コラム

精神科の看護師は楽?役割・待遇・メリットやデメリットから徹底検証!

近年、精神科の看護師は需要が高まっており、精神科への転職を希望する看護師も増えています。

精神科の看護師は他の看護師よりも楽なイメージがあるようですが、実際のところどうなのでしょうか?

この記事では、精神科の看護師は本当に楽なのかについて徹底検証します。

その役割・仕事内容・環境・待遇・メリットやデメリットなど、あらゆる角度から見ていきましょう。

精神科看護師の全体像を把握することで、あなたに向いているかどうかも判断できるようになります。

精神科の看護師に興味のある人は、ぜひ参考にしてください。

精神科で働くなら「看護のお仕事」

1.精神科看護師の役割

精神科の看護師の役割

精神科は目には見えない心の病を扱うという点で、他の診療科とは大きく異なります。

心を患っている患者に寄り添い、患者が自立してその人らしい生活が送れるように支援するのが、精神科の看護師の役割です。

一般的な診療科目での治療といえば、投薬や注射、点滴などの医療処置が中心になります。

しかし精神科では、看護師と患者のコミュニケーションを通じて得られる信頼関係が、患者の心を解きほぐしていく治療薬なのです。

病室でのちょっとした声かけや挨拶、食事のときの会話など、全てが治療に大きく関わるでしょう。

精神科を訪れる人には、心の病から社会との関りを持てなくなった人もいます。

そんな人たちが再び社会生活を送れるよう根気強くサポートするのが、精神科看護師の役割です。

精神科では、看護師はとても重要な存在だと言えるでしょう。

以上が精神科看護師の役割についてでした。

次は、精神科看護師の仕事内容を紹介します。

2.精神科看護師の仕事内容5つ

精神科の看護師の仕事内容

前項では、精神科看護師の役割についてお話しました。

次に、精神科看護師の具体的な仕事内容を解説します。

精神科看護師の仕事内容は下の5つです。

  1. 精神面をサポート
  2. 患者に代わって病状を判断して医師に伝える
  3. 身体介助や生活介助
  4. 与薬・注射・点滴
  5. レクリエーション

では、順に説明していきます。

(1)精神面をサポート

精神科看護師としての重要な仕事に、患者の精神面のサポートがあります。

なぜなら、精神科は他の診療科と違って、点滴や注射が毎日あるわけではありません。

診察も数日に1回程度なので、薬や診察による治療が占める割合はとても小さいのです。

そのため、最も身近である看護師からの、精神面のサポートはとても重要になります。

精神科の患者が抱える悩みは人それぞれで、病状も個別性の高いものです。

例えば、人間関係の悩みを抱えている患者と、進学や就職についての悩みを抱えている患者では、かける言葉が異なるでしょう。

1人ひとりの悩みに寄り添い、マンツーマンで精神面をサポートすることは、精神科看護師の大切な仕事だと言えます。

(2)患者に代わって病状を判断して医師に伝える

精神科の患者は自分自身の病状を把握しづらく、他人に伝えるのが難しい場合が多くあります。

そんな患者に代わって病状を判断し、正しく医師に伝えるのも精神科看護師の仕事です。

例えば言葉数が不自然に多くなった、または少なくなった場合、患者の心の中で何かが起きているのかも知れません。

食事の量やトイレの回数はもちろん、歩き方、目の動きなどの日常動作にも細心の注意を払い、少しでも異常を感じたら医師に伝えます

その結果、医師の判断でCTや血液検査をするなど、必要に応じて次の段階へ進むのです。

患者の最も近い存在である看護師が、患者の状態を注意深く観察し、医師に伝えるのは重要な仕事だと言えるでしょう。

(3)身体介助や生活介助

入浴やトイレへの誘導、洗髪、髭剃り、ときには買い物の代行なども、精神科看護師の仕事です。

症状によっては、セルフケアがうまくできない患者が多いのが精神科の特徴だと言えます。

また、内科や外科の合併症状がある患者に、ケアが必要な場合もあるでしょう。

様々なケアを行うことは、看護師と患者との信頼関係構築にも大切です。

また、入浴時に体の傷を発見するといった場合もあるため、常に注意深くケアにあたる必要があると言えます。

(4)与薬・注射・点滴

医師や薬剤師と連携して、与薬・注射・点滴による治療を行っていくのも、精神科看護師の大切な仕事の1つです。

精神科の患者には、自分が精神疾患であると認識しておらず、薬や注射、点滴などを拒む人が多くいます。

精神科看護師は患者に精神疾患であることを伝え、薬の必要性を理解してもらわなくてはなりません。

そのために必要なのは、患者との信頼関係だと言えます。

「この看護師の言うことなら信用できる」と思ってもらえたら、薬も受け入れてくれるでしょう。

受け入れが難しい場合は、「今はまだ与薬は無理です」と医師に伝えることもあります。

精神科看護師は患者と信頼関係を築き、医師や薬剤師と連携して、投薬や注射による治療を行っていくのです。

(5)レクリエーション

レクリエーションに取り組むことも、精神科看護師の仕事の1つです。

なぜなら、レクリエーションには以下のような効果があります。

  • ストレスの解消
  • 運動不足解消
  • 落ち着きを持つ
  • 自信をつける

レクリエーションとしては、例えば塗り絵や裁縫などの創作、間違い探し、オセロやかるたなど、様々なゲームが考えられますね。

レクリエーションを通して、なかなか部屋から出てこない患者を呼び出し、交流を図るきっかけにもできるでしょう。

ここまでが精神科看護師の仕事内容でした。

次は、精神科看護師の給料についてお話します。

3.精神科看護師の給料

精神科の看護師の平均月収

精神科看護師の仕事内容について、お分かりいただけたでしょうか。

次に、精神科の看護師の給料について解説します。

ここでは、月収と手当に分けて見ていきましょう。

  1. 月収
  2. 手当

順番に見ていきましょう。

(1)月収

下の表は、求人サイトをもとにした精神科看護師の平気月収と、日本看護協会の調査から得られた一般看護師の平均月収を比較したものです。

どちらも、250,000円前後~300,000円前後で大差はないことがわかります。

精神科看護師の平均月収 250,000円~300,000円
一般看護師の平均月収 265,331円~322,111円

一般看護師に比べて、精神科の方が少し給料が低い傾向です。

精神科は残業が少ないため、給料も多少低くなっていると考えられます。

(2)手当

資格手当は一般的な看護師と同じです。

正看護師と准看護師では正看護師の方が高くなっています。

さらに精神科看護師の場合は、患者対応に対する危険手当がつくこともあるでしょう。

危険手当の金額はおおむね10,000円程度ですが、出ない場合もあるので注意してください。

また、精神科看護師には、精神科認定看護師などの資格があります。

5,000円程度の手当が出る病院もあるので、確認しましょう。

というわけで、精神科看護師の給料についてお話しました。

次は、精神科看護師のタイムスケジュールを紹介します。

4.精神科看護師のタイムスケジュール

精神看護師の給料は、一般的な看護師と大きな違いはありませんでした。

次に、精神科看護師の一日のタイムスケジュールを紹介します。

日勤と夜勤に分けて見ていきましょう。

  1. 日勤のタイムスケジュール
  2. 夜勤のタイムスケジュール

それぞれのポイントもあわせて紹介するので、参考にしてください。

(1)日勤のタイムスケジュール

下記は、日勤のタイムスケジュールの一例になります。

8:00 引継ぎ
前日の様子・夜勤時の様子などの報告を受ける
9:00 患者のケア
下着交換・体温・血圧測定・口腔ケア・回診・与薬など
11:30 昼食介助
昼食の介助や見守り
12:00 休憩
1時間交代で休憩を取る
13:00 患者のケア
アセスメント・コミュニケーション・下着交換など
15:00 おやつ
15時にはデイルームに集合しておやつをとる
15:30 記録
16:00 下着交換
16:30 引継ぎ
朝~夕方までの様子を夜勤に報告する
17:00 業務終了

日勤のポイント

  • 日勤で最も緊張するのは昼食時で、窒息が起きやすいため注意が必要
  • 午後はレクリエーションを行う病院も多く、レクリエーションを通して患者の状態を観察する
  • 午後には入浴介助が入る日もある

(2)夜勤のタイムスケジュール

次に、夜勤のタイムスケジュールの一例を紹介します。

16:30 引継ぎ
朝~夕方までの様子の報告を受ける
17:00 与薬準備・採血準備
夕食時の薬の準備・翌朝採血の患者がいないか確認
18:00 夕食
夕食の介助や見守り
19:00 休憩
45分の休憩を交代でとる
20:00 就寝前の患者ケア
下着交換・トイレ誘導・眠前薬の内服援助など
21:00 消灯
翌日の与薬準備・記録
23:00 巡視
23時~2時間おきに患者の部屋を巡視する
2:00 仮眠
2時間の仮眠をとる
6:00 点灯・下着交換
デールームの点灯など患者の起床準備
7:00 朝食
朝食介助・見守り
8:00 引継ぎ
前日の様子・夜勤時の様子などを報告
9:00 終業

夜勤のポイント

  • 巡視時は患者がしっかり眠れているか確認する
  • 自殺予防のため、それぞれの部屋の巡回時刻を日によって変えるなど工夫している
  • トイレも自殺場所として選ばれやすいので確認が必要

ここまでが精神科看護師のタイムスケジュールでした。

タイムスケジュールをもとに、自分が働くイメージをしてみてください。

次は、精神科看護師のメリットについて解説します。

5.精神科看護師のメリット4つ

看護師が精神科で働くメリット

精神科の看護師タイムスケジュールを紹介しましたが、イメージできたでしょうか?

次に、精神科看護師のメリットを見ていきましょう。

精神科看護師のメリットには、下記4つがあります。

  1. 残業が少ない
  2. 肉体労働が少ない
  3. 人間関係のストレスが少ない
  4. 人の生死に立ち会う場面は少ない

では、順番に見ていきましょう。

メリット1.残業が少ない

1つ目のメリットは、残業が少ないという点です。

この点は、精神科看護師が楽だと言われる理由の1つと言えるでしょう。

そもそも看護師の仕事で残業が多くなるのは、手術後の患者や急性期の患者を看る必要がある場合です。

例えば外科だと急性期の患者が多く、緊急手術が必要になる場面もあるため、残業が多くなります。

それに対して、精神科の看護師の主な仕事は患者の見守りや管理です。

じっくりと構えてする仕事が多いため残業は少なくなります。

精神科の看護師は、よほどのことがない限り残業をすることがありません。

メリット2.肉体労働が少ない

一般看護師に比べて、精神科看護師は肉体労働が少ないと言えます。

精神科には精神を患った人が入院しているため、身体的には自立していることがほとんどだからです。

一般看護師には、患者の身体介護が負担になって腰を傷める人が多くいます。

その点では、肉体労働の少ない精神科の看護師は楽だと言えるでしょう。

しかし、認知症の人や身体が不自由な患者もいるため、全てに当てはまるわけではありません。

そうは言っても全体の仕事量から考えると、精神科の看護師は肉体労働が少ないと言えるでしょう。

メリット3.人間関係のストレスが少ない

精神科の看護師は、人間関係のストレスが少ないと言われています。

精神科は人の心のケアを行う科目であるため、看護師には精神的に成熟した落ち着きのある人が多いからです。

年齢的にも比較的年配の人が多いので、人間関係の摩擦は少ないのが特徴でしょう。

また、精神科は職員の男女比が同じくらいになっています。

男ばかりや女ばかりの職場では、どうしても摩擦が多いものです。

男女比が同じである点も、人間関係のストレスが少ない要因になっていると言えます。

人間関係のストレスで悩む人が多いことを考えると、精神科看護師は魅力的と言えるでしょう。

メリット4.人の生死に立ち会う場面は少ない

人の生死に立ち会う場面が少ないことも、精神科看護師のメリットと言えます。

多くの場合、精神的な病は命に直接かかわる病気ではないからです。

例え看護師でも、人の生死に立ち会うことはかなりの緊張感をともない、大きなストレスとなるでしょう。

そういった意味で、精神科の看護師は比較的ストレスが少ないと言えます。

以上の4つが精神科看護師のメリットでした。

しかし、メリットがあればデメリットもあるのです。

次は、精神科看護師のデメリット2つをお話します。

6.精神科看護師の気になるデメリット

看護師が精神科で働くデメリット

精神科の看護師には、様々なメリットがあると分かりました。

次に、精神科看護師のデメリットについてお話します。

気になるデメリットは以下の2つです。

  1. 精神的に疲れてしまう
  2. 患者による暴力のリスクがある

では、1つずつ内容を確認していきましょう。

デメリット1.精神的に疲れてしまう

精神科の看護師として勤めていると、次第に精神的に疲れてしまうというデメリットがあります。

精神科看護師の最も大切な仕事は、心を病んだ人に寄り添って、精神面でサポートすることです。

しかし、精神疾患は慢性化しやすく、サポートを尽くしてもなかなか成果が出ないこともあります。

よほど安定した強い精神力を持っていないと、看護師自身が疲れてしまうというデメリットがあるのです。

デメリット2.患者による暴力のリスクがある

精神科看護師には、患者の暴力に合う危険性があります。

統合失調症の患者が妄想から暴力行為に及んだり、認知症の患者が暴力を振るったりする場合が考えられるからです。

また、双極性障害の人が躁状態で入院してきた場合も、暴力行為に及ぶ可能性があるでしょう。

多くの精神科では、そうした場面では2人以上の男性が対応するようになっています。

そのため、大きな危険に直面する可能性は低いと言えます。

しかし、絶対に安全とは言い切れないので、そのようなデメリットがあることは理解しておきましょう。

7.精神科看護師が向いている人の特徴4つ

精神科看護師のメリット・デメリットについて、理解いただけたでしょうか。

ここからは、精神科看護師にはどんな人が向いているのかを見ていきましょう。

精神科看護師には、下記4つの特徴がある人に向いています。

  1. 精神面や心理学に興味がある
  2. コミュニケーション力が高い
  3. 観察力がある
  4. 根気よく患者に向き合える

それでは順に見ていきましょう。

特徴1.精神面や心理学に興味がある

精神科の看護師には心理学に興味を持って勉強してきた人が多くいます。

一般の看護師だった人が人の心理面に興味を持って資格を取り、精神科へ転職して来ることもよくあるのです。

精神科の看護師は人の内面に深く関わっていきます。

精神科看護師は人の内面や心の動きに興味のある人に向いていると言えるでしょう。

特徴2.コミュニケーション力が高い

精神科の看護師には、高いコミュニケーション力を持った人が向いています。

精神を病んでいる患者の気持ちを解きほぐし、信頼関係を築くのは精神科看護師の大切な仕事です。

精神科の患者には自分が病気だという認識のない人も多いため、精神疾患であることを受け入れ、薬を飲んでもらうだけでも一筋縄ではいきません。

例えば、何かに悩んでいるような患者がいても、本人から話し出すまでは、気づかないふりをしている方が良い場合もあります。

無理やり聞き出そうとすると余計に心を閉ざしてしまうかも知れないからです。

そんな患者の心を少しずつ解きほぐすようなコミュニケーション力を持った人には、精神科看護師が向いているでしょう。

特徴3.観察力がある

精神科の患者にとって、自分の病状を他人に正確に話すのは、非常に難しいことです。

そんな患者のちょっとした表情や動きなどから病状を察することのできるような観察力を持った人は、精神科の看護師に向いているでしょう。

表情や動きだけではありません。

例えば、精神科の薬は便秘を招くことも多いため、排せつの回数は薬の副作用をチェックする上で重要なポイントになるのです。

便秘が続いていても言葉や態度に表さず、体調が急変してしまうまで我慢する患者もいます。

そのような異変にいち早く気付ける観察力を持った人は、精神科の看護師に向いていると言えるでしょう。

特徴4.根気強く患者に向き合える

どんな患者にも根気強く向き合える心を持った人は、精神科の看護師に向いています。

精神科には暴言を吐いたり、取り乱す患者もいます。

どんな言葉をかけても聞いてもらえず、暴言を浴びせかけられる状態が続くこともあるでしょう。

そんな状況にあっても常に冷静に、しかも根気強く患者に向き合えるタフな心の持ち主は、精神科の看護師に向いていると言えます。

まとめ

この記事では、精神科の看護師の役割や仕事内容、メリット・デメリットなどについてお話してきました。

精神科の看護師は一般の看護師と比べて楽なのでしょうか?

この記事から見えてきた、一般看護師よりも楽と言える点は以下になります。

  1. 残業が少ない
  2. 肉体労働が少ない
  3. 人間関係のストレスが少ない

現在残業が多くて悩んでいる人や、肉体労働がきつい人、人間関係に悩んでいる人などは、精神科看護師の仕事に転職すると楽になるかも知れませんね。

ただし、精神科の看護師には下のような特性が必要です。

  1. 人の心を根気強くサポートする精神力
  2. 患者の心を解きほぐすコミュニケーション力
  3. 小さな変化も見逃さない観察力

これらを考えあわせて、あなたが今後進む道を決めていってくださいね。

この記事があなたの将来にとって参考になれば幸いです。

精神科で働くなら「看護のお仕事」