介護職員初任者研修の費用は一律の金額ではありません。
受け方や受ける場所によって費用に差があります。
中には「介護職に幅をもたせるために受講したい」と思っても、費用がネックになるという方もいるのではないでしょうか。
そこで今回、費用はどれくらいかかるのか、地方によって差があるのか、取得する機関によって費用はどのように違うのかなどをご紹介します。
これから介護職を考える人や、無資格で介護施設勤務中だという人、仕事の幅を広げたいとお考えの人はぜひ参考にご覧ください。
目次
1.介護職員初任者研修とは
「介護職員初任者研修」とはどんな人が受ける資格なのでしょうか。
以下の4つの項目についてまとめてみました。
- どんな資格なの?
- 誰でも受けられるの?
- ヘルパー2級とどう変わった?
- 働きながらも取得可能?
まずはこの資格について詳しくご解説しますね。
(1)どんな資格なの?
「介護職員初任者研修」は、介護職初心者が最初に取得すべきとされる基本の資格といえます。
なぜなら、現場ですぐに活かせる基本的な介護の知識や技術を学べる研修内容だからです。
業界では略して「初任者研修」と呼ばれています。
2013年4月の制度変更前までは「ヘルパー2級」と称されていました。
この資格は、これから介護施設で働くことを目指す人はもちろん、家族の介護に役立てたいと考える人にも向いています。
また、現在介護施設で勤務していて、介護資格を持っていないという方のキャリアアップにもおすすめです。
(2)誰でも受けられるの?
介護職員初任者研修の資格を取得するのに、年齢、学歴、必要な資格、実務経験といった条件はありません。
ビギナー向けの資格ですから、基本的に介護職を目指す人なら誰でも受けることができます。
現在介護職に従事しているけれど無資格なので、キャリアアップの第一段階として資格取得を目指す人に適しています。
また、介護施設で働かなくても、家族の介護を見据えて学びたいという人も受講できる資格です。
ただし、様々な主催団体が開催しているので、居住地によって近くで受けられる場所が多い・少ないの差はあるでしょう。
まずはお近くで受講できる研修がどれくらいあるのか、リサーチしてみることをおすすめします。
(3)ヘルパー2級とどう変わった?
介護職員初任者研修は、以前「ヘルパー2級」と言われていた資格です。
2013年の制度改正により、内容が変更されました。
まず、ヘルパー2級は講座受講終了で資格を取得できていましたが、現在は修了試験を受け、合格しなければ資格を取得できません。
また、以前は施設で30時間以上(実質5日)の実習が必要でしたが、こちらは必須ではなくなっています。
さらに、通信教育時間よりも、実際に通学して学ぶ時間を増やす方向にシフトされました。
認知症患者数の増加に伴い、受講科目に「認知症の理解」という項目が追加されたことも変更点です。
(4)働きながらも取得可能?
介護職員初任者研修は、働きながらでも資格を取得することが可能です。
働きながらの場合は、勤務時間以外で学ぶことになるため通信講座を活用しましょう。
通信講座での受講が可能ですが、すべてのカリキュラムを通信で終了できるわけではありません。
自宅学習に加え、必要時間数のスクーリングによる実技習得も行われます。
授業形態や研修日程は、研修を実施している団体によって様々です。
- 土日(曜日指定)コースの有無
- 短期間集中コース
- オンライン授業との併用
上記のようなコースを開講している機関であれば、勤務日以外の時間を活用したり転職活動期間を利用するということもできますね。
2.受講費用はどれくらいかかるの?
みなさんが一番気になるのが受講費用ではないでしょうか。
特に働きながら資格取得を目指す人は、生活費の中から受講費用まで払えるのかという心配もあるでしょう。
そこで、以下の3点についてまとめてみました。
- 受講費用の目安を知っておきましょう!
- 地方よりも都市部の方が安い?!
- 費用によって学ぶことに何か差があるの?
受講機関選びの参考に、是非ご覧ください。
(1)受講費用の目安を知っておこう!
受講費用は、最安値で20,000円台のものから、最高値で120,000円くらいのものまであります。
この費用感を見て、「こんなに大きな差があるのはなぜ?」と思われる方もいるでしょう。
この差は、開催する機関(団体)の違いや「地域差」が要因となっています。
安い場合はそれなりの研修で高いとしっかり手厚い研修だ、ということではないのでその点は安心してください。
ただし、リーズナブルな研修の場合、授業の振り替えができないなど多少の不便を感じることはあるかもしれません。
主催団体がその価格に設定しているのには理由があるので、そこを見極めてご自身の状況に合った研修を探すことをおすすめします。
(2)地方よりも都市部の方が安い?!
実は、地方よりも都市部の方が費用が安く済む傾向があります。
都市部は開催機関が多いので、価格競争が活発になるからです。
以下の表は、地域別の受講費用の最安値・最高値・平均をまとめたものです。
地域 | 最安値 | 最高値 | 平均 |
---|---|---|---|
北海道・東北 | 39,600円 ※テキスト代込み ※受講終了後3か月以内に介護職に就いた場合、受講料を返還(実質ゼロ) |
121,000円 ※テキスト代込み |
約70,300円 |
関東 | 48,950円 ※テキスト代込み |
121,000円 ※テキスト代込み |
約69,300円 |
近畿 | 29,800円 ※テキスト代込み |
121,000円 ※テキスト代込み |
約65,200円 |
東海 | 37,950円 ※テキスト代込み |
121,000円 ※テキスト代込み |
約62,200円 |
中国・四国 | 70,000円 ※テキスト代込み |
121,000円 ※テキスト代込み |
約93,000円 |
九州・沖縄 | 43,450円 ※テキスト代込み |
121,000円 ※テキスト代込み ※合格後系列に就職でキャッシュバックあり |
約84,000円 |
最高値が全国一律なのは、全国展開をしている大手スクールの金額だからです。
ご覧いただくとわかるように、関東・近畿・東海地方の平均費用が低めな傾向があります。
また関東や関西は開講数が多いため、受講費用が同等でもサポート内容が違うなど、選択肢が豊富な印象です。
(3)費用によって学ぶことに何か差があるの?
介護職員初任者研修の学習内容は、費用によって差があるというようなことはありません。
厚生労働省の指定したカリキュラムを組み込むことになっており、基準をクリアした機関しか開講できないからです。
そのため「安いとカリキュラムが少なく・高いコースはよりたくさんの内容を学ぶ」という違いはありません。
金額に差がでるのはカリキュラムの違いではなく、講座以外の内容の差も影響しているようです。
例えば、大手の通信講座企業であれば振替の授業数が多く、働きながら通いやすくなります。
また、割引キャンペーンを行っている機関もあり、お得な期間を活用するという方法もあります。
このように通いやすさや融通がきく制度などがあると、多少費用が高めになるようです。
受講費用だけで決めてしまわずに、サポート内容や通いやすさ、申し込み時期などを加味した上で、自分に合った機関を選ぶとよいでしょう。
3.受講費用に差がある理由とは
学ぶ内容が同じであっても受講費用は開催機関によって差があることがお解りいただけたと思います。
ここでは、受講費用に差がある理由を詳しく掘り下げてみましょう。
調べてみたところ、以下のような要素によって差が生まれることがわかりました。
- どんな団体が開催しているか
- スクールがどこにあるのか
- オプション的な要素の可否
費用の差が生まれる理由を知っておくと、受講機関を選ぶ際の選択基準にもなります。
では、ひとつずつ詳しくご紹介しますね。
理由1.どんな団体が開催しているか
介護職員初任者研修は、民間団体や公益法人が運営しています。
民間団体の例としては、ニチイ、ベネッセ、三幸福祉カレッジなど全国規模のスクールが有名です。
介護施設が提携して運営しているケースや、ローカルな小規模スクールも存在します。
一方、公的機関が運営している例としては、ハローワークなどが職業支援事業として募集している場合があります。
理由2.スクールの立地
スクールによって、金額差が生まれる要素の1つに立地があります。
一見、都市部の方が費用は高そうなイメージがありませんか?
実は、都市部の方が平均価格帯が安い傾向にあります。
なぜなら、都市部はスクールの数が多く価格競争が起きるからです。
ですので、都市部での受講を検討している場合、できるだけ多くの資料を取り寄せて比較してみるのがおすすめです。
ホームページでキャンペーンをおこなっていないかチェックするのも良いですね。
ただし、通信教育だけでなくスクーリングも必要になるため、通える範囲内であるかどうかは確認しておきましょう。
理由3.授業振替可などのオプションやその他サポートの有無
費用に差が出るもう1つの理由として、授業振替など通いやすい制度を取りいれているかどうか、もあります。
全国規模のスクールは授業時間数が豊富で、授業の振り替えなども行いやすい特徴があります。
働きながら資格取得を目指す人にとっては、資格取得のための計画も立てやすくなり便利ですよね。
このように利便性が良いスクールは「通いやすさ」や「サポートの手厚さ」から、金額が高めな設定の傾向です。
また、スクールが介護施設も運営している場合、資格取得後に系列の施設に就職する前提で安い価格を提供することがあります。
もしくは、系列の介護施設に就職するとキャッシュバックを受けられる、といった条件が提示されているスクールもあります。
資格取得後に就業先も探しているという方は、このようなサービスを活用するのもよいでしょう。
4.介護職員初任者研修にかかる費用を安くする方法は?
では、少しでも安く受講したい場合にはどうすればよいでしょうか。
先ほどお話した「費用に差ができる理由」を参考に、費用を安くするポイントを5つ紹介します。
- 価格競争があるエリアで探す
- 割引やキャンペーンを行っているスクールを探す
- 就業支援サポートをおこなっているスクールを探す
- 公的支援事業を探す
- 給付金制度の活用
1つずつしっかりポイントを押さえていきますね。
ポイント1.価格競争があるエリアで探す
先ほどもご紹介しましたが、都市部は比較的費用が安い傾向があります。
スクールが多いため価格競争が起きるからです。
そのため、リーズナブルなスクールを求めるなら、できるだけ都市部で探してみるのもひとつでしょう。
ただし、あまり遠いと通いにくくなることもあるので、ご自身の通いやすさも加味した上で探してみてくださいね。
ポイント2.割引やキャンペーンを行っているスクールを探す
スクールによっては、時期的な割引キャンペーンを行っています。
これは通年ではなく、他校との差別化を図るための一定期間のキャンペーンであることが多いです。
ホームページや介護職のまとめサイトなどをこまめにチェックしておきましょう。
学割や紹介割引など、通年の割引を行っているスクールもあります。
対象になる方はぜひ活用してくださいね。
ポイント3.就業支援サポートをおこなっているスクールを探す
系列事業所へ就職することでの割引、授業料免除・返還などおこなっているスクールもあります。
これは主催機関が「介護人員の確保」を見越して開講しているためです。
例えば、介護施設が運営しているスクールが開講している講座を探してみましょう。
基本費用が安く設定している場合や、系列事業所に就職すれば授業料免除・一旦授業料はかかるが返還という形式もあります。
資格取得後に資格を生かして就職・転職を考えている方には、よい条件になることもあると思います。
ポイント4.公的支援事業を探す
自治体やハローワークが主催している介護職員初任者研修は、比較的費用が安い傾向にあります。
こちらは支援事業・支援訓練の一環として企画されたものだからです。
ただし、大手のスクールとは違い、振替口座や多様な曜日・時間のスケジューリングなどは望めません。
指定された日時と、予定されたカリキュラムのために時間が空けられる方にはおすすめです。
ポイント5.給付金制度の活用
給付金制度を活用して受講費用を低く抑えるのも1つの方法です。
厚生労働省や都道府県労働局、ハローワーク、自治体といった公的機関から支給される給付金の活用です。
ただし、この給付金は誰でも受給できるわけではなく、一定の条件を満たしている場合のみ支給されます。
給付金には以下のようなものがあります。
- 職業訓練給付金
- 短期訓練受講費
- 自立支援教育訓練給付金制度
- 教育訓練給付制度
対象となる人には是非活用してもらいたいので、次で1つずつ紹介していきますね。
5.受講費用を安く抑えられる給付金制度4つ
受講費用を安く抑えるうえで、役に立つのが給付金制度です。
ここでは厚生労働省や都道府県労働局など、公的機関から支給される給付金制度を紹介します。
給付金には主に、以下の4つがあります。
- 職業訓練給付金
- 短期訓練受講費
- 自立支援教育訓練給付金制度
- 教育訓練給付制度
それぞれ解説します。
制度1.職業訓練受講給付金
この給付金は、雇用保険を受給できない人や、雇用保険の受給が終わった人で求職中の方々に向けて設けられたものです。
月額10万円と、講座に通うための通所手当(上限金額あり)が支給されます。
これに加えて必要性を認めた場合、寄宿手当も支給されます。
条件は以下の通りです。
- 現在ハローワークに求職申込みをしている
- 労働する意思とその能力がある
- 現在雇用保険被保険者または雇用保険受給資格者ではない
- 職業訓練等の支援を行う必要がある人だと認定されている
当てはまるかたは、ぜひハローワークに問い合わせてみてください。
制度2.短期訓練受講費
こちらは、雇用保険の受給資格者などが、就職活動の一環として講座を受けて終了した際の給付金です。
対象講座に対し、支払った費用の2割が返還されます。
2017年1月以降、ハローワークの職業指導によって再就職のため1カ月未満の短期教育訓練を受けた場合が対象です。
支給の下限額はありませんが、上限は10万円に設定されています。
全額還付されるわけではありませんので、手出し費用は準備しておきましょう。
制度3.自立支援教育訓練給付金制度
この制度は、母子家庭・父子家庭に給付される支援金です。
就労にあたって必要な能力開発・向上を支援するため、対象となる教育訓練を受講し終了した際に給付金を受け取ることができます。
ひとり親世帯の母・父の自立支援を行う就業支援事業として、厚生労働省と地方自治体協力のもと行われている制度です。
入学金を含め、授業料など支払った金額の60%が支給されることになっています。
下限は12,001円、上限は修学年数×200,000円、最大800,000円です。
支払は受講終了後に申請となるため、受講費は事前準備が必要となりますのでご注意ください。
制度4.教育訓練給付制度
働く人の能力開発とキャリア形成を支援するため、教育訓練のために受講した講座費用の一部を支給する制度です。
また、45歳未満で専門実践教育訓練を受講する離職者に対し、基本手当が支給されない期間の受講費についても支援があります。
これらは再就職の促進と雇用の安定を目的として、厚生労働省が推進するものです。
一般教育訓練給付金と、特定一般教育訓練給付金があり、一定の受給要件を満たす必要がああるので確認しておきましょう。
項目 | 一般教育訓練給付金 | 特定一般教育訓練給付金 |
---|---|---|
対象者 | 教育訓練制度に指定された講座を受けて初任者研修修了をした場合 | 特定一般教育訓練に指定された講座を受け、初任者研修を受けて修了した場合 |
支給額 | ハローワークから教育訓練支援給付金として、支払った費用の20%相当分が支給 | ハローワークから教育訓練給付金として、支払った費用の40%に相当分が支給 |
上限額 | 10万円まで | 20万円まで ※4,000円以下の場合は支給なし |
詳しい条件や申請方法、厚生労働大臣の指定を受けた教育訓練の講座を知りたい方は、厚生労働省ホームページで確認できます。
6.介護職員初任者研修のスクール探しのコツは?
それでは最後に、スクール探しをする上でどんな点に注意して探したらよいのかご紹介します。
まず大切なのは、自身が何を一番重要視するかを明確にすることです。
費用面を重視するか、サポートを重視するか、急がないのでキャンペーン時期を狙うのかなど、人によって重視する点は様々ですよね。
自分が重要視する点を叶えるスクールを選ぶことが大前提になります。
その上で、スクール探しをする際のコツは以下の4つです。
- できるだけたくさん資料請求する
- インターネットの情報も細かくチェックする
- 就職・転職も含めて検討する
- 授業の振替ができるかどうかをチェック
では、ひとつずつ詳しくご紹介しますね。
コツ1.できるだけたくさん資料請求する
まずは、気になるスクールの資料をできるだけたくさん集めましょう。
あとから「ここが良かった」と後悔しないよう、比較検討するために活用できます。
その中で、自分にとってどんなメリットがあるのかということをチェックしていきましょう。
費用面だけで比べず、スクールの特色なども比較しながら検討することをお忘れなく!
コツ2.インターネットの情報も細かくチェックする
探す時間に余裕がある方は、こまめにインターネットの情報をチェックしましょう。
紙で取り寄せるよりもタイムリーなのがインターネットの情報だからです。
講座開講機関のホームページはもちろん、介護系の情報をまとめたサイトなどもあります。
こまめにネットの情報をチェックしていると、キャンペーンなどお得な情報も逃さずキャッチできますよ。
ネット上の情報をうまく活用してスクール選びを楽にすすめましょう。
コツ3.就職・転職も含めて検討する
介護施設が運営や提携しているスクールに通うのも、費用を抑えることにつながる場合があります。
資格取得後に提携している施設へ就職することを前提に、費用を低くしているスクールがあるからです。
こういったスクールは、資格取得後に就職・転職活動を考えている人にとっては、かなり好条件になり得ます。
就職活動をする手間も省け、資格取得費用も節約できるからです。
施設側もスクールの受講生と介護職員、両方を獲得するわけですから、講座費用を安く設定してもメリットが大きいのでしょう。
資格取得後に新規の就職先も探している方や、今の職場を退職するタイミングで資格取得を考えている方にはおすすめです。
コツ4.授業の振替ができるかどうかをチェック
現在介護施設職員として働きながら資格取得を目指している方は、授業の振り替えがしやすいスクールを選ぶことをおすすめします。
急な用事や体調不良で授業を休まなければならない場面もあるでしょう。
また、勤務後に行く予定だったがシフト変更で急に行けなくなるということもあり得ます。
いくら受講料が安くても、なかなか通えないのでは現実的ではありません。
仕事と講座受講の両立が難しい場面も想定して、融通がききやすいスクールを選ぶのがおすすめです。
まとめ
ここまで介護職員初任者研修の費用についてお話しました。
介護職員初任者研修の費用は、講座を受ける機関によって費用の差がありますが、どこで受けても学習内容は同じです。
安いから「それなりの講座」ということはありません。
高い講座はそれ相応のサービス面の充実度や、通いやすさなどのメリットがあります。
「安さ」だけで選ぶのではなく、自身がどのような学び方をしたいのかに合わせて受講先を決めるようにしましょう。
そのためには、資料やホームページなどを参考に、しっかりリサーチされることをおすすめします。