「介護予防運動指導員って、どんな資格?」
「介護士からなれるのかな?」
本記事は、こんな疑問をお持ちの人に向けて書いています。
介護予防運動指導員という資格を知っていますか?
あまり聞いたことのないという人がほとんどですよね。
実は介護士のキャリアアップとして、近年需要が高まっている資格なんです。
本記事では、介護予防運動指導員の仕事内容に始まり、具体的な資格の取り方までを丁寧に解説します。
介護未経験の人でも、この記事を読めば資格取得までの流れをはっきりとイメージできるでしょう!
目次
1.介護予防運動指導員ってどんな仕事?
介護予防運動指導員は、高齢者や障害者の運動支援・健康維持をサポートする仕事です。
高齢者には、介護予防のための筋力向上トレーニングや運動プログラムを作成し、運動機能の向上を支援します。
介護の必要な障害者にも同じく、トレーニングや運動指導を通じて、身体機能の向上を図るのが介護予防運動指導員です。
具体的には、利用者の運動能力を測定し、個人に合わせた運動プログラムを作成します。
運動プログラムの例としては、姿勢指導や遊びを交えた運動、マシントレーニングの指導などですね。
実際の現場では、作成したプログラムをもとにマシンの使い方や転倒予防の体操などを教えて、運動指導をしていきます。
また、時には多くの利用者と一緒にゲーム形式の運動をして、楽しみながら身体機能の向上を図ります。
介護予防運動指導員は様々な運動指導を通して、利用者の自立した生活や健康維持を支える仕事です。
東京都健康長寿医療センター研究所が認定する民間資格
介護予防運動指導員は民間資格です。
東京都健康長寿医療センター研究所が認定する資格になります。
東京都健康長寿医療センター研究所は1972年に開設され、以来高齢化社会がもたらす諸問題に取り組んでいるのです。
具体的な研究内容は、高齢者の健康維持や健康長寿・生活の質の向上などになります。
高齢者の健康を第一線で推進している研究施設とも言えるでしょう。
介護予防運動指導員の資格は、当センターが研究で培った介護予防ノウハウを広めるためにできました。
そのため、介護予防運動指導員の資格保持者は、当センターに認定された介護予防指導のプロといえるでしょう。
以上、介護予防運動指導員の仕事内容および資格について説明しました。
内容をまとめると、介護予防運動指導員は、介護予防指導のプロとして高齢者の運動支援をする仕事です。
どんな仕事か分かったところで、次はこの資格を取るメリットを見ていきましょう。
2.介護予防運動指導員になるメリット
介護予防運動指導員の仕事内容は分かったものの、「そもそも資格を取る価値あるの?」と思われますよね。
そんな疑問に答えるべく、介護予防運動指導員になるメリット3つを以下に解説します。
- 長期にわたって最適なケアを提供できる
- 転職に役立つ
- 給与アップを望める
順番に解説していきます。
メリット1.長期にわたって最適なケアを提供できる
1つ目のメリットは、長期にわたって最適なケアを提供できる点です。
「もっと利用者一人一人に合わせたケアを提供したい」
「長期的に利用者に寄り添いたい」
介護の仕事をしていて、こんな風に思ったことはありませんか?
それを可能にするのが介護予防運動指導員の仕事です。
介護職者が介護予防運動指導員になれば、通常の介助に加えて、トレーニング指導などの運動支援や健康維持のサポートを行えます。
具体的には、利用者ごとに最適な介護予防プログラムの作成、プログラムに基づいたトレーニング指導などです。
こうした運動支援や健康維持のサポートは長期にわたるため、短期で効果のでる仕事ではありません。
だからこそ、介護予防運動指導員は、長い視点で利用者に最適なケアを提供できます。
長期にわたって利用者と向き合いたい人には、健康維持を支援する介護予防運動指導員の仕事は大きなメリットといえるでしょう。
メリット2.自らのアピールポイントになる
2つ目のメリットは、自らのアピールポイントになることです。
これから、介護予防運動指導員の需要は増え続け、頼りになる存在として見られる傾向があります。
例えば、近年の日本の高齢者増加に加え、政府が高齢者の自立支援や重度化防止を推進しているなどです。
実際、2018年に厚生労働省が発表した「平成30年度介護報酬改定の主な事項について」の中で自立支援の推進を述べています。
こうした背景から、高齢者の健康維持や自立支援に貢献できる介護予防運動指導員の需要は高まると考えられるでしょう。
資格取得することで、今後の就職や転職活動など働く上で大きなアピールポイントになるはずです。
メリット3.資格手当をもらえる
3つ目のメリットは、資格手当をもらえる点です。
施設にはよりますが、介護予防運動指導員の資格手当を支給している施設があります。
支給額は施設によりますが、相場は月々3,000円以上のようです。
例えば、実際に掲載されている以下の求人を見てみましょう。
大まかな目安が3,000円ということがおわかりいただけるはずです。
毎月の給与アップは一番メリットを実感できる部分ですし、資格取得を検討する上で重要なポイントでしょう。
ただし、前述の通り手当の有無は施設によりますので、自分の働く施設で支給しているかは確認してください。
ここまで、介護予防運動指導員になるメリットをお話しました。
では、実際に介護予防運動指導員になるにはどうしたらいいのか?
その方法を次から解説していきます。
3.介護士から介護予防運動指導員になるには
介護予防運動指導員の仕事内容、メリットはわかりました。
ここからは「どうやって介護予防運動指導員になれるのか分からない!」という疑問にお答えします。
介護予防運動指導員の資格を取る方法は、たったの1つだけです。
「東京都健康長寿医療センター研究所」指定のスクールを受講すれば、資格取得できます。
ただし、スクールの受講には条件があるので、注意してください。
以下の条件いずれかを満たしていれば、受講可能です。
受講条件1 | ホームヘルパー2級 初任者研修修了者で2年以上の実務経験者 |
受講条件2 | 介護職員基礎研修課程修了者 実務者研修修了者 |
受講条件3 | 介護支援専門員の資格保持者 |
受講条件4 | 健康運動指導士等の資格保持者 |
受講条件5 | 医療分野などの国家資格を保持する者 ※下記は該当する国家資格一覧 (医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、准看護師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士、介護福祉士、歯科衛生士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士) |
受講条件は分かったものの、「結局どういう流れで資格取得できるの?」といまいちピンとこないですよね。
次では、未経験から資格取得するまでの流れをお話します。
4.未経験から介護予防運動指導員になるまでの流れ
前述の受講条件をもとに、未経験からの資格取得するための具体的な流れを解説していきます。
初めに、未経験から資格取得するなら「初任者研修修了者で2年以上の実務経験者」を狙いましょう。
資格取得までの流れは、下記の3ステップです。
- 介護職員初任者研修を受講
- 現場経験を2年積む
- 指定の講座を受講
それぞれ詳しく見ていきましょう。
流れ1.介護職員初任者研修を受講
まずは、介護職員初任者研修を受講しましょう。
介護職員初任者研修は介護資格の入門編で、介護の基礎的な知識と技術を学べます。
特に介護職未経験の人にとって、介護の必要知識や介助技術の基本を学べる当資格は、介護現場に出るうえで心強い味方になるでしょう。
また、受講方法も通学か通信を選べるため、個人の状況に合わせて最適な方を選択できるようになるはずです。
合計130時間ほどの勉強を必要としますが、早ければ1ヶ月ほどで取得できるでしょう。
介護予防運動指導員になるうえで必要な資格かつ、未経験者は介護の基礎を学べるので、二重にメリットのある資格といえます。
流れ2.現場経験を2年積む
介護職員初任者研修の受講後は、実際に介護施設等で2年の現場経験を積みましょう。
では、「現場経験を積めるならどこでもいいのか?」というと、そんなことはありません。
下記3つ、またはいずれかの条件を満たしている施設が望ましいでしょう。
- 資格取得支援を掲げている
- 介護職員初任者研修の資格手当がある
- 介護予防運動指導員の資格手当がある
1つ目の資格取得支援は、従業員の資格取得に積極的な施設です。
主な支援内容は、資格取得にかかる費用負担、取得のための独自講座の開催などが挙げられます。
支援内容は施設によりますが、資格取得におけるサポートを期待できるでしょう。
2つ目の介護職員初任者研修の資格手当は、多くの施設で支給しています。
こちらも施設によりますが、手当の相場は3,000〜5,000円のようです。
せっかく受講するのですから、大いに活用しましょう。
3つ目の介護予防運動指導員の資格手当がある施設では、資格取得後にそのまま給与アップを図れます。
転職せずとも給与アップできるので、すぐに資格取得のメリットを得たい人にはオススメです。
もちろん上記の条件は必須ではありません。
ですが、2年間の実務経験を有意義にするうえでも、上記条件を職場選びの基準にしてはいかがでしょうか。
流れ3.東京都健康長寿医療センター指定の講座を受講
介護職員初任者研修を受講し、2年間の実務経験を積んだらスクールを受講しましょう。
東京都健康長寿医療センター研究所が指定する事業者(スクール)の講座を受講するだけです。
指定スクールの受講後、修了試験に合格すれば介護予防運動指導員となります。
修了試験は、あくまで受講内容の確認という位置付けですので、それほど難易度は高くありません。
受講内容をしっかり復習して、試験に臨みましょう。
とはいえ、そもそも受講するにあたって下記のような点が気になりますよね。
どれも、受講するなら知っておきたいものが並んでいます。
- 学習内容はどんなもの?
- 具体的に受講完了にどれくらいかかる?
- 仕事と並行して受けられるの?
- 費用はいくらくらい?
そこでニチイ学館の介護予防運動指導員養成講座を例に、上記の疑問に回答していきます。
学習内容と期間・費用
まず学習内容は、高齢者の筋力トレーニングにおける理論や実習が主です。
その他にも認知症予防や栄養学など、様々な視点から介護予防運動指導員の知識・技術を学べる内容となっています。
次に受講完了の目安は、おおよそ1ヶ月ほどです。
コースは通学のみで、いくつかあるクラスから選ぶ形になります。
クラスごとに開講日時は異なるため、自分の都合と照らし合わせて設定しましょう。
また、仕事と並行して受けられるように、1年間は受講期間を無料延長できるサポートもあります。
最後に費用ですが、ニチイ学館では95,241円(税抜)です。
費用は施設によりけりですが、約9万円前後となります。
分割払いも可能ですので、一括での支払いが厳しい人は分割払いを活用しましょう。
というわけで、ニチイ学館を例にスクールの解説をしました。
以上、未経験から介護予防運動指導員になる方法でした。
ところで、資格取得といえば費用がつきものですよね。
未経験から取得する場合にかかる費用について、次で解説します。
5.介護予防運動指導員の取得費用
ここからは、未経験から介護予防運動指導員になる際にかかる費用をお話します。
以下の表に費用をまとめましたので、ご覧ください。
費用はスクールの受講料だけではないことがわかりますね。
費用項目 | 費用金額 |
---|---|
介護職員初任者研修の受講費用 | 約60,000円 |
指定スクールの受講費 | 約90,000円 |
資格の更新費用(3年ごと) | 3,000円 |
費用合計 | 約150,000円 |
※全て税抜表示
介護職員初任者研修の受講費は、分割払い可能な講座は多くあります。
スクールの受講費と同様、一括払いが厳しい人は活用しましょう。
未経験から資格取得にかかる費用は以上ですので、取得を目指す際はぜひご参考ください。
次は、介護要望運動指導員とよく似た介護予防指導士との違いを解説します。
6.介護予防運動指導員と介護予防指導士との違い
ここまで、介護予防運動指導員について解説してきました。
実は、この資格とよく似た介護予防指導士という資格を知っていますか?
2つの資格は名前も似ているし、資格の位置付けもよく似ています。
一体どのような違いがあるのか、下記に比較表を記載しました。
先に結論を伝えると、介護予防運動士は、介護予防運動指導員よりも取りやすい資格です。
実務経験は不要で、受講期間も3日と短期であり、修了試験もありません。
ただし、資格取得後の指導の幅は、介護予防運動指導員の方が広いといえるでしょう。
3つのメリットでも紹介したように、今後の需要や資格の有用性を活用するなら、介護予防運動指導員の取得をオススメします。
では、表をチェックしてみましょう。
各項目 | 介護予防運動士 | 介護予防運動指導員 |
認定施設 | 日本介護予防協会 | 東京都健康長寿医療センター研究所 |
受講対象者 | 介護予防運動指導員と同様。 ただし、実務経験は不要。 |
前述の通り |
実務経験の必要 | なし | 一部あり |
受講完了期間 | 3日 | 約1ヶ月 |
修了試験 | なし | あり |
受講費用 | 54,000円 | 約90,000円 |
習得知識や技術 | 筋力向上やトレーニングの指導、栄養ケアなど | 左記に加え、トレーニングや介護予防プログラムの作成 |
違いは上記の通りです。
前述の通り、転職やキャリアアップには介護予防運動指導員がオススメといえます。
「2年間の実務経験は待てない!」
「とりあえず介護予防を学びたい!」
と思う人には、介護予防指導士はオススメです。
自分の希望や働き方に合わせて選びましょう。
では、最後に介護予防運動指導員に向いている人についてお話します。
7.介護予防運動指導員に向いている人
最後に、介護予防運動指導員に向いている人について解説します。
資格取得を目指したものの、そもそも自分に適性がなかったら辛いだけですよね。
仕事が嫌になってしまうかもしれません。
まずは自分に適性があるかを確認して、目指すかどうかを決めましょう。
介護予防運動指導員に向いている人は、下記の通りです。
- 献身的な人
- チームワークを大切にできる
- 運動好きである必要はない
順番に解説していきます。
(1)献身的な人
1つ目の適性は、献身的な人です。
介護予防運動指導員の仕事は、利用者の健康維持や介護予防の支援になります。
利用者と信頼関係を気づき、長くに渡ってサポートしていくことが求められるでしょう。
つまり、利用者のことを考え、献身的に動ける人は向いている仕事といえるわけです。
(2)チームワークを大切にできる
2つ目は、チームワークを大切にできる人です。
前述の通り、介護予防運動指導員は利用者との信頼関係が大切になります。
また、トレーニング指導をするうえで、他のスタッフなど多くの人に協力してもらわなければなりません。
人を巻き込むためにも、チームワークを大切にできるかは重要な適性の一つです。
(3)運動好きである必要はない
3つ目は補足ですが、必ずしも運動好きである必要はありません。
もちろん運動指導をするので、運動好きであればより楽しめる部分はあるでしょう。
しかし、介護予防運動指導員の仕事は、利用者の健康維持が目的です。
自分よりも、利用者にこそ楽しんで運動してもらうことが大切になります。
運動好きであることよりも、相手のことを考えて行動できる人、チームワークを大切にできる人こそ向いている仕事です。
まとめ
ここまで、介護予防運動指導員について解説しました。
介護予防運動指導員は、高齢者や障害者の運動・健康維持を支援する仕事です。
政府の発表にもある通り、高齢者や障害者の自立支援および介護の重度化防止は、今後さらに推進されていくでしょう。
それに比例して、自立支援に携わる介護予防運動指導員の需要は、ますます高まっていくと考えられます。
介護予防運動指導員は、未経験からでも取りやすい資格です。
実務経験を積みつつ資格取得を目指せますし、スクールも働きながらの受講が可能となっています。
介護職からのキャリアアップとして、介護予防運動指導員を目指してみてはいかがでしょうか。