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介護士から栄養士を目指すには?仕事内容・働きながらの資格取得方法を解説

この記事を読んでいる人は、介護士から栄養士になりたいとお考えですね。

また、「専門的な知識を身につけてキャリアを形成していきたい」と考えている人もいるでしょう。

この記事では、その選択肢の1つとして栄養士について解説します。

栄養士とはどんな仕事をして、どういった職場で働けるのでしょうか。

また、今の仕事をしながら資格が取得できるのかについても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を読み終えたときには、栄養士のなり方から働きながら資格を取得する方法まで理解できているはずです。

1.介護士から目指せる栄養士とは

栄養士とは

栄養士とは、栄養士法によって定められている国家資格の1つです。

「栄養」士という名前の通り、栄養や食事についての専門家として様々な施設や企業などで食事の管理を行うのが主な役割となっています。

ときには、栄養指導を行い、ときには実際に調理を行うなど、その仕事内容は多岐に渡るのが特徴です。

国家資格ということもあり、一度取得すると、生涯にわたって活用できる資格と言えるでしょう。

管理栄養士との違い

栄養士とよく混同してしまいがちな資格に管理栄養士がありますが、これは異なる資格です。

なぜなら、資格が付与される組織が違うためです。

栄養士は、資格取得にあたって試験はなく、都道府県の知事によって資格が付与されます。

一方の管理栄養士は、試験を受けなければならず厚生労働大臣によって資格が付与されるのが特徴です。

そのほかにも、求められる役割も異なります。

例えば、栄養士の場合、栄養バランスのとれた食事の調理や提供、食生活のアドバイスなどが主な役割です。

一方の管理栄養士は、傷病者などへの栄養指導や給食施設における管理業務が主な役割となります。

両者とも食のプロであることに変わりありませんが、異なるものだと認識しておきましょう。

2.福祉施設における栄養士の仕事

ここまで、栄養士について簡単にご紹介しました。

では、実際に働くことになったならどのような仕事をするのか気になる人も多いはずです。

栄養士として働くと、以下2つのような仕事内容がメインになります。

  1. 食事の提供
  2. 栄養ケア・マネジメント

それぞれ見ていきましょう。

仕事内容1.食事の提供

福祉施設における栄養士の仕事の1つが、施設利用者への食事の提供です。

これは、入居施設の場合利用者への食事提供が必要になるためであり、食事を通して施設の利用者に元気になってもらうことを目指します。

例えば、施設利用者の方が食べやすいようにミキサー食を作ったり、きざみ食を作ったりするといったイメージです。

また、季節の食材を使用したりイベントを行ったりすることもあります。

このように、食事をただ提供するだけではなく、利用者が食を楽しめるようにするのが福祉施設における栄養士の仕事の1つです。

仕事内容2.栄養ケア・マネジメント

福祉施設においては、施設利用者の栄養ケアやマネジメント行うこともあります。

利用者それぞれの身体状況を考慮したうえで食事を用意しなければいけません。

例えば、献立を考えたり、利用者にあった食材を発注したりといったことを行います。

栄養ケアを行うことで、少しでも利用者に元気になってもらうのも栄養士に求められる重要な仕事だと言えるでしょう。

3.福祉施設以外で栄養士として活躍できる場所

栄養士が活躍できる場所

ここまでは、栄養士の仕事内容について解説しました。

ここからは、栄養士が活躍できる場所について解説します。

栄養士は福祉施設をはじめとして様々な施設や企業などで求められる職種です。

ここでは、栄養士がどういった場所で働くことができるのか以下の点に分けて解説します。

  1. 福祉関連施設
  2. 病院
  3. 保育園小学校
  4. スポーツ関連施設・チーム
  5. 行政

それぞれについて確認していきましょう。

場所1.福祉関連施設

老人ホームや介護施設といった福祉関連の施設は、栄養士が活躍できる場所となっています。

施設で日常生活を送る人たちの食事提供が必要になります。

具体的な業務は、献立の立案から食材の発注、実際の調理などです。

食べることを楽しんでもらうこと、食事を通して健康になってもらうのが大きな目標となるでしょう。

場所2.病院

福祉関連施設同様、病院も栄養士の存在が欠かせない場所と言えるでしょう。

病院では、入院している患者さんに対して毎日の食事提供を行います。

医師や看護師など様々な職種の人たちとチームを形成して、話し合いを行いながら患者が元気になるように食事の献立を考えたり、調理をしたりします。

また、栄養指導を行い、患者さんが病気や怪我をしにくい体を作れるようにサポートすることもあるでしょう。

怪我や病気からの回復を目指す患者さんに対する食事提供となるので、高い知識やスキルが求められる職場だと言えます。

場所3.保育園

栄養士は保育園で働くこともできます。

保育園によっては、給食の提供を行なっているケースもあり、その際に栄養士が求められるのです。

具体的には献立の立案や調理などを行うのですが、子供によってはアレルギーを持っているケースもあります。

また、幼児食を作ることもあるため、それぞれの状況に応じて献立立案、調理を行うことになるでしょう。

子供たちが健やかに成長するためにも、日々の食事を提供する栄養士の役割は非常に重要です。

場所4.小学校

栄養士の代表的な職場の1つとも言えるのが小学校です。

小学校も、保育園同様給食の提供を行なっており、栄養士の存在は欠かせません。

具体的には、献立立案や調理を始め、生徒に対する食育を行うこともあります。

小学校時代は、子供が大きく成長する時期でもあるので、成長のために適切な栄養を摂取できるように考えなければいけません。

場所5.スポーツ関連施設・チーム

栄養士は、フィットネススタジオのようなスポーツ関連施設やスポーツチームで働くこともできます。

またアスリート個人と契約を結ぶケースもあるでしょう。

スポーツに取り組む人たちは、食を通じた体づくりに取り組みたいと考えるため、栄養士のニーズがあるのです。

スポーツに取り組む目的や競技特性を考えながら食事の指導を行います。

食事指導に関しては、ダイエット目的の人から高い競技成績を残したい人までニーズは幅広いので、活躍できる可能性は大いにあるでしょう。

場所6.行政

栄養士は、地方自治体などの行政で栄養士として働くケースもあります。

行政の場合、市役所や県庁で働くのではなく、保健所や保健センターで働くのが一般的です。

具体的には、住民からの食事や栄養にまつわる様々な相談への対応や地域で行われる栄養指導講座の担当などがあります。

食を通して地域住民に元気になってもらうことが大きな役割です。

4.栄養士として働くってどんな感じ?

ここからは、実際に栄養士として働く際の働き方について解説します。

栄養士として働くことになった場合、働き方は定時勤務のケースもあればシフト制で働くケースもあるでしょう。

組織によって働き方は異なるため、一概に「栄養士は夕方までに仕事が終わります!」とは断言できません。

例えば、企業に所属して働く栄養士であれば各企業の就業時間に応じて勤務します。

一方で、病院や福祉施設で働く栄養士は施設の形態によってはシフト制となり、土日祝日に働くケースも出てくるでしょう。

また、小学校の給食センターで働く栄養士であれば、朝から夕方までなど、固定の時間帯で働くのが一般的です。

働き方は多岐にわたるので、自分にあったものを選ぶことができます。

5.介護士から栄養士になるには?

ここでは、介護士として現在勤務している人が栄養士になるにはどうすればいいのか解説します。

栄養士の資格を取得する場合、以下のような流れになるのが一般的です。

  1. 栄養士養成施設を修了する
  2. 栄養士の資格を申請して資格を取得する
  3. 転職活動を行う

それぞれについて確認していきましょう。

流れ1.養成施設にいく

栄養士は国家資格の1つですが、取得にあたっては試験を受ける必要はありません。

その代わり、栄養士養成施設と呼ばれる学校を修了する必要があります。

他の資格のように独学で勉強し、試験を受けて資格を取得する、といった形は取れないので注意してください。

流れ2.申請をして栄養士の資格を取得する

栄養士養成施設を修了後、資格取得の申請を行ってください。

申請は、自分の住所地を管轄している保健所に書類を提出する形で行います。

申請後、都道府県知事から栄養士の免許が交付され、資格取得です。

流れ3.就職活動を行う

栄養士の資格を取得したら、就職活動を行いましょう。

栄養士の資格を取得するだけで、仕事が見つかるわけではないため、資格取得後の就職活動は必須です。

具体的には、求人サイトで仕事を探してみたりするだけでなく、自分が今働いている介護施設で栄養士として働けないか聞いてみたりするのもいいでしょう。

求人サイトを利用する場合、以下のようなサイトが利用できます。

栄養士が働ける分野は多岐にわたるので、自分にあった企業や施設を探してみてください。

6.栄養士の資格取得を目指せる養成施設

栄養士の資格取得のためには栄養士養成施設を修了する必要があると解説しました。

具体的な養成施設には以下のようなものがあります。

いずれの施設でも終了後には栄養士の資格が取得可能です。

年数 施設概要
4年で修了する施設
  • 4年制大学
3年で修了する施設
  • 3年制短期大学
  • 3年制専門学校
2年で修了する施設
  • 2年制短期大学
  • 2年制専門学校大学、専門学校

栄養士の上位資格である管理栄養士を養成する管理栄養士養成施設を修了しても、栄養士の資格を取得できます。

ちなみに栄養士養成施設と管理栄養士養成施設の違いは、管理栄養士の資格を取得するまでの過程です。

栄養士養成施設を修了した場合、管理栄養士の国家試験の受験資格を得るために1〜3年の実務経験を積まなければいけません。

一方で管理栄養士養成施設を修了すれば実務経験を積まなくても管理栄養士になるための試験が受験できます。

栄養士養成施設では何が学べる?

栄養士養成施設では、主に栄養に関する様々な知識やスキルを学ぶことになります。

ここで学ぶ知識やスキルが、栄養士として活動する際のベースとなるでしょう。

一例としては「栄養指導」「調理実習」「給食管理」「食品加工」といったものが挙げられます。

栄養指導は人の食環境や栄養状態などの様々な情報を分析して評価を行う授業です。

また、調理実習では実際に調理を行い調理方法や包丁の扱い方などを学び、給食管理では実際に給食を作る際の過程を一通り行います。

そのほかにも食品加工では、加工食品について勉強したり、実際に味噌や缶詰を作ったりと、授業内容は多岐にわたるのが特徴です。

7.社会人が栄養士資格を取得するにはどうすればいい

働きながら栄養士になるには

社会人が栄養士資格を取得する場合、「昼に学校に通い夜に仕事をする」か「平日に学校に通い土日に仕事をする」のいずれかのパターンになります。

残念ながら、栄養士養成施設に夜間制や通信制の学校がないためです。

具体的には、先ほど説明した通り4年制大学や3年制短期大学・制専門学校・2年制短期大学・専門学校などに通うことになります。

取得までの年数を考慮すると2年制の短期大学や専門学校に通うのが理想的でしょう。

8.介護士から栄養士になるメリット

ここでは、現在介護士として働いている人が栄養士になるメリットとして以下の点について解説します。

  1. 食の専門家として活動できる
  2. 介護士と比べて安定性がある
  3. 結果が目に見える仕事でやりがいを感じやすい
  4. 産休や育休を経ても復帰しやすい

それぞれについて確認していきましょう。

メリット1.食の専門家として活動できる

栄養士の資格があれば、食の専門家として自信を持って働くことができます。

栄養士養成施設で学んだ知識やスキルがあることで、資格を持っていない人との違いを明白にできるのは大きな強みです。

資格がなくても調理などを行える職場はありますが、栄養士の資格を持っていることで、専門家として周囲の人も頼ってくれるでしょう。

そういったことが「誰でもいいのではなく自分が求められている」と自信をつけさせてくれるはずです。

また、栄養士の上位資格である管理栄養士を目指すこともできるのでキャリアの幅が広がるという特徴もあります。

メリット2.介護士と比べて安定性がある

栄養士として働けば、介護士として働く場合よりも安定性があると言えます。

栄養士は活躍できる場所が多いことに加え、それらの場所がリストラや倒産といったことが起こる可能性の低い場所であるためです。

例えば、学校や病院、行政などはこれから先もなくなることはおそらくないでしょう。

選択肢が多いため、もし1つの職場で働けなくなっても転職することも可能です。

メリット3.結果が目に見える仕事でやりがいを感じやすい

栄養士の仕事は、結果が目に見えてわかるという特徴を持ちます。

作った食事を食べてもらえるかどうか、喜んでもらえるかどうか、はすぐにわかるでしょう。

例えば自分が考えた献立を福祉施設の利用者が全部食べてくれた、美味しいといってくれたら、その日の仕事は大成功だと言えます。

一方で食べ残しが多いと反省が必要になるかもしれません。自分の仕事の成果が目に見えやすいので、やりがいも持ちやすいでしょう。

メリット4.産休や育休を経ても復帰しやすい

栄養士の資格を取っていると産休や育休を終えた後でも職場に復帰しやすと考えられます。

資格所有者を評価してくれる企業や職場は少なくありません。

例えば、飲食店や給食の委託会社などは中途採用の数が多く、資格所有者だと選考時のアピール材料になるでしょう。

一度身につけた食に関する知識やスキルは一生ものなので、ブランクがあったとしても、復帰しやすくなっています。

9.栄養士の平均的な給料目安

栄養士の平均月収

栄養士の平均的な給料は介護士とそれほど大きな違いはありません。

これは、厚生労働省が公表した「令和元年賃金構造基本統計調査」によるもので、栄養士の平均月収は約23万3,000円(平均年齢35.5歳)となっています。

一方で、福祉施設介護員の平均月収は約22万9,000円(平均年齢42.6歳)です。

ただし、平均年齢の低さを考慮すると、介護士よりも栄養士の方が給料はいいと考えることもできます。

また、栄養士の資格を持っていると資格手当がつくケースもあるので、さらに給料がアップするケースもあるでしょう。

10.栄養士が向いている人

栄養士が向いている人の特徴

ここでは、栄養士が向いているのは、どういった資質を持っている人なのか、以下の点について解説します。

  1. コミュニケーション能力がある人
  2. 食に関する専門的な知識を得たい人
  3. 発想力がある人

資格取得自体は、養成施設を修了すれば取得できますが、向き不向きがあるので、自分は向いているのかどうか、考える際の参考にしてみてください。

スキル1.コミュニケーション能力がある人

栄養士として働くうえではコミュニケーション能力は欠かせません。

栄養士は、仕事を通してたくさんの人とコミュニケーションをとることになります。

例えば、福祉施設であれば、職員はもちろん施設利用者の方、さらにはその家族と関わる機会もあるでしょう。

また、栄養指導を行う場合、聞いている人が理解しやすい表現や言葉遣いを心がけなければいけません。

食事を提供することは栄養士の主な役割の1つですが、その背景にはたくさんのコミュニケーションがあることを理解しておきましょう。

スキル2.食に関する専門的な知識を得たい人

栄養士は、何か自分の専門的な分野を持ちたいと考えている人に向いています。

栄養士は食という1つの分野を深く掘り下げていき、専門家として活動するのが大きな役割です。

「今の仕事は誰でもできる仕事だと思う」

「代わりが効く仕事でやる気が出ない」

という人で、何か得意な分野を身に付けたいと考えている人にはぴったりでしょう。

中でも食に興味を持っている人が向いています。

スキル3.発想力がある人

栄養士は発想力が欠かせません

ただ料理を作るだけでなく、食事を提供する人に合わせて料理を作ることが求められます。

例えば、ニンジンが苦手な子供にニンジンを食べてもらうためにはどうすればいいのか考えることもあるでしょう。

また、食が細くなった高齢者でも食べやすい料理はなんなのか、など栄養士に発想力が求められる場面はたくさんあります。

一方で「栄養士は食事を提供すればOK」と考えている人には向いていないでしょう。

まとめ

今回は、介護士として働いている人が栄養士になるにはどうすればいいのか解説しました。

栄養士の資格を得るには、試験は不要ですが養成施設を修了する必要があります。

そのため、介護士として働きながら資格を取得するのであれば、学校に通う時間を確保しなければいけません。

自分の得意分野・専門分野を持ちたい人、誰でもいいではなくあなたがいい、と言ってもらいたい人は、ぜひ栄養士の資格取得を検討してみてください。