキルアップに意欲的な看護師だと物足りなさを感じるかもしれません。
一方で、多くの専門職との連携や、患者や家族との長期的な関係構築など、回復期でしか得られない看護スキルもあります。
回復期だからといって、学べることが少ないわけではないので安心してください。
以上、回復期で看護師として働く前に知っておきたい注意点でした。
もしも自分が回復期で働けるのかが不安なら、回復期で働くのが向いている人を確認してみましょう。
5.回復期看護師として働くのが向いている人

回復期で看護師として働く人の多くは、患者と時間をかけて向き合えることや、仕事とプライベートの両立がしやすいことに魅力を感じています。
回復期で看護師として働くのが向いている人は、以下の通りです。
- じっくり患者と向き合いたい人
- 幅広い職種の人と関わって看護師としてレベルアップしたい人
- やりがいを感じたい人
- 仕事とプライベートを両立したい人
- チームで協力して働きたい人
もしもあなたが以上のようなポイントに共感するなら、回復期で働くことを前向きに考えてみましょう。
魅力をたくさん感じるために、回復期で働く際に役に立つスキルを身につける方法もご紹介します。
6.回復期の看護師としてさらにスキルアップするには?

回復期の看護師としてスキルアップしたいなら、具体的な目標を持って勉強するのが大切です。
回復期の看護師がよく設定する目標に、「回復期リハビリテーション看護師認定コース」の修了があります。
回復期リハビリテーション看護師認定コースとは、回復期での質の高い看護や、チーム医療における良質なコミュニケーションができる看護師を育てる研修です。
研修会に出席してレポートを出すことを繰り返し、スキルアップしていきます。
18日間の研修会へ出席する時間や、220,000円程度の費用が必要となりますが、興味があるなら積極的に挑戦してみましょう。
例年通りなら、申込み開始は2月初旬です。年度によって詳しい内容や申込み方法が異なるので、最新の情報を「一般社団法人 回復期リハビリテーション病棟協会」のホームページで確認してみてください。
回復期で看護師として働くのは、非常にやりがいがあって人気です。
最後に、回復期の看護師になるのに使いやすい転職サイトを見ていきましょう。
7.回復期の看護師になるのに使いやすい転職サイト3選
回復期の施設の掲載数が多い転職サイトを使えば、回復期で看護師として働きやすくなります。
回復期で働くのに看護師が使いやすい転職サイトは、以下の3つです。
- ナースAGENT
- コメディカルドットコム
- ジョブメドレー
それぞれの転職サイトについて、順番に確認していきましょう。
おすすめ1.ナースAGENT

回復期で働くのに、まず利用しておきたいサイトがナースAGENTです。
ナースAGENTは、回復期の求人数が約800件とたくさん掲載されています。
ほとんどのサイトが100件から300件程度なので、ナースAGENTは回復期の求人を見つけやすいです。
都道府県や市区町村で検索結果を絞れるので、自分の働きたいエリアに回復期の求人がないかを見てみましょう。
今は求人がない場合は、看護師専門の紹介会社や派遣会社に一括で登録することもできます。
サイト名 | ナースAGENT |
URL | https://www.nurse-agent.com/ |
特徴 | 慢性期の求人数が約800件と多い(2020年6月現在) |
おすすめ2.コメディカルドットコム

回復期の求人は、コメディカルドットコムでも見つけられます。
一般的な看護師転職サイトだと、求人側の費用負担が大きいせいで月収を低く設定されやすいです。
しかし、コメディカルドットコムは求人側の採用手数料を抑えているので、良い条件で転職しやすくなっています。
慢性期の看護師は、残業が少なくて収入が今よりも減る可能性が少なくありません。
そのため、金銭面で心配なく転職したいなら、コメディカルドットコムの利用も検討してみましょう。
サイト名 | コメディカルドットコム |
URL | https://www.co-medical.com/ |
特徴 | 高待遇な転職を狙いやすい |
おすすめ3.ジョブメドレー

回復期以外の求人もあわせて探したいという人は、ジョブメドレーが最適です。
ジョブメドレーは、2020年6月現在、全国でおよそ280,0000件の事業所の求人情報を掲載しています。
回復期の求人数も150件以上あるので、あなたの地域の求人が見つかる可能性は低くありません。
まだ回復期に転職するか決めかねているなら、多くの求人情報を比較してピッタリの職場を見つけましょう。
サイト名 | ジョブメドレー |
URL | https://job-medley.com/ |
特徴 | 日本最大級の求人数がある |
まとめ
回復期で働く看護師は、回復期リハビリテーションで専門職種の人たちとチームで患者のサポートを行い、患者の回復と自立を支援します。
患者の生活環境を整えながらリハビリを支援し、チーム全体をまとめるマネージャーのような役割です。
患者や家族と協力して、深い関係を築くことに魅力を感じる人には、回復期で看護師として働くのが向いているでしょう。