髪を切ったりネイルをしたりすることで気分がパッと明るくなった経験、ありますよね。
これは、高齢者や障がい者であっても一緒です。
いくつになってもおしゃれは楽しみたいし、身だしなみに気を遣うことで生活にハリもでます。
今回取り上げるのは、そんなおしゃれを楽しみたい高齢者や障がい者に寄り添う「介護美容師」です。
介護美容師とは、介護施設や個人のお宅など訪問先でサービスを行う美容師のこと。
この介護美容師、やりがいもさることながら将来性がとてもあるって知っていましたか?
開店1年以内には60%が閉店すると言われている美容師業界でも、介護美容師に関してはそこまで競争は激しくありません。
今からなら、利用者に喜んでもらいながら、独立・開業まで狙えることも。
この記事では、介護美容師デビューまでの道のりやデビュー後の働き方について、かなり詳しく解説しています。
これを読み終わった後は、本気で介護美容師を目指そうと思えるはずです。
少しでも興味のある方はぜひ最後まで読んでみてください。
目次
1.介護美容師ってどんな仕事?
まずは、介護美容師の仕事内容や活躍の場について知っていきましょう。
介護美容師とは、介護施設や病院、利用者のご自宅に出張してサービスを提供する美容師のことを言います。
なぜこのようなサービス形態がうまれたかというと、高齢者や障がい者は美容室に行きたくても行けないからです。
美容室に行けなくても、身だしなみを整えたりおしゃれを楽しみたいという要望から
美容師のほうから訪問するスタイルが生まれました。
そのため、介護美容師は「訪問美容師」と呼ばれたりもします。
高齢者や障がい者を相手に仕事をする上で、介護の知識も求められ、中には初任者研修やその他の介護系の研修を受けている人も。
つまり介護美容師とは美容師と介護士の両方を兼ね備えた存在、とも言えます。
福祉美容師と何が違うの?
介護美容師を検索していると、「福祉美容師」という言葉も出てきますが、この2つはほぼ同じだと思ってかまいません。
強いて違いを言うなら、福祉美容師はNPOや社団法人などが主催している「福祉美容師認定」と名のつく講座を受講している、ということでしょうか。
呼び名こそ違えど、介護の知識と技術も身に着けた美容師、という点はどちらも同じです。
では、次の章から介護美容師になるのに必要な資格について見ていきましょう。
2.介護美容師になるのに必要な資格は?
介護美容師になるには、まずは美容師の国家資格が必要になります。
働く場所がどこであっても、美容師として働くには美容師の国家資格が必須だからです。
逆に言うと、美容師の資格さえあれば介護の資格は持っていなくてもできてしまうのが介護美容師。
介護美容師になるために、介護系の資格は必要ないからです。
ただし、高齢者や障がい者を相手に仕事をするので、介護の知識があるにこしたことはありません。
介護の知識や技術はあとからでも取得可能なので、介護美容師として働くなら介護系の資格取得も視野にいれましょう。
①介護未経験であれば初任者研修も視野にいれよう
介護未経験の美容師さんであれば、「介護職員初任者研修」を受講することをおすすめします。
初任者研修は介護職の入口とも言える資格で、全くの未経験から介護の基礎を学ぶには最適な資格だからです。
初任者研修は介護系のスクールで受講でき、2~4ヵ月ほどで取得できます。
費用は5万円台~10万円前後、通信講座とスクーリングを組み合わせることで、働きながらでも十分取得可能です。
また、介護の求人では「初任者研修修了者」を採用条件にしているところが多くあります。
初任者研修は、それだけ知識と技術を持っていることを証明できる資格だということです。
介護美容師として自信を持って働くためにも、初任者研修は視野に入れておきましょう。
②福祉理美容師の認定資格受講で介護知識を身につけるのも1つ
NPO団体が行っている、福祉理美容師認定講座を受けることでも、介護の知識を補えます。
参考までに、主な団体と講座名、費用を表にまとめてみたのでご覧ください。
こちらの資格は介護美容師(福祉美容師)に特化した技術や知識となり、初任者研修のように介護全般を扱うわけではありません。
ですが、団体が発行する認定証がもらえて、介護美容師としての自信につながることを考えると、受講する価値は十分にあります。
団体名 | 研修日数 | 費用 |
NPO全国介護理美容福祉協会(ビューティーライフ) | 4日間 | ¥38,000 |
一般社団法人日本訪問福祉理美容協会(JVBWA) | 1日間 | ¥25,000 |
NPO法人全日本福祉理美容協会 | 2日間 | ¥22,000 |
一般社団法人日本訪問理美容推進協会(JVPA) | 1日間 | ¥25,000 |
介護の知識を短期間で最低限身につけたい、という人にはおすすめです。
ここまでで、介護美容師に必要な資格とそれを補う介護の資格がわかりましたね。
では、次の章から介護美容師がなぜ必要とされているか、その理由と、介護美容師として働くメリットについて解説していきます。
3.介護美容師が必要とされている理由とメリット
前の章では、介護美容師になるために「必要な資格」と、「あったら良い資格」について書きました。
それでは、ここからは介護美容師が今必要とされている理由と、メリットについて説明していきます。
項目は全部で5つです。
- 高齢化が進む日本ではますます需要が見込める
- 高齢者や障がい者のQOL向上に貢献できる
- 介助の手伝いもできスタッフの負担を減らせる
- 時間の不規則なサロンワークと違って自分のペースで働ける
- 介護美容ならではの特殊な技術を身につけられる
1つずつ見ていきましょう。
メリット1.高齢化が進む日本ではますます需要が見込める
介護美容師の需要は高まっており、今後ますます増えると予想されます。
高齢化により、美容室に来店したくでもできない高齢者層が増えてくるからです。
今や4人に1人が65歳以上という時代。
美容師に求められるサービスも高齢者層向けのものに変っていきますし、同時に介護美容師の需要も今以上に増えることが確実です。
また、2025年には団塊の世代が後期高齢者に突入することがわかっています。
今から介護美容師を目指すことは、時代の流れにマッチしていると言えるでしょう。
メリット2.高齢者や障がい者の QOL向上に貢献できる
介護美容師は、社会貢献度が非常に高い仕事と言えます。
高齢者や障がい者のQOL(=Quality Of Life /生活の質)を高める仕事だからです。
髪型を変えたりカラーリングすることで、リフレッシュして明るい気持ちになりますよね?
これは高齢者も障がい者も同じです。
髪が伸びてうっとうしくてもすぐに美容室に行けない利用者にとって、介護美容師に髪を切ってもらうことは大きな気分転換になります。
「今度はネイルもお願いしてみようかな?」
どんな色にしようかと考えるだけで、ワクワクして、生活にハリがでることも想像できますよね。
訪問美容サービスは、変化も刺激も少なくなりがちな介護生活に、1つの楽しみをもたらします。
介護美容師は利用者の精神的満足度を高め、自分らしくいられるようお手伝いする、大事な役割を担っているのです。
メリット3.介助の手伝いもできスタッフの負担を減らせる
介護美容師は、利用者本人への美容サービスだけでなく、介護スタッフやご家族の負担も減らすことができます。
介護の知識や技術があるため、簡単な介助ならお手伝いができるからです。
例えば、初任者研修を取得している介護美容師は、利用者の身体に触れる身体介護ができます。
そのため、美容サービスだけでなく、ベットから体を起こしてあげたりといった、ちょっとした介助もお手伝いできるのです。
美容師が介護士の一部の仕事もできると、介護スタッフやご家族は大変助かりますよね。
このように、利用者本人のみならず、スタッフや家族など周りの人々の役にも立てるのが介護美容師です。
メリット4.時間の不規則なサロンワークと違って自分のペースで働ける
一見華やかに見える美容師も、実は大変キツイ仕事の1つだと言います。
時間も不規則で夜も遅く、お昼もまともに食べられないことも頻繁にあるとか。
そして基本的にずっと立ち仕事なので、肉体的にもしんどいですよね。
「キツイ」、「帰れない」、「給料安い」という「ネガティブ3K職」などと言われることもあるくらいです。
一方、介護美容師の場合、夜遅くまで働くことはほとんどありません。
介護施設や病院での仕事になるため、施設の営業時間内の仕事がほとんどだからです。
早ければ15時くらいに仕事が終わることもあり、長時間拘束はありません。
また、勤務時間や勤務日を選んで働くこともできるため、家事や育児との両立も可能です。
もちろん、1日中ずっと立ちっぱなしということも無し。
介護美容師の方が自分のペースで働けて、心身への負担も少ないのは明らかですね。
メリット5.介護美容ならではの特殊な技術を身につけられる
介護美容師になると、美容室勤務の美容師ができない特殊な技能を身につけることができます。
例えば、「ベットカット」と呼ばれる寝たきりの方をベッドに寝かせたままカットする技術。
サロンワークでは、まずやらない技術です。
それから、すばやくカットを仕上げるスキルも鍛えられます。
高齢者は座姿勢を維持することが難しく、長時間椅子に座り続けるのが辛いため、カットは手短に完了する必要があるからです。
このように、介護美容師になると、介護美容ならではの技術を身につけられ、美容師としての幅が広がるのもメリットと言えます。
こうやって書き出してみると、介護美容師のやりがいやメリットってたくさんあることがわかりますね!
さて、介護美容師になるメリットがわかったところで、今度は具体的な仕事内容に踏み込んでいきましょう。
次の章では介護美容師の1日のスケジュールを書いています。
介護美容師ってこんな働き方なのね!と理解しやすいようにまとめたので是非、読んでみてください。
4.介護美容師の1日のスケジュールと仕事の流れ
介護美容師の1日のスケジュールを見てみましょう。
参考にしたのは、介護美容師歴10年のAさん。
2児のママさんで、お子さんが学校に行っている間に介護美容師として働いています。
Aさんが各場面で気をつけている点についても載せていますので、是非参考にしてください。
前日夜 | 訪問先からのオーダーをもとに、訪問場所・訪問時間、施術メニュー等確認、必要備品準備 |
---|---|
当日 9:00AM | 事前に準備しておいた必要機材を車に詰め込み、出発 ★忘れ物をしても借りられない、取りに戻れないのが訪問美容の厳しいところ。忘れ物がないかはダブルチェック! ★服装は動きやすく、清潔感のあるものを着用 |
9:30 | 訪問先到着、担当者と打ち合わせ、準備 ★ハサミやかみそりは利用者の手が届かないところに |
9:50 | カウンセリング開始 ★本人の意向、介護スタッフの意向両方を聞く ★介護のしやすさ、手入れのしやすさも考慮 |
10:00~10:15 | 1人目のカット ★利用者の負担を考えてカットは手短に15分以内で ★感染症予防のために消毒を徹底 |
11:00 | 寝たきりの患者さんのカット開始 ★カウンセリングではその日の体調なども伺う ★必要あれば介護スタッフにお手伝いを御願いして手早く丁寧に終わらせる ★ベットに養生をするのも技術のひとつ ★切った髪の毛が耳に入らないようにコットンを詰める ★利用者が不安にならないように手順を説明しながら施術 |
11:30 | 後片付け、掃除 ★モップ、粘着式ローラーをつかって落ちている髪の毛を残さず回収 ★ゴミは持ち帰る |
11:50 | 会計、退出 ★施設スタッフと本日の内容の振り返りと次回の訪問日の確認 |
12:00 | 午前中の仕事修了! |
12:00~14:00 | お昼休憩、次の仕事現場への移動 午後は個人のお客様の自宅へ |
14:00 | お客様のご自宅に到着、挨拶、車から荷物をおろし運び込む |
14:10 | 準備開始 ★施術スペースは2畳分くらいあればOK ★切った髪の毛で床が汚れないようにシートを敷く ★持参した備品をつかって簡易的なドレッサーを組み立て ★ハサミやかみそりなどは責任を持って管理 |
14:20 | カウンセリング開始 ★本人とご家族と一緒に髪の長さを決定 ★当日の体調も確認 |
14:30 | 施術開始 ★ご家族に手伝ってもらいながらお客さんを椅子に誘導 ★メガネ、補聴器、杖などを預かる場合は、本人の目の届く場所に保管 置く場所を必ず伝える ★1つの動作ごとに声をかけてお客さんが不安にならないようにする ★手早く丁寧に終わらせる |
14:45 | 後片付け ★掃除機をお借りして掃除、部屋を元通りにする ★床だけでなく、ベッドや洋服にも切った髪の毛がついていないか確認 ★ゴミはすべて持ち帰る |
15:00 | お会計、退出 ★次回の予約希望などを伺う |
15:30 | 本日の売上金を届けに事務所に立ち寄り |
15:40 | 業務終了!お疲れ様でした! |
日によって多少前後しますが、16時までに業務が終了するようなペースで仕事を入れているので、お子さんがいらっしゃるAさんも無理なく働けています。
結婚後、家事・育児と両立したい女性にとっては理想的な働き方ですよね。
では、実際に介護美容師を目指そうと思った時、何から始めればいいのでしょうか。
それを次の章で解説していきますね。
5.介護美容師になるにはどうしたらいい?
この章では、介護美容師になるための具体的な手順を見ていきます。
全部で5ステップです。
- 美容師免許を取得しよう
- 美容師としての実績を積もう
- 介護美容師の仕事に応募しよう
- 将来は独立・開業も目指せる
- 美容師の実績がある人なら今すぐにデビューできる
1つずつ解説していきますね。
①美容師免許を取得しよう
介護美容師として働くには、まずは美容師の免許を取得しましょう。
サロンで働くにしても、訪問美容に従事するにしても、美容師である限り国家資格取得が必須だからです。
国家試験を受けるには、厚生労働大臣が指定した美容師養成施設で2年以上、600時間の学習が必要になります。
まとめると、2~3年の美容学校で学んだあと、国家試験に合格して初めて美容師としてのスタートラインに立てるのです。
通信課程を取り入れれば働きながらの取得も可能
「うわ…2年も学校に通うなんて、働きながらの取得は無理だ…」
そう思って諦めるのはまだ早いですよ!
養成学校には通信課程を設けているところもあり、通信課程とスクーリングを組み合わせれば働きながらの取得も可能だからです。
例えば、「山野美容専門学校」の通信課程では、働きながら美容師免許取得を目指す人がたくさん学んでいます。
通学が必要な科目については夜間コースがあり、日中忙しい人も学べるカリキュラム構成です。
山野美容専門学校の他にも、働きながら免許取得を目指せる専門学校はあるので、自分にあったスクールを探しましょう。
どんな学校がある?費用は?
美容師養成学校の費用は、昼間のコースで200万~270万円、夜間コースで100万~200万円、通信コースで約60万円程です。
以下に、働きながら通える代表的な養成学校と、その通信課程の費用をまとめてみましたのでご覧ください。
日中コースが最大300万円近くかかるのに対して、通信コースはだいぶリーズナブルです。
スクール名 | 所在地 | 通信課程費用 |
山野美容専門学校 | 東京・代々木 | ¥570,000 |
早稲田美容専門学校 | 東京・西早稲田 | ¥570,000 |
小出美容専門学校 | 堺市・大阪市 | ¥650,000 |
ここでは東京と大阪の学校だけ取り上げましたが、通信課程を設けている美容学校は全国にありますので、お住まいの地域でスクールを選べます。
具体的にどんなことを学ぶの?
美容学校のカリキュラムは「学科」と「実習」に分かれます。
国家試験が「筆記」と「実技」にわかれるため、学校のカリキュラムもそれに合わせた構成になっているからです。
通信課程は、通学が必要な科目以外は自宅で学習を進め、定期的にレポート提出が求められます。
自分のペースで学習できるのはいい反面、自己管理ができないと課題が溜まってしまうということも。
通信課程を選んだ場合は、学習予定をしっかり立て、その予定にそって着実にこなしていきましょう。
美容学校で学ぶ科目は以下の通りです。
学科授業 | 実習授業 |
|
|
技術に関しては、練習した人とそうでない人の差がはっきりとあらわれます。
学ぶ内容は一緒でも、技術を向上できるかどうかはその人の努力次第ということです。
その時さぼっても、国家試験に実技試験がある以上、どこかで練習は絶対必要になります。
後回しにせず、1つひとつ確実に身につけていきましょう。
国家試験の内容と難易度は?
国家試験についても以下の通り表にまとめてみました。
合格率ですが、50~90%と、国家試験の中では高めと言えます。
多くの学校が十分に試験対策を行うため、学校で学んだことを着実に身につければそれほど難しくないからです。
とは言え、実技試験では時間内に指定のスタイルを完成させる必要があり、少々プレッシャーがかかります。
日頃から、どんな場面でも焦らず、落ち着いて出来るように練習をしておきましょう。
過去問もネット上に公開されているので、上手く活用して対策してくださいね。
試験時期 | 年2回: ①2月(実技)&3月(筆記) /②8月(実技)&9月(筆記) |
---|---|
受験費 | ¥25,000- |
試験実施場所 | 各都道府県の美容学校や大学 |
試験科目 | 筆記+実技 |
試験内容 | 筆記:皮膚科学、衛星管理技術など 実技:カッティング、ロット巻きなど |
試験時間 | 筆記:100分、実技:指定された技を時間以内に(例:レイヤーカットを20分以内で) |
合格率 | 50%~90% |
参考 | 第42回(令和2年)美容師国家試験受験案内 |
合格率について、もう一つ補足があります。
公益財団法人理容師美容師試験研修センターの発表している合格率をご覧ください。
どの年も1回目の試験の合格率が80~90%であるのに対し、2回目の試験の合格率は50~60%と低いです。
「1回目の試験の方が合格率が良いなら、無理してでもそっちを受験しなきゃ!」
そう思った人、いるのでは?
大丈夫です、その必要はありません。
どちらの難易度も同じだからです。
なぜ、1回目の試験の方が合格率が高いかというと、卒業の集大成として専門学校生がたくさん受験するからです。
美容学校で学んだ専門学校生は、3月の卒業に合わせてその年の1回目の試験、つまり2月と3月に行われる方の国家試験を受けます。
学校としてはより多くの国家資格合格者を輩出したいため、試験対策に力を入れ、学生たちを鍛え上げますよね。
その結果、多くの専門学校生が受験する2,3月の試験は合格率が上がる、というわけです。
もう一度言いますが、両方の試験に難易度の差はありません。
ちゃんと対策していれば、どちらを選んでも合格できるので、自分の都合に合わせて試験日程を選びましょう。
②美容師としての実績を積もう
晴れて美容師の国家試験に合格したら、しばらくは美容師としての実績を積みましょう。
この時点でいきなり介護美容師に応募することはおすすめできません。
なぜなら美容師としてキャリアをつんでいない人は、介護美容師になっても務まらないからです。
そもそも、国家試験に合格しても(美容学校を卒業しても)美容師としてすぐに活躍できるわけではありません。
学校で学ぶのは、どちらかというと国家試験に合格するための内容で、即戦力として働ける知識や技術ではないからです。
そのため、美容学校を卒業したあとは美容室に就職し、そこで修行を積みながらスタイリストを目指すのが一般的。
スタイリストとして顧客の髪を切れるようになるまで3~5年、と言われています。
介護美容師になるなら、まずはスタイリストとしてお客様に施術できるところまでいきましょう。
そして、スタイリストとして一人前になるまでは実績を積むことに集中してください。
まずはそこからです。
③介護美容師の仕事に応募しよう
美容師としてある程度をキャリアを積んだら、いよいよ介護美容師に挑戦しましょう。
いきなり独立・開業は厳しいと思うので、まずは介護美容師を派遣する団体に所属して、仕事を始めるのが現実的です。
正社員を募集しているところもありますし、パート・アルバイト・業務委託など、雇用形態は様々あります。
自分に一番合う働き方で、介護美容師としてのキャリアをスタートさせましょう。
④将来的には独立・開業もできる
介護美容師として実績ができたら、将来的には独立・開業も夢ではありません。
介護美容師の場合、店舗を構える必要が無いので準備資金も少なくすみ、まだまだライバルも少ないからです。
一般的な美容室の開業資金は700~1,000万円程と言われています。
それだけの額を投資すること自体、リスクが伴いますよね。
さらに、競合もひしめきあっています。
一説には、美容室の数はコンビニの数より多いらしく、当然、生き残り争いは熾烈です。
大金をつぎ込んで開業しても、その中で生き残っていけるのはごく一部。
かなり難しい世界と言えます。
一方、介護美容師の場合、極端な話、カットするハサミ類やケープがあれば開業できると言っても過言ではありません。
名刺、チラシ、タオルなどの備品類は多く見積もっても数十万、移動式シャンプー台だって15万円もあれば購入可能です。
車を購入したとしても数百万円、店舗型の美容室をオープンするよりはずっと安く済みます。
そして、介護美容師の数はまだまだ足りていないため、独立してもライバルはまだそれほど多くありません。
特に、地方で開業した場合、高齢者の数に対して訪問美容を提供する団体も少ないので、あなたが先駆者になることもできるでしょう。
⑤美容師の実績がある人なら今すぐにでもデビューできる
すでに美容師として働いている人は、今すぐにでも介護美容師としてデビューできます。
介護経験の有無は問わず、美容師としての実績があれば雇ってくれるところが多いからです。
介護の知識・技術は確かに必要ですが、それはあとからいくらでも補っていけるので心配ありません。
働きながら初任者研修やその他の研修を受講して、身につけていきましょう。
ここまでで、介護美容師になるための道筋がなんとなく見えましたか?
次からは、介護美容師として働き始めた後の働き方について書いていきます。
あと少しなので、ついてきてくださいね!
6.多様な働き方ができる介護美容師
先ほどの章で「介護美容師は独立・開業も可能」と書きましたが、介護美容師は働き方を自分で選べるのが魅力でもあります。
選べる働き方は以下の3つです。
- 企業・団体に属して正社員として働く
- パート・アルバイト・業務委託で働く
- 独立・開業する
それぞれ見ていきましょう。
①企業・団体に所属して正社員として働く
1つ目は、介護美容師を派遣する企業や団体に所属して正社員として働く方法です。
例えば、こちらの企業。
企業名:『Kami Bito』
訪問美容サービスを全国展開している企業で、20~60歳まで、幅広い年齢層の介護美容師を正社員募集しています。
月給は一番安いスタイリストでも18万円、店長・幹部候補だと45万円と、平均的な会社員より高い水準です。
正社員として企業に属して働くメリットには、以下のようなことがあります。
- 会社のお金で研修が受けられる
- 福利厚生の恩恵を受けられる
- 営業は会社がしてくれるので美容の仕事に専念できる
フルタイムで働けて、安定が欲しい人にはいい働き方だと思います。
②パート・バイト・業務委託で働く
2つ目は、パート・アルバイト・業務委託など、時間を限定した働き方です。
先ほどご紹介した『Kami Bito』さんを例にとると、パート・アルバイトの場合、週2日以上、1日3時間から働けます。
お子さんが保育園に行っている午前中だけ働くなどもできるので、子育て世代にはピッタリの働き方ですよね。
また、業務委託の場合は、日単位の働き方が可能です。
1日6~8時間の稼働で日当が12,000円、稼働日を増やせばかなりの額が稼げます。
曜日を選んで働くこともできるので、副業やダブルワークを考えている人におすすめです。
③介護美容師として独立・開業
そして、最後は先ほどもご紹介した通り、独立・開業してしまうという働き方です。
介護美容師の独立・開業のメリットは、以下のことが挙げられます。
- 固定の店舗を持たないのでコストが低く利益が大きい
- やればやった分自分の利益になり収入に上限はない
- 自分のペースで働ける
メリットも大きい独立・開業ですが、難しさもあります。
顧客をつかむには、介護施設や病院に自分で営業する必要があるからです。
企業や団体に所属する場合、仕事は会社が取ってきてくれるので、個人は美容の仕事に専念していられます。
ですが、開業するとなるとそうはいきません。
営業から施術まで、全て自分でやることになります。
まずは会社員として働きながら人脈を広げて、独立しても自分を指名してくれる顧客ができてから独立するのが理想的ですね。
以上、3つが介護美容師の働き方です。
では最後に、介護美容師になるなら知っておいて欲しいことをまとめます。
次の章で見ていきましょう。
7.介護美容師になるなら知っておこう
介護美容師になるなら知っておいて欲しいポイントが3つあります。
- マイカー利用や運転免許を求められることが多い
- 介護施設毎のルールやタイムスケジュールを把握してそれに合わせる
- 独立・開業するなら国からの補助金の対象になることも
1つずつ解説していきますね。
①マイカー利用や運転免許を求められることが多い
介護美容師は、運転免許を持っていることが好ましいと言えます。
仕事に必要な道具を持ち歩くのに、車が必要だからです。
ときには移動式シャンプー台など、かさばるものも訪問先に持参するので、車は必須になります。
また、介護施設や個人のご自宅など、公共の乗り物で通うには不便なところに立地していることも多く、車があると便利です。
このように、介護美容師の仕事では車を使用する頻度が高いため、働き始める前に運転免許を取得しておくことをおすすめします。
また、独立するならほぼ間違いなく車は必要です。
独立・開業を考えている人で車を持っていない場合、のちのち必要になるであろうことは覚えておいてくださいね。
②介護施設毎のルールやタイムスケジュールを把握してそれに合わせる
介護美容師は、各施設のルールや1日のスケジュールを把握して、それに合わせた行動をすることが求められます。
例えば、午前中に入浴タイムを設けている施設の場合、入浴時間を削らせないためにも施術は手早く終わらせなければなりません。
また、ある施設では昼食は全員揃って食べるため、誰か一人でも遅れると全員の昼食がおくれ、施設全体のスケジュールが狂います。
このように、介護美容師は施設毎のルールの把握と、それに合わせて自分の仕事を調整する能力が必須です。
施設スタッフとのコミュニケーションを密にして、事前に情報を把握した上で施術に入りましょう。
③独立・開業するなら国や自治体からの補助金の対象になることも
最後に、介護美容師として独立を考えている人には朗報を一つ。
介護サービス事業で発生する費用は、国や自治体からの助成金の対象です。
適用には条件があるので、絶対適用できるとは言い切れませんが、調べてみる価値はあると思います。
助成金はいくつか種類ありますが、ここでは代表的なものを2つご紹介しておきます。
介護福祉機器等助成金
介護労働者の負担を軽減するために新たに介護福祉機器を購入する際に、導入費用の2分の1(上限300万)を国が支給してくれる制度です。
肉体的に厳しい介護職において、便利な機器を導入することで職員の負担が減り、離職率が低下するなら、購入資金は国が出しますよ、ということですね。
購入した機器がちゃんと効果を発揮した、ということを証明しないと補助金が支給されない仕組みです。
そのため、事前に運用計画を作成し提出するなど、支給までにかなりのプロセスを要することも事実。
手間はかかりますが、返金義務もありませんし、適用できそうな購入備品があれば申請してみるのも一つの手です。
雇用管理制度等助成金
こちらも同じく介護職員の離職率を低下させるのが目的の助成金で、「雇用管理制度」に関して発生した費用が対象です。
雇用管理制度という言葉がわかりにくいので、具体例を挙げてみますね。
- 職員増員の為にホームページを作成
- 離職率を下げるために深夜手当を導入
- 職員の能力開発のために研修費用を会社で負担
つまり、介護労働者の増進・離職率低下のために導入した人事制度全般に対して、国が援助してくれるということです。
金額は、制度導入に要した費用の2分の1(上限100万)とされていますが、個別の設定もあるので注意しておきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
介護美容師になるまでの全課程が、なんとなく理解してもらえたのではないでしょうか。
働きながら美容師の資格を取ることは、ハードルは低くありませんが、決して不可能でもありません。
人生の数年間を自分のキャリアアップのために費やすことは、十分に価値があるはずです。
ぜひ、あなたの技術で多くの高齢者や障がい者を笑顔にしてあげてください。