勤務歴9年 41歳女性 Sさん
――実際に養護教諭として働いてみてどうですか。
昔は感染症予防の指導や、栄養に関するお話をすることが多かったのですが、今では「メンタル面」での指導・サポートが多いですね。
いじめ、不登校、性交渉、家庭内問題――などから端を発する子どもの悩みに寄り添ってあげるようなイメージでしょうか。
時間拘束が少ない、という点ではナースの時よりも断然働きやすいです。夕方遅くなることはあっても、夜遅くまでの残業や夜勤はありませんから。
――なるほど。
かといって、それだけで養護教諭を目指すのは危険かなとも思います。自治体によっては20倍や30倍の倍率がありますし、取るべき資格も大変なので。私が受けたときは、後から調べると17倍だったそうです。
時間拘束がゆるい、という憧れはもちろんあっても良いですが、それ以外にもモチベーションが無いと厳しいでしょう。
――Sさんの場合は何だったんでしょうか?
私はまず第一にキャリアアップ。
それから自分の場合は、学校で働きたかったなという憧れがあったんですよね。10代の時は結局先生ではなく看護の専門に進むことになったのですが、それでもやっぱり学校で働きたいなという想いがあったので、医療のキャリアとの合わせ技で今の仕事・職場を選びました。
ご存知の通り、養護教諭にナースの資格は必要ありませんが、それでもあった方が良いと思うので。
――転職活動の際でのアピールポイントにもなりますね。
そうかもしれませんね。全然考えてなかったです(笑)
もっと面接のときに強調して伝えておけばよかったです。
――それでは、これから養護教諭を目指す後輩に一言アドバイスをお願いします!
もし「資格が無い」、「そこまで沢山取るのは億劫だ」という人でも安心してください。養護教諭でなくとも私の周りには子供のケアをしている人はたくさんいます。道筋は違うかもしれませんが、目的は同じです。
子どもが好き、人の話を聞いてあげるのが得意、という人は養護教諭は向いていると思います。少子化が進んで学校は減っていますが、それでもなんとか就職してしまえば学校は働きやすい現場です。頑張ってください!
「このまま看護師として働くのがベストなのかな?」
「もっと子供と関わる仕事がしてみたい」
など、看護師としてのキャリアを積む中で、子供のケアに携わる養護教諭の仕事に興味を持つ人は少なくありません。
この記事では、看護師が養護教諭を目指す方法やポイントを詳しく解説していきます。
気になる学費や、資格取得にかかる時間、養護教諭になる難易度についても紹介するのでぜひ仕事選びの参考にしてください。
目次
1.看護師が養護教諭を目指すまでの流れ
看護師の資格と、養護教諭の資格は別のものですので、看護師資格の有無に関わらず養護教諭を目指すことはできます。
ただし、看護師資格を持っている人は文部科学省指定の教育機関で2年間学ぶことで、養護教諭免許状を得ることが可能です。
ここからは看護師師資格を活かした免許状取得までのルートと、1から養護教育について学ぶルートをそれぞれ解説していきます。
1−1.看護師資格を生かして養護教育を学ぶコース
看護師資格を持っている場合、指定の教育機関で2年間学べば、養護教諭免許状を取得できます。
看護師から養護教諭を目指す流れは、以下の通りです。
- 文科省指定の学校で勉強する
- 養護教諭免許を取得する
- 教員採用試験に合格する
それぞれ確認していきましょう。
流れ1.文科省指定の学校で勉強する
看護師免許を持っている人は、指定教員養成機関の養護教諭特別別科という課程で2年間学ぶことで養護教諭免許を取得できます。
指定教員養成機関の一覧は、以下のページから確認可能です。
指定教員養成機関なら、2年間の勉強で大卒相当の養護教諭免許状一種を取得できます。
ただし、指定教員養成機関の数は全国的に少なく、募集人数も限られているため入学までの勉強は難しいものになるでしょう。
流れ2.養護教諭免許を取得する
規定の勉強が終わり、指定教員養成機関を卒業できたら養護教諭免許状一種を取得できます。
この免許状は、養護教諭として働くだけの知識を得たという証明であり、一生使える資格です。
流れ3.教員採用試験に合格する
養護教諭免許を取得したら、各自治体の教員採用試験を受験しましょう。
例年、教員採用試験は7月〜9月に行われます。
教員として必要な知識だけでなく、一般教養、専門教養、論作文、面接の対策も必要になるので、遅くとも1年前には準備を始めてください。
国公立の学校の養護教諭を目指さない場合は、私立学校の採用試験を受けることになります。
私立学校の養護教諭は教員採用試験の受験が不要なので簡単に思われがちですが、独自に試験を実施しているところも少なくありません。
また、毎年採用があるとも限らないので、狭き門であることは公立学校と同じでしょう。
もし試験で不採用になってしまった場合は、講師(養護助教諭)として学校で働くこともできます。
ただし講師の採用人数にも制限があるので、かなりの勉強が必要なことに変わりはありません。
1−2.養護教諭課程で一から勉強するコース
看護師資格を持っていても、教育分野について1から学びたいという人は少なくありません。
看護師資格を持っていても教育分野について学びたい人は、看護師資格を持っていない人と同じコースで免許状を取得しましょう。
養護教諭課程で1から勉強する流れは、以下の通りです。
- 養護教諭課程のある学校で勉強
- 養護教諭免許を取得する
- 教員採用試験に合格する
それぞれのポイントを確認していきましょう。
流れ1.養護教諭課程のある学校で勉強
養護教諭になるには、養護教諭課程を修了する必要があります。
そのため、まずは養護教諭課程のある大学・短大・専門学校などに合格して勉強しなければいけません。
大学の場合は4年、短大・専門学校の場合は、2年間養護教諭としての専門知識を学びます。
学費は国立大学などの場合でも1年間で80万円ほど、私立大学の場合入学金を含め初年度の学費が150万円ほどになるケースも少なくありません。
学費を抑えるなら、国公立大学の受験をおすすめしますが、住んでいるエリアなども考慮に入れて無理のない学校生活を送りましょう。
流れ2.養護教諭免許を取得する
規定の単位を取り終えて学校を修了したら、養護教諭免許状を取得できます。
大学を卒業した人は一種免許、短大・専門学校を卒業した人は二種免許が取得可能です。
さらに、大学に加え大学院を修了した人は、専修免許をもらうことができます。
一種、二種、専修と名前に違いがありますが、職務上の差はないので安心してください。
流れ3.教員採用試験に合格する
養護教諭免許を取得した後は、公立学校、私立学校の採用試験を受けて働き始めましょう。
採用の倍率は10倍を超えることもあり、公立でも私立でも難関なので在学中からしっかりと対策を立てておく必要があります。
以上が、看護師から養護教諭になる流れでした。
養護教諭になるまでには、2年以上の勉強、教員採用試験という大きな2つの壁を乗り越える必要があります。
中でも難しいのは、自治体によっては30倍近くにもなる教員採用試験に通過することでしょう。
しかし看護師資格を持っている人なら、教員採用試験を有利に進められるケースも多いです。
次は、看護師資格が養護教諭としての就職にどう活きるかを解説していきます。
2.看護師資格があれば養護教諭を目指す上でも優位に!
看護師資格と養護教諭の資格は別のものですが、看護師資格が有利に働くケースは非常に多いです。
例えば大阪では、看護師免許を持つ人に一次試験で10点の加点があります。
また加点制度のない自治体でも、看護師は保健に関する詳しい知識を持っているとみなされるので面接で有利になる可能性は非常に高いです。
また、私立学校によっては、養護教諭採用の求人情報に「看護師資格がある人が望ましい」と書かれているケースも少なくありません。
非常に競争率の高い養護教諭の採用試験ですが、看護師としての経験を上手く活かせば成功率はぐっと上がるでしょう。
しかし、時に10倍以上になる採用試験に不安を感じる人は少なくありません。
本当に看護師としてのキャリアをストップしてまで養護教諭を目指すべきなのか、悩む人も多いでしょう。
そこで次は、本当に養護教諭を目指すべきなのはどんな人なのか、解説していきます。
保健の先生になりたいという気持ちはあるけれど不安、という方はぜひ参考にしてください。
3.看護師から養護教諭になるのが向いている人
教員採用試験の難しさ、養護教諭免許取得までの時間の長さなどがあり、実際に養護教諭になるまでの道のりは厳しいものです。
また、すでに看護師の資格を持っているなら看護師として転職するほうが採用確率は高いでしょう。
しかしそれでも、養護教諭になるための勉強を始めるべきなのはどんな人なのでしょうか。
ここからは、養護教諭を目指すべき人の特徴について解説します。
自分にはどんな仕事が合っているのか、しっかり考えてから判断をしましょう。
3−1.学校で働きたいという強い意志がある人
保健の先生(養護教諭)になり、学校で働きたいという強い気持ちを持つ人は、養護教諭を目指すべきでしょう。
保健の先生になることができれば、困っている生徒を直接助けることもできますし、いろんな子供と話すチャンスも得られます。
例えば学生時代、保健の先生に助けられたことがある人などは、自分も同じように誰かを助けられる存在になりたいと感じるはずです。
学校で保健の先生としていろんな生徒を助けたい、という強い気持ちがあるなら、難しい勉強や採用試験にも挑めるでしょう。
3−2.公務員を目指している人
安定した給与を得るため、公務員を目指している人も養護教諭の資格取得がおすすめです。
公務員になれば、福利厚生などの手当も厚く、夜勤も基本的にないため長期的なキャリアを築くことができます。
もちろん、看護師のままでも県立・私立の病院に勤めることで公務員として働くことは可能です。
しかし、子供が好きで、学校に興味があるから公務員になりたいという人は看護の資格が活かせる養護教諭の仕事が向いているでしょう。
3−3.何事も受け入れられる人
養護教諭になるにあたって最も大切なのは、何事も受け入れられる性格であることです。
養護教諭として働き始めれば、子供の話をしっかり聞くスキルが必要になります。
要領を得ない話であっても子供の話を聞き、理解しようとする姿勢が不可欠なので、すぐ自分の意見を言いたがる人には向いていません。
また、養護教諭になるまでの勉強や採用は非常に難易度が高いため、資格を取得してもすぐに働けない可能性があります。
しかしそんな時、自分の足りなかったところを見直し受け入れられる人は保健の先生として子どもたちの心の支えになれるはずです。
以上が、養護教諭を目指すのに向いている人でした。
養護教諭としての仕事には、大きなやりがいを感じる人が多いですが実際に目指すとなると難関です。
そのため、養護教諭になる以外の方法で、学校で勤務したり、子どもたちと関わる方法はないか考えている人もいるでしょう。
そこで次は、養護教諭以外で学校や子供に関わる方法について解説していきます。
4.養護教諭は難しいけれど学校で働きたい人は?
養護教諭になるまでの道のりには厳しいものがあるため、「養護教諭以外で子供と関わることはできないか」と考える人もいるはずです。
今までの経験を生かして子供や学生と関わりたい人は、看護師資格のみで勤務ができる養護学校、私立大学、小規模な大学の保健室求人を探しましょう。
求人数は少ないですが、運よく見つかれば養護教諭の免許を持っていなくても子供や学生のケアに携わることができます。
もし、どうしても小中学校、高校で働くことにこだわりたいという場合、学校事務の仕事を始めるのがおすすめです。
学校事務では看護系の経験を活かすことは難しいですが、子どもたちやその親との関わりもあるので子供好きの人に向いています。
また、学校以外の場所でも良いから子供と関わりたい、という人は小児科のある病院に転職する、保育園看護師を目指すなどの方法もあります。
現在、保育園の数が増加していることが影響し、看護師のニーズは特に高まっているので、近隣の保育園で求人が出ていないか調べてみましょう。
まとめ
養護教諭になるには、看護師資格は必須ではありません。
しかし、養護教諭になるための勉強をして、教員採用試験に通過するのはかなり高いハードルと言えるでしょう。
採用の倍率も各自治体で非常に高いため、絶対に養護教諭になりたいという気持ちがなければ、途中でくじけてしまう可能性が高いです。
子供と健康のケアを通じて関わりたいという人は、他の資格なども検討しながら、自分に合うキャリアを選びましょう。