「理学療法士として働いてみたい」
介護士として働いている中で、そのように思った経験がある人もいますよね。
理学療法士は、利用者の運動機能回復を目的とした、治療やリハビリなどのサポートをする職業です。
そして、理学療法士になるには、国家資格を取得する必要があります。
また、学校に通う必要があるため、資格取得には時間がかかります。
介護士が日々忙しく働く中で理学療法士を目指すことは難しい、と感じる人も多いのではないでしょうか?
しかし、安心してください。
介護士から理学療法士を目指すことはできます。
資格取得までの流れをしっかり把握し、ポイントを押さえておけば、働きながらでも理学療法士になれますよ。
目次
1.そもそも理学療法士とは?再確認しておこう
まずは、理学療法士について再確認しましょう。
よく混同されがちな職業として作業療法士があるため、違いも含めて説明します。
間違った認識でいた場合には、いざ資格を取得してから
「やりたいサポートができなかった」
となってしまう可能性もあるので、改めて確認してくださいね。
理学療法士の仕事内容
それでは、理学療法士の仕事内容を確認しましょう。
理学療法士は、怪我や病気などで、歩く、立つ、座る、などの基本的な運動機能や動作が不自由になった人に対して、機能回復のサポートをします。
主な仕事内容を確認してください。
- マッサージ
- 電気刺激治療
- 温熱治療
- 歩行訓練
- 車椅子の訓練
次に、作業療法士についても見ていきましょう。
作業療法士との違いは?
作業療法士は理学療法士と同じく、機能回復をサポートする職業です。
しかし、理学療法士とはサポートの仕方が違い、作業を通して身体や精神面の回復を目指します。
作業療法士の具体的な仕事内容を見てみましょう。
- 軽スポーツやレクリエーションによるリハビリ
- 食事やトイレなどの動作訓練
- 物品・道具などの操作練習
- 手芸や園芸などの手先を使う動作練習
- 地域活動への参加
- 火の元や貴重品などの管理練習
- コミュニケーション練習
- 交通機関の利用練習
(作業療法士に関する詳しい記事はこちら)
ここまでは、理学療法士の仕事内容と、作業療法士との違いについてお話しました。
次の項目では、介護士から理学療法士になることで、どのようなサポートができるようになるのかをお話します。
2.介護士から理学療法士なるとできることが増える
理学療法士になると、介護士のときにはできなかったサポートができるようになります。
例えば、介護士として働いている中で、利用者の衰えていく機能を維持させたり、回復させたりできれば…と感じた経験はありませんか?
理学療法士の資格を取得し、専門的な知識と技術を身に付ければ、これまで以上に利用者に手を差し伸べることができます。
具体的にどのようなサポートができるようになるのか、3つの項目に分けました。
- 利用者のADLの向上をサポートできる
- 寝たきりや閉じこもりとなった人まで手が届く
- 障がい者にも対応できる技術が身につく
それぞれ見ていきましょう。
(1)利用者のADLの向上をサポートできる
まず、理学療法士は利用者のADLの向上をサポートできます。
ADLとは、Activity of Daily Livingの頭文字をとった言葉で、日常生活動作のことです。
健康管理や身体機能の維持・増進のために、寄り添った介護として理学療法が役に立ちます。
例えば、老化によって歩くことが困難になっていく利用者をただ見守ることしかできない、ということにもどかしさを覚えたことはありませんか?
理学療法士になれば、歩行訓練やマッサージなどを行い、利用者の身体機能を維持したり、回復させたりすることができるようになります。
(2)寝たきりや閉じこもりとなった人まで手が届く
理学療法士は、寝たきりになり、閉じこもり状態となってしまった人にもサポートできる知識や技術があります。
例えば、老化によって寝たきりになってしまった人がいます。
寝たきりになり、自分では起き上がることさえできないと、気持ちがふさぎ込んでしまう人もいるでしょう。
そんな状態でも、理学療法士が治療やリハビリをすることによって、自力で座れるようになったり、さらには立ち上がれるようになる人もいるのです。
具体的な治療方法は、以下のようなものがあります。
治療方法 | 内容 |
運動療法 |
|
温熱療法 |
|
電気刺激療法 |
|
身体機能が回復すれば、窓から景色を眺めたり、車椅子で外の空気を吸いに行ったりできるようになるかもしれません。
寝たきりから、ひとつひとつできることが増えていく中で、利用者を前向きな気持ちにすることができるでしょう。
(3)障がい者にも対応できる技術が身につく
理学療法士は、障がいのある人たちを支援するのも仕事のひとつです。
理学療法士の知識と技術があれば、障がい者の身体の機能回復をサポートし、社会復帰を目標としたリハビリを提案することができます。
子供から大人、高齢者まで、様々な境遇によって体が不自由になった人たちのADL向上を促すことができるのが、理学療法士なのです。
とてもやりがいのある仕事だと思いませんか?
以上が、介護士から理学療法士になることで、できるようになるサポートのお話です。
次の項目では、介護士から理学療法士になる流れを確認します。
3.【流れを解説】介護士から理学療法士になるには
前の項目では、介護士から理学療法士になることでできることが増える、というお話をしました。
では、実際に介護士から理学療法士になるには、どのようなステップを踏んでいくことになるのでしょうか。
- 大学・短大・専門学校に通う
- 国家試験を受験する
- 合格したら理学療法士として働く
3つの流れをそれぞれ説明します。
流れ1.大学・短大・専門学校に通う
まず最初は、必要な知識や技術を学ぶために、大学・短大・専門学校に通う必要があります。
理学療法士になるために必要な知識や技術はとても多く、学校に通う期間は3年以上です。
資格取得までの道のりは簡単ではありません。
しかし、必要な知識や技術を学ぶことで、サポートの仕方など、自分の目指すものが明確に判断できるようになります。
例えば、老化や怪我によって自分で歩くことが困難になってしまった人がいたとします。
知識がなければ、身体に負担がかからない筋力の動かし方はわかりませんよね。
また、どのようなことに注意をしながら歩行をすればいいのか、などの的確なアドバイスができません。
理学療法士になったら、ひとりひとりの状況に合わせたサポートをすることができます。
そのために必要な知識や技術を学べるのが学校です。
高度な知識と技術を身に着けて、目の前の利用者に最善のケアができる理学療法士を目指しましょう。
学校ごとの学費の目安
理学療法士を目指すために通う学校は、大学・短大・専門学校があります。
それぞれ、どのくらいの学費がかかるのか、目安を表にしているので参考にしてください。
学校の種類 | 学費の目安 |
大学(4年制) | 約5,400,000~8,000,000円 |
短期大学(3年制) | 約4,050,000~6,000,000円 |
専門学校(4年制) | 約4,000,000~7,000,000円 |
専門学校(3年制) | 約3,450,000~5,100,000円 |
学校の種類により、通う年数や学費には差があります。
例えば、学費を抑えつつ短期間で資格取得を目指す場合には、3年制の専門学校を選択すると良いでしょう。
流れ2.国家試験を受験する
学校で知識や技術を学んだら、次は理学療法士の国家試験を受験します。
在学中に国家試験対策をしながら合格を目指すのが一般的です。
国家試験は、理学療法士として必要な知識や技術を計る内容のため、専門性の高い出題内容となっています。
試験内容は以下の2つです。
- 筆記試験
- 口述試験及び実技試験
学校で学んだ内容を習得し、しっかり勉強をしてから臨めば、難易度は決して高いものではありません。
参考までに、2015年から2020年の合格率を紹介します。
年 | 合格率 |
2015年 | 82.7% |
2016年 | 74.1% |
2017年 | 90.3% |
2018年 | 81.4% |
2019年 | 85.8% |
2020年 | 86.4% |
過去6年間の合格率を見ると、一番低かったのは2016年の74.1%です。
その年を除けば、毎年8割以上の人が合格しています。
学校で学んだことをしっかり身に付け、試験に向けて勉強をすれば、合格は難しくないでしょう。
流れ3.合格したら理学療法士として働く
国家試験に合格したら、晴れて理学療法士として働くことができます。
理学療法士になれば、自分が思い描く仕事や、利用者に対してより最適なケアができるようになるでしょう。
ここまで、理学療法士を目指す大まかな流れとなります。
介護士から理学療法士を目指す人は、働きながら資格を取得したいと考えている人も多いでしょう。
しかし、働きながら学校に通って資格を取得するという流れが大変そうだと感じた人もいるのではないでしょうか?
そういう人は、次の項目をしっかりチェックしてください。
働きながら理学療法士を目指す人に準備しておいてほしいポイントをまとめています。
4.仕事を辞めたくない!働きながら理学療法士になるには
前の項目では、介護士から理学療法士になる流れを解説しました。
この項目では、働きながら理学療法士になるにはどのような準備をしておくとよいのかを見ていきましょう。
社会人として働きながら資格取得を目指す場合、仕事を辞めるかどうか、悩みますよね。
仕事を辞めるというリスクにためらい、資格取得への一歩を踏み出せない人もいるでしょう。
確かに、仕事を辞めて資格取得だけに専念する方が時間にも余裕ができて、楽かもしれません。
しかし、仕事を辞めると、その間は収入が0になるので、生活への不安が大きくなりますよね。
そのため、働きながら資格を取得出来たら、と考える人も多いでしょう。
介護士から理学療法士になるには、必ずしも仕事を辞める必要はありません。
3つのポイントを押さえて、しっかり準備をしておけば、働きながら資格を取得することが可能です。
- 学校は夜間の部をしているところを選ぶ
- スケジュールに合うかを確認する
- 学費は問題がないかも知っておく
仕事を辞めることにためらいがある人は、検討してください。
ポイント1.学校は夜間の部をしているところを選ぶ
まず、1つ目のポイントは、夜間に受講できる学校を探すことです。
働きながら資格を取得するということは、勤務時間外に学校に通わなくてはいけません。
そのため、スケジュール的に忙しく、体力が必要となりますが、介護士として働きながら学校に通うことができます。
夜間の部は、通う期間は3~4年です。
また、詳細な時間は学校により違いがありますが、平日の16:00~22:00くらいの時間で開講されています。
実際に自分が通える範囲の学校のスケジュールを調べてみると良いでしょう。
ポイント2.スケジュールに合うかを確認する
続いてのポイントは、スケジュールに合うかを確認することです。
学校の受講時間と自分の働く職場のシフト時間を照らし合わせて、時間が被らない学校を探しましょう。
夜間の部の場合でも、臨床実習のカリキュラムは昼間に設定されている場合が多いです。
そして、授業は基本的に平日に行われます。
臨床実習の期間は土日に上手にシフトを組んだり、平日のシフトを調整したり、昼間に時間を確保できるかという点も、しっかり確認しておきましょう。
ポイント3.学費は問題がないかも知っておく
最後のポイントは、学費が払えるかどうかを把握しておくことです。
学校に通う場合には、学費がかかりますよね。
学費は基本的に、年次ごとに一括払いをすることになります。
夜間の部で学校に通うと、学費はどれくらいかかるか知っていますか?
例えば専門学校だと、入学から卒業までに約400万円程度かかります。
さらに別途、以下の費用もかかるので、覚えておきましょう。
- 教科書代
- 教材代
- 実習着
- 実習時の交通費・宿泊費
- 通学時の交通費
仕事を辞めて学校に通う場合はもちろん、働きながら通う場合でも、ある程度の貯蓄がなければ払えませんよね。
そのため、学費を捻出できるかどうかをしっかり把握することは大切です。
学校によっては分割払いに対応していたり、勤労学生控除により所得税が免除されたりということもあります。
学費について、詳細に把握しておきたい人は、分割払いや勤労学生控除についても調べておくと良いでしょう。
以上が、働きながら理学療法士を目指す際に確認しておきたいポイントです。
次の項目では、実際に理学療法士の資格を取得したら、どのような場所で働くことができるのかを説明します。
5.理学療法士になると活躍の場が広がる
理学療法士が活躍できる場は、以下のように活躍の場が広がります。
- 病院
- 診療所
- 介護老人保健施設
- 通所リハビリステーション
- 身体障がい者療養施設
- 身体障がい者福祉センター
- 児童福祉施設
- 地域包括支援センター
- その他、スポーツチームのトレーナーとして
介護士の場合、職場は介護施設になりますが、理学療法士になると、他の分野で働くという選択肢も増えていきます。
理学療法士としての知識や技術を身に付け、働く中で、今までは気付かなかったキャリアプランが見つかるかもしれませんよ。
6.介護士から理学療法士になると給与はどうなる?
前の項目では、理学療法士の活躍の場についてお話しました。
この項目では、理学療法士の給与についてお話します。
介護士から理学療法士になることで、給与の変化はどれくらいあるのかを比較してみましょう。
この表のデータは、求人サイトから情報を集めて算出したものとなっています。
職種 | 平均給与 | 手当など |
理学療法士 | 255,000~340,000円 | 賞与/残業手当/皆勤手当/昇給 など |
介護士 | 191,250~229,450円 | 賞与/夜勤手当/資格手当/残業手当/皆勤手当/勤続手当/昇給 など |
数字をパッと見ただけでも、理学療法士の方が給与が高いことがわかりますよね。
それぞれ平均給与に幅があるのは、賞与や手当、昇給などで差が発生するためです。
基本給や手当などは、それぞれの職場ごとに違いがあるため、細かな情報を知りたい人は、実際に求人情報を調べてみてください。
ここまで、仕事内容や資格の取得方法、給与などについて見てきました。
理学療法士についての知識が深まったところで、次は知っておくと参考になる情報をQ&A形式で説明します。
【参考】理学療法士に関する気になるQ&A
記事を読んだことで、理学療法士についての知識が深まってきたと思います。
ここでは、理学療法士に関する疑問について見ていきます。
参考になる情報を3つのQ&Aにまとめました。
- どの学校を選んだら良い?
- 就職先はどのように選べばいい?
- 試験日はどこに書いてある?
それぞれお話していきます。
Q1.どの学校を選んだら良い?
理学療法士になるには、大学・短大・専門学校のいずれかに通う必要があります。
あなたならどの学校に通いますか?
メリットやデメリットを把握して、自分にとって最適な学校を選びましょう。
学校 | メリット | デメリット |
大学 |
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短大 |
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|
専門学校 |
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もし、働きながら極力学費を抑え、最短で理学療法士の資格を取得したいと思っているなら、3年制の専門学校が向いています。
Q2.就職先はどのように選べば良い?
理学療法士になったら、就職先の選択肢は介護現場だけではありません。
- 医療施設
- 福祉施設
- 地域包括支援センター
- スポーツ分野
例えば、医療施設では、手術後や治療後に身体機能を順調に回復させるためのサポートなどをします。
また、スポーツチームのトレーナーとして働くことも可能です。
もちろん、介護士からのキャリアアップとして、より専門的に利用者をサポートすることもできます。
どのような場所や、どのような人に対してサポートをしたいのか、ということを明確にして、それを叶えられる就職先を選ぶと良いでしょう。
Q3.試験日はどこに書いてある?
理学療法士の試験日などは、厚生労働省のホームページに記載されています。
以下のリンクのリスト内に、理学療法士国家試験の情報があるので確認してください。
最新の試験日が記載されているので、詳細は実際に受験するときに調べると良いでしょう。
また、理学療法士国家試験のページには試験日のほかに、申し込み方法や試験科目、試験方法などの記載もあります。
参考になるので、目を通しておくと良いでしょう。
まとめ
本記事では、介護士から理学療法士を目指す人に向けた、資格取得の流れや理学療法士の活躍の場などのお話をしました。
理学療法士になるには、長い期間をかけて知識や技術を身に付ける必要があります。
簡単な道のりではなく、人によっては難しいなと感じる人もいるでしょう。
しかし、理学療法士になれば、あなたの理想の働き方ができるようになるかもしれません。
より専門的なサポートができるようになり、また給与も上がるため、自分の仕事に対して、一層やりがいや満足感も生まれるでしょう。
ポイントを押さえれば、介護士として働きながらの資格取得も可能です。
記事の内容を参考に、理学療法士への一歩を踏み出してみてくださいね。