コラム

介護士が受ける暴力の実態とは?利用者からの暴力に対処する方法も紹介

「介護士が暴力を受けてるって本当?」

「暴力をふるう利用者にはどう対応すれば良い?」

介護士の中には、利用者からの暴力や暴言に悩む人も少なくありません。

元気に働きたいと考えているにも関わらず、暴力被害を受ける日々は大きなストレスになるでしょう

しかし、施設によっては介護職員が暴力を我慢するよう言われることもあります。

利用者からの暴力に対処し、明るい職場環境を取り戻すにはどうすれば良いのでしょうか

この記事では、介護士が利用者から受ける暴力・暴言の実態と対処法を解説します。

これからも介護士として明るく働けるよう、前向きに行動を起こしましょう。

1.介護士が受ける暴力の実態

暴力を受けた介護士の割合

介護士が利用者から受ける暴力は身近なところにあります。

厚生労働省がオブザーバーとなった調査では、暴言・暴力・セクハラなどハラスメントの発生を把握している事業者が40〜50%ほどいました

同じ調査では「ハラスメントはない」と回答した施設が10%ほどにとどまっていることから、多くの施設でハラスメントが起きていると言えるでしょう。

また、介護士の就職をサポートする介護のお仕事が行ったアンケートでは、98%もの介護士が暴力・暴言の被害を受けた経験を持つことが明らかになりました。

このようなデータから、介護業界において利用者から受ける暴力は日常となっていることが分かります。

介護士の暴力被害は自分だけの責任ではなく、介護業界全体の問題です。

暴力を受けて苦しんでいるのは自分だけではない、という意識を持ち、同じ職場の仲間と協力しながら対策を考えていきましょう

次は、介護業界で起きる具体的な暴力の事例を紹介していきます。

自分が勤務する職場以外の被害実態を知るため、ぜひ参考にしてください。

2.介護業界で起きる暴力の事例

介護士業界の暴力事案の具体例

暴力や暴言の被害を受けた経験を持つ介護士は過半数を超えており、何度も被害に遭う人も少なくありません。

介護業界で実際にあった暴力被害の事例は、以下の通りです。

  • 介助をしようとしたらいきなり噛まれた
  • 声をかけたら殴りかかってきた
  • 身体を支えようとしたら手を振り払われた
  • お風呂に入れようとしたら顔を叩かれた

ちょっとしたことがきっかけになり、暴力被害につながる例はこの他にもたくさんあるのが現状です。

また、暴力以外に、毎日のようにセクハラやパワハラを受けている介護士も少なくありません。

しかし、被害を我慢し続けていると大きなストレスにつながり、精神的な不安から仕事を続けるのも難しくなってしまいます

介護職が受ける身体や言葉の暴力には、職場全体で協力し対策をしっかりと取っていきましょう。

次は、介護士が利用者から暴力を受けてしまう理由を解説します。

なぜ利用者は暴力という手段に出てしまうのか知り、利用者に合った対策を立てましょう。

3.介護士が利用者から暴力を受けがちな理由

介護士が暴力を受ける理由

介護士がハラスメント被害を受ける事例は非常に多いです。

しかし、そもそもなぜ介護士は暴力・暴言のターゲットになりやすいのでしょうか

ここからは、介護士が利用者から暴力を受けがちな理由を以下の通り解説します。

介護士が暴力被害を受ける理由

  1. 利用者と接する時間が長い
  2. 職員を下に見る利用者がいる
  3. 病気が原因となっている

暴力を受ける原因を知り、適切な対策を考えましょう。

理由1.利用者と接する時間が長い

利用者と接する時間が長くなることで、利用者が不機嫌なときに介助する機会も増えてしまいます。

機嫌が良いときの介護であれば暴力を振るわない、という利用者は少なくありません。

ですが長時間一緒にいると利用者が不機嫌なときにも対応することとなり、暴力被害が起きやすくなるのです。

特に、入居施設では1日を通して利用者のケアをしなければいけません。

利用者と過ごす時間が長くなるほど、不機嫌な時間に対応してしまう可能性も上がるでしょう。

理由2.職員を下に見る利用者がいる

利用者の中には、自分はサービスを受ける側だから介護士には何をしても良いと考えている人もいます。

本来、利用者と職員は対等ですが、利用者をお客様として扱い、無茶な要求にも応える施設はたくさんあるでしょう。

言い返さず何でも要求に応えてくれる施設が多いことから、自分の方が偉いと考えてしまう利用者は少なくありません。

特に若いスタッフに対しては、どうせ反抗できないから何をしても許されると考えている高齢者もいます。

職員を1人の人間として尊重できない利用者は、少しでも嫌なことがあると我慢せず暴力に訴えかけてしまうのです。

理由3.病気が原因となっている

利用者が認知症の場合、怒りやイライラを我慢するのが難しくなり暴言や暴力につながりやすいです。

また、長く続く介護生活にストレスを感じ、精神的な落ち込みから暴力をふるう利用者もいます。

病気やメンタル面の不調が原因で暴力が起きている場合、暴力をやめるよう注意しても効果が出ない可能性は高いです。

もちろんケアマネジャーや看護師に相談して必要な治療を行い、対策を立てることはできます。

しかし、病気なので治療が進み暴力が収まるまで時間はかかるでしょう。

以上が、介護士が利用者から暴力を受けやすい理由でした。

利用者からの暴力を減らすには、暴力の原因を探り適切な対策を取る必要があります

暴力を受けやすい環境にいる介護士は、無理をせず少しでも早く対策を考えましょう。

次は、介護士が利用者の暴力に対応する方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。

4.介護士が利用者の暴力に対処する方法

利用者からの暴力は仕方ない、と考える介護士もいますが、ずっと我慢をし続けていると心身が疲弊してしまいます。

そのため、我慢するのではなく状況改善に向け何か行動を起こしましょう

しかし介護士が利用者の暴力を抑えるには、どのように対処すれば良いのでしょうか。

現場で働く介護士が取れる対策は、以下の通りです。

介護士が暴力に対処する方法

  1. 暴力を受けていない職員を真似る
  2. 利用者の家族に相談する
  3. 上司に相談して対策を立てる

自分のできる対処法を試し、今の状況を変えましょう。

方法1.暴力を受けていない職員を真似る

今受けている暴力を少しでも軽くするには、暴力を受けていない職員を真似るのが効果的です。

どんな職員がターゲットになるかは、利用者の性格や相性によって変わります。

そのため、暴力を受ける職員がいる一方で、利用者から嫌われにくく暴力を受けない職員も少なからずいるでしょう。

利用者が暴力をふるうのは、介助中に何か気に触ることがあったからです。

ほとんど暴力を受けない人の行動を真似れば、利用者の期限を損ねにくくなり暴力が減る可能性は高いでしょう。

方法2.利用者の家族に相談する

利用者の家族に暴力について相談することで、解決策が見えてくる可能性もあります。

家族の中には、これまで在宅で介護を行ってきた人も少なくありません。

家庭内ではどんなときに暴力被害が起こっていたか聞けば、利用者が不快な気分になるのを防ぎ被害を減らすことができるはずです。

また、家族から注意してもらうことで、介護士への暴力が落ち着く利用者もいます。

しかし、管理職ではない介護職員が直接家族に会うのは難しい可能性が高いです。

直接会えない場合は上司やケアマネジャーに暴力被害を相談し、家族に伝えてもらうようお願いしましょう。

方法3.上司に相談して対策を立てる

暴力被害を受けた際は、必ず上司に相談して職場全体で対策を立てましょう。

上司は、職員である介護士が快適に働くため職場改善を行うのが仕事です。

暴力をなんとかして欲しい、という気持ちを率直に伝えて改善を求めましょう。

もし利用者からの暴力が止まない場合、管理職なら利用規約を変え暴力を振るう人の施設利用を禁じることも可能です。

自分が我慢すれば良い、と考えるのではなく、上司に悩みをぶつけてください。

以上が、暴力を受けた介護士ができる対策でした。

暴力による精神的なダメージを少しでも軽くするためには、まず誰かに被害を相談することが大切です。

職場だけで対策が取れない場合、暴力被害は労働基準監督署や警察にも相談できるので、自分だけで抱え込まず、他の人の力を借りましょう。

次は、暴力被害で精神的に辛い場合の対処法を解説します。

色んな人に相談したけどやっぱり辛い、というときはぜひ読んでみてください。

5.どうしても精神的に辛い場合は休職や転職を考えて

職場で対策を考えても、なかなか暴力が止まないケースもあります。

担当を変える、複数人で介助する、などできる限りの対策を取っても効果が出ず辛い場合は休職を考えてください

いくらやりがいのある仕事でも、暴力を我慢し続けるのは心身に悪影響です。

これからも介護の仕事を続けるためにも、しっかり休みを取り傷ついた心を癒やしましょう。

また、職場が改善策を出してくれないときや、休職しても精神的に辛いときは、転職も検討してください。

暴力被害は利用者との相性も理由の1つなので、別の職場に行くことで解決できるかもしれません

もうこれ以上働けない、と感じたら、無理をせずもっと自分に合った環境の職場を探しましょう。

まとめ

介護士が利用者から受ける暴力は、業界全体の大きな問題です。

暴力被害を受けた場合は、まずは上司に相談したり、職場で話し合ったりして、利用者に合う対処法を考えましょう。

もし、どうしても暴力が改善されず辛い場合は、仕事を休んだり、仕事を変えたりするのもおすすめです。

ストレスが限界に達する前に、自分の心と身体を守る行動を取りましょう。