「自衛隊看護師ってどうやってなるんだろう…」
「普通の看護師と何が違うの…」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
自衛隊看護師になる方法はいくつか存在しますが、防衛医大経由で看護師になる方法が一般的に有名です。
ですが、実は民間で看護師として働いていた人が自衛隊看護師になる方法もあるんですよ。
この自衛隊看護師ですが、特別職国家公務員という立場で恵まれた待遇を受けられるのをご存じですか?
今回は自衛隊看護師について調べたことを書きました。
現在の看護師職からのステップアップ先として自衛隊看護師を視野に入れている人は是非最後まで読んでみてくださいね。
目次
1.自衛隊看護師とは
まずは自衛隊看護師とはどんな職業なのかを一緒にみていきましょう。
自衛隊看護師とは文字通り自衛隊内で働く看護師のことです。
普段は全国の自衛隊基地地区に配置されている自衛隊病院で看護師として働くか、自衛隊内部の衛生科で働きます。
自衛隊病院は防衛省によって運営される自衛隊関係者に向けた病院です。
一般市民の利用率は高くなく基本的には自衛隊員とその家族のために運営されています。
つまり自衛隊看護師は自らが自衛隊員であり自衛隊員の健康維持や医療的サポートをする立場だということです。
さらに自衛隊看護師は自衛隊の衛生科に所属してそこでも任務にあたります。
衛生科は隊員の健康管理や傷病者の救護・移送・衛生物資の輸送などを行う部隊です。
衛生科には医師、歯科医師、薬剤師、救命救急士など医療系の様々な資格を有する自衛官が所属しており、看護師もその1つになります。
つまり自衛隊看護師とは、看護師資格を保有し医療や看護の側面から自衛隊を支える自衛官ということですね。
自衛隊看護師とは何かがわかったところで、次の章では自衛隊看護師の仕事内容についてみていきましょう!
2.自衛隊看護師の仕事内容とやりがい
それでは、この章で自衛隊看護師の仕事内容とそのやりがいについてみていきましょう。
自衛隊看護師の主な職場である自衛隊病院での仕事と自衛隊内の衛生科での仕事、2つに分けて書いています。
- 自衛隊病院での仕事とやりがい
- 自衛隊衛生科での仕事とやりがい
自衛隊病院での仕事とやりがいからみていきましょう。
(1)自衛隊病院での仕事とやりがい
自衛隊看護師の主な職場の1つとして自衛隊病院があることは先ほど説明しましたよね。
自衛隊病院とは防衛省によって設置・運営されている、主に自衛隊関係者が利用する病院のことです。
自衛隊隊員が病気になったり怪我をしたりした時に職務に復帰できるまでに回復させるのが本来の自衛隊病院の目的でした。
現在は一部の病院で自衛隊員以外の診療もやっているので、普段は一般の病院とあまり変わりません。
ですが一般の患者の受け入れは限定されており、常に一定数の空き病床を確保するようになっています。
なぜなら、有事の際に負傷者を収容する必要があるた突発的な災害にも対応できる体制にしているからです。
場合によっては自衛隊員の診療を優先したり診療体制を変更したりすることもあり得ます。
このような病院の特性上、ここで働く看護師は突発的な災害時の傷病者の受け入れなどにも対応していかなければなりません。
最近の例でいうと、世田谷区にある自衛隊中央病院はダイアモンドプリンセス号の新型コロナウイルス感染者を受け入れました。
新型コロナウイルスは今でも明確な治療法が確立されていませんが、ダイアモンドプリンセス号のころは今以上に未知のウイルスでしたよね。
世界中の医療関係者がどう扱っていいかわからない中、手探りで対応していたはずです。
自衛隊病院はこういった世界でも前例の少ない感染症の患者も受け入れるため、現場で治療にあたる看護師にも対応力が求められます。
前例のない感染症や自然災害で負傷した方々など、治療の難しい患者のケアも自衛隊看護師の仕事です。
自衛隊病院で働く自衛隊看護師には国民のために医療の最前線で働くという強い信念が必要になるでしょう。
(2)自衛隊衛生科での仕事とやりがい
自衛隊看護師は、有事の際災害現場に派遣されることもあります。
例えば2011年東日本大震災、2016年の熊本地震災害などに自衛隊看護師は派遣され、現場で救護・看護活動にあたりました。
さらに自衛隊看護師は海外に派遣されることもあります。
2006年にはイラクとクウェートでの患者後送に派遣されました。
また昨年はベトナムで行われた『パシフィック・パートナーシップ」というアメリカ海軍主体のイベントにも派遣されています。
このように自衛隊看護師は、国内外問わず災害現場や軍関係の国際交流イベントなどで活躍することもあるのです。
以上が自衛隊看護師の主な職場とやりがいでした。
では、次の章では自衛隊看護師になるメリットについて解説していきますね。
3.自衛隊看護師になるメリット
それではこの章で自衛隊看護師として働くメリットをみていきましょう。
メリットは全部で3つです。
- 特別国家公務員ならではの安定した待遇
- 社会貢献度が高くやりがいが大きい
- 自衛隊退職後の民間転職をサポート
1つずつみていきましょう。
メリット1.特別職国家公務員ならではの安定した待遇
自衛隊看護師になるメリットの1つ目として、特別国家公務員として抜群に安定した待遇があげられます。
自衛隊看護師の給与を含む待遇は民間と比較してかなり恵まれているといえるでしょう。
なぜなら給与の他に各種手当や必ず年2回支給されるボーナスなどがあり、安定した収入が見込めるからです。
例えば任期制自衛官に応募して自衛官候補生として採用された場合の収入をみていきましょう。
自衛官候補生の大卒初任給が198,100円です。
一般的な大卒初任給は約20万なので初任給だけくらべるとさほど差はありませんが、ここから先に違いがでてきます。
自衛官候補生は採用後3ヵ月の研修期間がありますが、この研修を終えた時点で自衛官任用一時金221,000円が支給されるのです。
研修を終えただけで一時金が出るなんて、民間ではなかなかない話ですよね!
さらに自衛隊は各種手当も充実していて、地域手当、航海手当、寒冷地手当などのほか、年2回の期末・勤勉手当もあります。
民間の場合、会社の業績によりボーナス額は変動しますし業績によっては支給されない年もありますよね。
それに比べて自衛隊は業績による変動はなく必ずボーナスが支給されます。
さらに自衛隊員は家賃・光熱費・食費に関しても心配する必要はありません。
駐屯地・基地の宿舎は無料で食事も宿舎で支給され、家賃、光熱費、食費がほとんどかからないからです。
衣服についても制服は貸与なので勿論無料、宿舎内の売店で生活に必要なものはすべて購入できるので不自由なく過ごせるでしょう。
その他にも特別国家公務員の恩恵を受けられる場面は以下のようなものが挙げられます。
- 自衛隊病院にかかれば費用はほとんどかからない
- 割安で保障の生命保険に加入できる
- 共済組合が運営する貯蓄事業で民間銀行より高利率で貯蓄できる
- 福利厚生で宿泊施設に格安で泊まれる
- まとまった休みが取れる
特別国家公務員の待遇がいかに良いかわかりますよね!
自衛隊看護師は任務の特殊性から少し異なる部分があるかもしれませんが、同じ自衛官なので同等の待遇が期待できるはずです。
このような充実した福利厚生を含む好待遇は自衛隊看護師のメリットの1つといえるでしょう。
メリット2.社会貢献度が高くやりがいが大きい
自衛隊看護師のメリットの2つ目は、社会貢献度の高さとやりがいの大きさでしょう。
地震や台風などの災害現場では十分な設備のない仮設診療所での活動となり、看護師にとっても難しい仕事になります。
また自然災害現場はいつ何がおこるかわからないので、常に高い緊張感を維持しなければなりません。
過酷な状況の中でプレッシャーと戦いながらの仕事は決して楽ではないはずですが、やり遂げた際には大きな達成感があるでしょう。
また、時には他国に派遣されてその国の医療支援を行うこともあります。
2003年から2009年まで行われたイラク人道支援では、異国の地イラクで患者搬送や医療支援などを行いました。
世界の平和維持に貢献するスケールの大きい任務にやりがいを感じる人もいるでしょう。
メリット3.自衛隊退職後の民間転職をサポート
自衛隊看護師のメリットの3つ目は、自衛隊退職後民間企業への転職を希望する場合、自衛隊のサポートが受けられることではないでしょうか。
任期制自衛官は20代半ばで退職する人が多いそうで、そのため防衛省は自衛官の再就職サポートを最重要事項の一つとしているそうです。
自衛隊では退職予定である自衛官に対して、再就職に有利になる職業訓練や雇用情報の提供など就職援護を行っています。
以下に挙げたのは自衛隊が取得を支援している資格の一例です。
- ホームヘルパー
- ネイリスト
- ウェブデザイナー
- パソコン
- 電気工事士
再就職支援では上記を含め、就職に有効な50種類以上の資格や技能訓練を実施しているそうです。
自衛隊看護師の場合、専門職なので国家資格と実務経験があれば民間への転職はそこまで難しくないと聞きます。
ですが、これだけ豊富な資格取得を自衛隊が支援してくれるなら思い切ったキャリアチェンジもできるかもしれませんね!
以上が自衛隊看護師の3つのメリットでした。
メリットが大きい自衛隊看護師ですが、ではどのようにしてなれるのでしょうか。
次の章で解説していきますね!
4.自衛隊看護師になるには4つのルートで解説
それではこの章で、自衛隊看護師を目指すルートをみていきましょう。
ルートは大きくわけて4つあります。
- 防衛医科大学看護科に入学する
- 自衛隊に入隊してから准看護師の資格をとる
- 看護師資格取得後自衛隊病院の中途採用を目指す
- 海上自衛隊の技術海曹を目指す
1つずつみていきましょう。
ルート1.防衛医科大学看護科に入学する
18歳以上21歳未満で 高卒(見込含)又は高専3年次修了(見込含)であれば、防衛医科大学看護科を目指すことをおすすめします。
なぜなら、防衛医大看護科を卒業して自衛隊看護師になるのが一番金銭的に恩恵を受けられるからです。
防衛医科大学は医官(医師である自衛隊幹部)や自衛隊看護師を要請するために防衛省によって運営されています。
防衛医科大学の看護科は自衛隊看護師になるための入口ということですね。
そのため感染症看護論、公衆衛生看護学、災害看護論など一般の看護科では学ばない特殊な医療知識と技術も学びます。
卒業後に看護師の国家試験に合格しなければ看護師にはなれませんが、防衛医大卒業生の合格率は14年連続100%とのことです。
それだけ国家試験対策にも力を入れているということなので、学校のカリキュラムにも信頼がおけますね。
この防衛医科大学ですが、なんと入学金や授業料はすべて免除です!
それだけではなく月に10万前後の手当と年2回の賞与が貰えます!
学費を国が負担してくれて手当をもらいながら看護師資格を目指せるなんて、この上ない好待遇ですよね。
このような理由から、自衛隊看護師になるなら防衛医科大学看護科合格を目指すのは賢い選択だと思います。
ただし、受験資格には年齢制限があるので誰でも目指せるわけではありません。
自衛官コースと技官コースがあり、自衛隊コースは18歳以上21歳未満、技官コースは18歳以上24歳未満です。
このルートで自衛隊看護師を目指すなら早めのスタートが必要になることを覚えておきましょう。
ルート2.自衛隊に入隊してから准看護師の資格を取得する
防衛医科大学に応募できる年齢を過ぎてしまった場合も諦める必要はありません。
なぜなら、24歳以上でも自衛隊看護師を目指す方法があるからです。
看護師免許を持っていなくても、まず自衛隊に入隊してから准看護師の資格を目指せる制度がありますよ。
自衛隊にはたくさんの階級が存在し、そのうちの曹という階級を目指す課程で准看護師の資格を取れるかもしれません。
自衛隊の階級を簡単に説明すると、一番下が士、その次が曹、曹の上が尉、その上に佐です。
さらに1つの階級の中も3等、2等、1等…と細かい階級が設定されています。
会社でいうところの係長、課長、部長といった役職のようなものと考えるとわかりやすいかもしれませんね。
一般曹候補生というコースで自衛隊に入隊した場合、入隊後2年9ヵ月の研修を経て選考に受かると3曹へ昇任できます。
曹の階級を目指すとき、自分の能力に合わせて専門知識と技能を学びますが、その過程で准看護師資格取得の機会があります。
(例:海上自衛隊 海士衛生課程及び海曹衛生課程)
ただし希望すれば誰もが准看護師をとれるかというと、そういうわけではありません。
准看護師を取得できるコースを希望する人が多く選考にもれたり適正がないと判断されることもあるからです。
准看護師の資格を取ろうと思って自衛隊に入隊しても、必ずしも目的を達成できない場合もあることは覚えておきましょう。
また自衛隊でとれるのは正看護師ではなく准看護師の資格であることも注意が必要です。
正看護師の資格は自衛隊では取れませんので別の方法で正看護師を目指す必要があります。
どのコースに応募できるかは自衛官募集HPで確認しよう
自衛隊のどのコースに応募できるかは年齢と最終学歴、そして保有資格によって変わります。
自分がどのコースに応募できるかは自衛官募集ホームページで確認することができますよ。
まず自衛隊募集サイトの募集種目ナビに入り、年齢・最終学歴・居住地をそれぞれプルダウンから選んでください。
何かの国家資格を持っていたり、看護師で且つ保健師まはた助産師のどちらかの資格を持っている場合はチェックをいれましょう。
例えば24歳・高卒・東京在住の場合、「自衛隊幹部候補生」・「一般漕候補生」・「自衛官候補生」の3つが選べることがわかります。
自衛隊は高卒、高専卒、大卒、社会人経験者など、幅広い学歴・経歴の人が応募できるのが魅力です。
自分の年齢や学歴でどの自衛隊の役職に応募できるか、是非一度確認してみてください。
ただし33歳を超えると応募できるコースが極端に減るので、年齢制限には注意を払うようにしましょう。
ルート3.看護師資格取得後自衛隊病院の中途採用を目指す
すでに看護師資格を持っている人であれば、自衛隊病院の中途採用に応募するのも1つの方法です。
自衛隊病院ですが、不定期で防衛技官(看護師)を募集することがあります。
合格すれば自衛隊看護師として自衛隊病院で勤務できますが、かなりの狭き門であることは覚悟しておきましょう。
いつも募集があるわけではないし募集がかかったとしてもほんの数名の採用だからです。
さらに口述試験、身体検査などもあるので合格までのハードルは高めと言えるでしょう。
ルート4.海上自衛隊の技術海曹を目指す
すでに看護師資格を持っている人にもう1つお知らせしたいルートがあります。
海上自衛隊の技術海曹という階級を検討してみてはいかがでしょうか?
なぜなら海上自衛隊の技術海曹は、看護師免許をもっていることが採用に優位になる役職だからです。
海上自衛隊には取得が難しい免許や、保有者が少ない免許を持っている人を即戦力として採用する制度があります。
それが技術海曹です。
技術海曹の募集では看護師を含むたくさんの取得の難しい専門資格保有者を求めています。
例えば以下のような資格です。
- 応用情報技術者
- 第2級陸上無線技術士
- 診療放射 線技師
- 理学療法士
- 外国語大学等卒業者(ロシア語、 中国語及び韓国語)
海上自衛隊では看護師資格もこれらに並ぶ募集対象になります。
航空自衛隊にも技術空曹という役職はありますが、残念ながら看護師資格は募集対象に含まれません。
また技術陸曹という役職もあるようですが、令和2年10月現在は技術海曹と技術空曹しか募集を確認できませんでした。
つまり海上自衛隊の技術海曹は、陸上・海上・航空自衛隊のなかで唯一看護師免許を活かして自衛隊に応募できる方法と言えます。
令和2年度の募集要項によると応募資格は21歳以上38歳で、採用時の階級は2等海曹とのことです。
選考には筆記試験(一般教養、作文)と口述試験があり、さらに身体検査まであります。
採用予定は22名と少なく、様々な資格を全て合わせて22名なので看護師免許所有者が採用されるかの断定はできません。
募集要項から推測するにこちらもかなり狭き門になりそうですが、1つの選択肢として覚えておくと良いでしょう。
まとめ
以上が自衛隊看護師についての一連の調査結果でした。
調べてみて、自衛隊看護師をめざすいずれの方法も決して簡単ではないことがわかりました。
社会人から目指すとなるとルートも限られてきますしハードルはかなり高いと言えます。
ですが応募資格を満たす限り可能性がゼロというわけではありません!
なるのは大変ですが国家公務員の好待遇が手に入り、やりがいも大きいなどメリットも多いのが自衛隊看護師です。
看護師として国や国民のために働きたい、という志が高い人にはぜひチャレンジしてほしいと思います。