リハビリテーション病院での看護師の仕事は、どのようなものでしょうか。
看護師として医師や患者のサポートを行うことは、容易に想像ができます。
ではそれ以外の業務は、一体何をするのでしょう。
より具体的な仕事内容や役割が知りたくありませんか?
この記事ではそんな疑問を抱えたあなたに、リハビリ看護師の魅力を余すところなく伝えます。
急性期病院との違いも知り、就職の選択に役立ててください。
まずは、リハビリ病院のチーム医療から見ていきます。
目次
1.リハビリ看護師はチーム医療の中核!
リハビリテーション病院の看護師の仕事が想像付かない場合、このような考えが浮かんだのではないでしょうか?
「リハビリはセラピストが中心に行うもの」
「リハビリ病院では、看護師の仕事は無いのでは?」
リハビリテーション病院では他職種と連携を取り、チーム医療を提供しています。
確かにリハビリを実施するのは、理学療法士や作業療法士といったセラピストが中心かもしれません。
しかしチームの連携を深めていくためには、看護師の力が必要不可欠であるといえます。
なぜ看護師が中核といえるのか。
その理由を、看護師の役割から紐解いていきましょう。
2.リハビリテーション病院の看護師の役割
リハビリ病院での看護師の役割を見ていきます。
ここで紹介するのは、以下の3つの役割です。
- 患者の体調把握
- モチベーション維持
- 他職種との連携
それぞれ解説します。
役割1.患者の体調把握
1つ目の役割は、患者の体調把握です。
バイタル測定はもちろん、既往歴の把握も含まれます。
なぜかというと、傍にいる看護師が合併症にいち早く気づけるから。
体調把握は、リハビリの効果にも関わる部分です。
リハビリを無理矢理行ったところで、良い効果は得られません。
看護師の体調把握は、重要な役割といえるでしょう。
体調把握は、モチベーション維持にも通じる部分があります。
次の項目を見ていきましょう。
役割2.モチベーション維持
患者はリハビリで喜びを感じることがあれば、苦しみや悲しさを感じることもあります。
そのため看護師は、患者の葛藤をケアしなければいけません。
つまりこの点が、リハビリのモチベーションを保つ看護師としての役割になります。
例えば変化に気づき、それを伝えることは患者のモチベーションに良い影響を与えるでしょう。
この役割は、患者との距離が近い看護師だからこそ達成できるともいえますね。
役割3.他職種との連携
ここまで見てきたように、看護師は患者の機微に配慮しやすいです。
その変化を、他職種に伝えることも看護師の役割。
つまりこの役割は、チーム医療の潤滑剤と表現することができます。
リハビリ病院は、それぞれ専門分野を持った他職種と関わる現場です。
他職種とは、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 医師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 社会福祉士
このような他職種と看護師が、積極的な意見交換を行います。
看護師と他職種の連携が深まることで、より患者のためになるリハビリが可能です。
役割を把握したところで、具体的な仕事内容を見ていきましょう。
3.リハビリテーション病院の看護師の仕事内容
ここまで見てきた看護師の役割を基に、次は仕事内容を見ていきましょう。
リハビリテーション病院の特徴的な仕事内容は、次の3点です。
- 生活介助
- 口腔ケア
- リハビリ見守り
それぞれ見ていきます。
業務1.生活介助
リハビリ病院では、看護師が患者の生活介助を行います。
生活介助の内容は、以下のようなものです。
- トイレ介助
- 着替え介助
- 食事介助
- 服薬介助
特に夜勤時のトイレ介助は、ナースコールの嵐なんてことも。
リハビリ病院では、脳の病気の後遺症で尿意を感じづらい人もいるためです。
また生活介助では、介助の必要性を見極めることも求められます。
生活動作はリハビリを兼ねているため、患者に任せる場合もあるでしょう。
このように見極めも含め、リハビリを意識した生活介助を行います。
業務2.口腔ケア
リハビリ病院では、口腔ケアも重要です。
リハビリ段階の患者は、運動量が低下しています。
運動量が減った高齢者は特に、唾液の分泌低下の症状も見られるでしょう。
口腔機能の低下による嚥下困難や誤嚥性肺炎を防ぐためにも、看護師によるケアが必要です。
リハビリ病院の口腔ケアでは、担当の患者すべてを見て回る大変さを感じるかもしれません。
しかし口腔ケアも、リハビリを兼ねた動作に含まれます。
患者のリハビリのために、始めはしっかりと見てあげる意識が必要です。
業務3.リハビリ見守り
リハビリ見守りも、看護業務の1つです。
患者に寄り添う存在として、ときには励ますこともします。
また看護師が第三者視点で気づいた変化を伝えることで、患者のモチベーションの維持も可能です。
病院によっては、看護師が歩行訓練を担当することもあるでしょう。
リハビリ経験が無い場合、セラピストから学ぶ姿勢も大切ですね。
4.リハビリテーション病院の看護師に必要なスキル
ここまで、リハビリ看護師の業務を見てきました。
次は、円滑な業務に必要とされる代表的なスキルを、以下の3つでご紹介します。
- 合併症の知識
- コミュニケーションスキル
- 筋力
順番に見てみましょう。
スキル1.合併症の知識
リハビリ病院の患者は合併症のリスクも抱えています。
そのため看護師が合併症の知識を備えておくことで、不測の事態を避けられるでしょう。
例えば代表的な合併症には、このようなものがあります。
- 糖尿病
- 高血圧
- 心疾患
合併症は、患者の既往歴によっても変わります。
そのため、常に知識のアップデートが必要です。
体調管理に関しては、次のスキルも関わってきます。
スキル2.コミュニケーション
リハビリ看護師には、傾聴も含めたコミュニケーションスキルが重要です。
話す力は、他職種に患者の状態を適切に伝えるために活用します。
聞く力は、患者のリハビリの辛さや病気の心配に対する傾聴で必要です。
コミュニケーションスキルは、患者家族との信頼関係の構築にも役立ちます。
「あの看護師さんになら、安心して任せられる!」
こう思ってもらうためにも、コミュニケーションスキルが重要といえるでしょう。
スキル3.筋力
意外に思えますが、リハビリ看護師には筋力も重要です。
なぜなら、リハビリ病院での看護は介助が増えるから。
上手に力を使わない介助を行えればいいですが、最低限の筋力は必要といえるでしょう。
過度にムキムキになる必要はありません。
運動と思って、前向きに身体介助に取り組めるといいですね。
5.リハビリテーション病院の看護師におすすめな資格
ここまで、リハビリ看護師に必要なスキルを見てきました。
次は、そのスキルを学ぶことができる資格を見ていきましょう。
リハビリ看護師には、回復期リハビリテーション看護師認定がおすすめです。
回復期リハビリテーション看護師認定は、一般社団法人回復期リハビリテーション病棟協会が定める認定資格です。
回復期リハビリテーション看護師認定規定に基づき、受講資格をこちらにまとめました。
- 実務経験5年以上
- 回復期リハビリテーション経験1年以上
- 施設長または上司の推薦
受講場所が協会のある東京に限られることがネックですが、6日間の期間で学ぶことができます。
資格で得た知識から、看護師としての新たなモチベーションを見つけることもあるはずです。
より深くリハビリに携わりたいと考えたときは、取得を考えてみましょう。
6.リハビリテーション病院と急性期病院の違い
ここまで、リハビリ病院について詳しく見てきました。
看護師就活の際は、急性期病院を勧めることが定番化しています。
実際に、急性期病院を勧められた人もいるのではないでしょうか?
その場合、具体的にどんな違いがあるか気になるはずです。
ここまで見てきた内容を基に、3つの違いをご紹介します。
- 医療処置
- 現場のスピード感
- やりがい
それぞれ順番に解説していきます。
違い1.医療処置
1つ目の違いは、医療処置の回数です。
リハビリテーションを専門とする病院の患者は回復期。
必然的に、医療処置を施す機会が減ります。
そのため人によって、リハビリ看護師ではスキルをフル活用できないと感じる場合も。
しかし、悪いことばかりではありません。
勤務時間で見ると、リハビリ病院の方が突発的な残業が少ないという見方もできます。
ワークワイフバランスの意識が高い人には、リハビリ看護師がおすすめです。
違い2.現場のスピード感
違いの2つ目は、現場のスピード感です。
急性期病院では、状況が目まぐるしく変化していきます。
患者の様態や入退院のスパンも、基本的はリハビリ病院より早いでしょう。
リハビリテーション病院では、1人の患者と向き合う機会が増えます。
そのため急性期病院と比べると、ゆったりと働けるかもしれません。
どちらが優れているという話ではなく、性格にあった職場を選びましょう。
違い3.やりがい
急性期病院とリハビリ病院では、看護師が感じるやりがいにも違いがあります。
急性期病院で医療処置を行うことにやりがいを感じている場合、このようなことを感じるかもしれません。
「リハビリ病院では介助中心だから、看護師としてのやりがいを見つけられない」
やりがいの見つけ方は人それぞれです。
リハビリ病院のほうが患者の機能回復が分かりやすく、やりがいが感じやすいということもあるでしょう。
仕事内容や役割から、自分はどちらに当てはまるのか考えてみることが大切です。
リハビリ病院の就職や転職を考える際は、今一度やりがいを考え直してみましょう。
7.今後も必要とされるリハビリテーション病院の看護師
最後に、今後のリハビリテーション看護師についての情報です。
医療従事者であれば、2025年問題は既にご存知かと思います。
日本を取り巻く高齢化問題の中でも、特に大きな問題です。
2015年時点の政府の指針では、来たる2025年問題に向けて2つの指針を提示しました。
- 病床数の減少
- リハビリテーション病床の増加
これを受け、実際にリハビリテーション病床は増加しています。
2020年3月時点の回復期リハビリテーション病棟協会の資料を基に、以下の表にまとめました。
年度 |
リハビリ病床届出数(床) |
増加数 |
2015年 |
74,460 |
– |
2020年 |
86,397 |
+11,937 |
病床の増加は、リハビリ看護師の需要にもつながるでしょう。
さらに、社会貢献としてのやりがいも明確になるのではないでしょうか。
これからの高齢化社会を支える、リハビリ看護師。
目指してみてはいかがでしょうか。
まとめ
リハビリテーション病院での、看護師の仕事内容について見てきました。
リハビリ看護師の魅力を、少しでも感じていただければ幸いです。
この記事を読んでいる人の中には、急性期病院でバリバリ働いてきた人もいるのではないでしょうか。
リハビリ看護では、看護とは何かという本質的な点も見えるでしょう。
1人の患者に対し、看護師としてできることを考え直すきっかけにもなるはずです。
看護師のキャリアとして、リハビリテーションの経験も考えてみてはいかがでしょう。